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2・クラスメイト

 自己紹介が始まりました。


「チャーニです。 実家はパン屋を営んでいます。 みなさまよろしくお願いします」


 パン屋ですか。 毎日色々なパンに囲まれているなんて楽しそうです。


「俺はセタ。 父は冒険者をやってます。 よろしく」


 父親が冒険者なんて凄いですわね。


 彼も将来冒険者を目指すのかしら。

 

「ラザリア・アルベスです。 趣味は裁縫を少々。 みなさまよろしくお願いします」


 ラザリア様は緊張していらっしゃいますので、ごく普通の挨拶でした。


「はっ! どいつもこいつも大したこと無いな! 俺様はマズウェル、マズウェル・ラストン様だ、平民どもは俺様に従えよな!」


 随分とうるさい方ですね。


 学園内では貴族も平民もないと学園長様が仰っていたではありませんか。


「うるさいわよ、バカウェル」


 一人の女生徒が立ち上がりました。


「なんだと? ルッツ!」


 お二人はお知り合いのようですね。


「たかが子爵家が偉ぶらないでちょうだい!」


「お前んところだって子爵じゃねーか!」


「一緒にしないでちょうだい」


「こらこら、お前らいい加減にしろよ」


 オーブル先生が仲裁に入ってきました。


「元気なのはいいが、学園の規律を破ると大変なことになるぞ」


 そうですよ、みなさん仲良くしましょう。


 それに、まだ自己紹介も終わってない方もいますし。


 先生が止めてくれたおかげで騒ぎが収まり、続きが始まりました。


「ルッツ・フォンデール。 趣味は乗馬。 みなさんよろしく」


 ルッツさん、彼女は乗馬が得意なのですか。


 素晴らしいですね。


 次は私の番ですわね。


 席から立ち上がると先ほどのマズウェル君が笑い出しました。


「引率の変な女だぜ」


 ゲラゲラ下品な笑い声が響きます。


 あれです!


 こんな時こそ悪役令嬢としての威圧を出すのです。


 私は自分の中から威圧を出すように、ほっぺを膨らませました。


 ぷく~


 私の姿にみなさん恐れをなしたのか、私から顔を背け、肩を振るわせています。


 やりました!


 完璧です!


「フィ……フィリア君……自己紹介……を」


 先生も口元を押さえて震えています。


 悪役令嬢としての自信が湧いてきました。


「フィリア・モンティーレですわ。 趣味は読書です。 みなさまよろしくお願いしますね」


 私は満足して着席しました。


 あの威圧はかなり効いたはずです!


 ——こうしてクラスの自己紹介は終わり、明日からの授業内容が説明されました。


「……ということで、明日は魔力と体力の測定、それとチーム戦を行うので、今から四人一組のグループを作ってもらう」


 明日から本格的に学園生活が始まるというわけですね。


「フィリア様……フィリア様?」


 物思いにふけっていたら、ラザリア様が私の顔を覗き込んできました。


「あ、ラザリア様……ごめんなさい。 少し考え事を」


「フィリア様、もし宜しければ一緒に組みませんか?」


「私でよければ」


「はい、お願いします」


 私とラザリア様で二人が決まりました。


 後二人ですね。


 チャーニさんとセタ君が目に入りました。


 二人とも、このクラスには馴染めていないようなので、私の方から歩み寄りました。


「お二人ともよろしいでしょうか」


 突然話しかけたので二人は驚いてしまいました。


「フィリア様!?」


「俺たちに何か用でしょうか!?」


「そんなに驚かなくてもよろしくてよ」


 私はニコリと微笑むと、二人は少しだけ緊張を和らげてくれたようです。


「もしよろしければお二人も私たちと組みませんか?」


 二人は再び驚いてしまいました。


 私は後ろに下がっているラザリア様を見ると、ラザリア様も驚いた顔をしています。


「別に驚かなくてもよろしくてよ。 立場的な物はこの学園では意味のない物です。 同じ教室で学ぶ仲間ではないですか」


 二人はお互いの顔を見て頷き合っています。


「俺たちでご迷惑でなければ」


 セタ君が確認をして、チャーニさんが頷きます。


「問題ありませんわ。 ラザリア様もよろしいかしら?」


 私はラザリア様に聞いてみました。


「ええ、フィリア様の言う通りです」


 ラザリア様も笑顔で返してくれました。


「そろそろ組も、決まったみたいだな」

 

 六つのチームが出来上がりました。


 オーブル先生はクラスを見回してから教壇の前に立ちました。


「明日はその四人組で測定とチーム戦をやるぞ。 尚、チーム戦はうちのクラスだけだ」


「先生それはどう言うことでしょうか?」


 一人の生徒が質問しました。


「新しい技術の導入だ。 俺も試したが凄いぞ」


 カラーン コローン ……


 終業の知らせを告げる鐘が鳴りました。


「よし、今日はここまでだ。 明日遅刻するなよ」


 オーブル先生はそれだけを言い残して教室を出て行きました。


「それでは私たちも帰るとしましょうか」


 私は三人に向き直りました。


 私とラザリア様は寮へ、セタ君とチャーニさんは実家から通っているそうでした。


「それではフィリア様、ラザリア様、また明日」


 チャーニさんが頭を下げて挨拶をしてきました。


「フィリア様、ラザリア様明日からよろしくお願いします」


 セタ君も同じように挨拶をしてきました。


「こちらこそ、明日からよろしくお願いしますね」


 私とラザリア様もお辞儀をしました。


「お二人とも、ごきげんよう」


「ごきげんよう」


 私の後にラザリア様もお二人に挨拶をして、寮へと向かいました。


    *


「それで、お嬢様はご学友とうまくやっていけそうですか?」


 サシャが私の話を興味深く聞いてくれています。


「大丈夫ですわ!」


 私は両拳を力いっぱい握りしめて、ふんすっと鼻息を荒くします。


「はしたないですよ」


 いいではないですか……


「自己紹介の時にも私の威圧が物をいいましたよ」


 私のこの一言に、サシャは動きを止めました。


「……お嬢様、今なんとおっしゃいましたか?」


 サシャのお顔が引きつっているように見えるのですが、気のせいですよね?


「はい、威圧を使いました。 みなさん震えていましたよ」


 あれ? サシャが目頭に指を当てています。


「お嬢様……それを今ここでやれますか?」


「できますが、サシャが危ないですわ」


「私の事はお構いなく」


 サシャがここまで言うのです。


 やって差し上げますよ。


「ではやりますわ」


 自己紹介の時と同じようにほっぺを膨らませました。


 ぷく~


 サシャはとっさに私から顔を背けて震えだしました。


「どうです! すごいでしょサシャ」


「……くっ……くくくっ」


 どうしましょう、かなり苦しんでいるようです。


「サ……サシャ? 大丈夫ですか?」


 サシャは一度深呼吸をしてから、私に向き直り、


「お嬢様、今後それは使ってはいけません! 絶対にダメですよ!」


「なぜですの? これほど効果的に効いたのに」


 サシャが私に詰め寄ってきました。


 サシャの圧が凄いです。


「だ・め・で・す・よ」


 目が怖いです……。


「……はい」


「まったく……このお嬢様は……」


 ため息をつく私付きのメイド。


 サシャ、聞こえていますわ。


 でも、今後使ってはいけないくらい危険なものらしいですわ。


 サシャと約束したので、これは封印です。

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