3・四人組
「お嬢様、今朝はしっかりと食べてくださいね」
サシャがテーブルに料理を並べてくれる。
「サシャの料理は美味しそうです」
「お嬢様、その言葉はここの料理長に言ってあげてください」
私は少し頬を膨らませそうになると、サシャが私の鼻を軽く指で弾きました。
「痛いです」
痛くはないですが、サシャを困らせてあげるのです。
「それは封印と言ったはずです」
サシャは私に遠慮はありません。
すまし顔で私の鼻の上に指を置いて言います。
「いいですね、決して外ではやってはいけませんよ」
釘を刺されました。
「冷めないうちにお召し上がりください」
サシャの言っていることはわかります。
あれは本当に危険なのですね。
「それとお嬢様、魔力の使い過ぎに注意してくださいね」
「なぜですの?」
「お嬢様の魔力量はご存じですよね?」
「倒れてしまうからですか?」
「……そうです」
「サシャが言うならそのように致しますわ」
サシャと話しながら食事も終わり、
学園へ行くために荷物を持って部屋を出ようとすると、
「お待ちなさい」
サシャに呼び止められました。
「なにかしら?」
「なにかしら? ではありません!」
私は首を傾けて考えます。
何もおかしな物は持っていません。
「その、明らかにおかしな大荷物はなんですか?」
「何を言ってますの? 今日は測定の後にチーム戦というのをやるらしいので、そのための荷物ですわ」
私は頬に指を当てながら、サシャこそ何を言ってますの? と思いました。
「お嬢様、少々荷物を拝見いたします」
そう言ってサシャは私から荷物を取りあげて、中身を確認し出しました。
「……はぁ」
サシャ、ため息なんてどうしたのかしら。
「なんでパラソルが?」
「観戦のためですわ」
「なんでぬいぐるみが?」
「観戦の時に抱いてますの」
「なんでタオルが大量に?」
「体に巻いて怪我をしないためですわ」
「……はぁ」
「どうしましたの?」
「全部没収です!」
「なぜですの!?」
サシャに荷物のほとんどが没収されてしまいました。
*
学園までの並木道は、朝日が緑の葉の間から降り注いでいて、とても気持ちがいいです。
「フィリア様、ごきげんよう」
笑顔で挨拶をしてきたのはラザリア様です。
「ごきげんよう、ラザリア様」
私も笑顔で挨拶を返します。
「今日の測定の後、チーム戦とはなにをするのでしょうか」
ラザリア様が少し不安そうに仰います。
「フィリア様にラザリア様、おはようございます」
「フィリア様、ラザリア様、おはようございます」
声のした方を振り返ると、チャーニさんとセタ君がこちらにやってきました。
「チャーニさんとセタ君、ごきげんよう」
笑顔で挨拶をします。
「お二人とも、ごきげんよう」
ラザリア様も挨拶を返します。
「チャーニさんとセタ君、本日はよろしくお願いしますわ」
私たち四人は会話をしながら、校舎へと向かうのでした。
*
教室に入るとセタ君が数人の男子生徒に、
腕を掴まれて端の方へ連れて行かれました。
「セタ君はどうされたのですか?」
私はチャーニさんに聞いてみました。
「男子生徒にも色々あるみたいですよ」
私の顔を見て、困り顔で笑っていました。
答えづらいものだったのでしょうか、
今度サシャに聞いてみましょう。
とりあえずセタ君のことは置いておいて、私たちも席へ座りました。
カラーン コローン ……
鐘が鳴ると同時にオーブル先生が教室に入ってきました。
先生は教室を見渡すと、
「全員いるな。 今日は予定通り測定とチーム戦だ」
一人の生徒が手を挙げました。
「先生、チーム戦とは何をするのでしょうか?」
「ん? その時話すぞ」
どうやら秘密のようです。
「他のクラスもいるから順序よく進めるからな。 着替えたら校庭に集まれ」
先生は言うことだけ言って、教室を出て行きました。
「めんどくせぇー、とっとと行こうぜ」
マズウェル君が率先して部屋を出て更衣室へと向かいました。
その後を追うように、他の方々も移動を始めました。
そんな中、セタ君がため息をついています。
私は近寄って聞いてみました。
「どうかしましたか?」
「あ、フィリア様。 いえ……別に大したことじゃ」
「でも、ため息をついていらっしゃいましたよ?」
セタ君は腕を組んで少し考え事をしてから、私に向き直り言いました。
「当日になって言うのもあれですが、この組は男が俺だけですから……」
それを聞いていたチャーニさんが、
「やっぱりそんなこと気にしていたのね」
チャーニさんは少し笑っています。
「し、仕方ないだろ……他のやつにも言われるんだよ」
よくわかりませんが、セタ君が男の方で、私たちの中にいるのが気になっていたと……そういうことですね。
「セタ君、わかりましたわ。 私に考えがあります。 任せてください。 みなさんは先に行っていてください」
私は急いで購買所に向かいました。
*
「セタのバカ! 貴族様に気を使わせるなんて何考えてるの?」
チャーニさんがセタ君に詰め寄っています。
「いや、俺……そんなつもりじゃ……」
「ラザリア様、セタは不敬罪とかになったりしませんか?」
私も少し気になってしまいましたが、フィリア様なら大丈夫な気はします。
だからこう答えました。
「フィリア様はお人がよろしいから、大丈夫ですよ。 でも、本来ならばよろしくはないですね」
二人は少し沈んでしまいました。
「ですが、ここは学園。 そういうことも、これから学んでいけばよろしいんですよ」
「そ、そうだよな……そうですよね、ラザリア様」
セタ君は先ほどまでとは違い、元気を取り戻したようです。
「そうよね、これから学んでいきます」
チャーニさんも同じように元気になりました。
短いやり取りでしたが、
立場が違うと、こうも違うのだと感じ取れました。
二人から「ありがとうございます。 ラザリア様」とお礼を言われました。




