1・学園生活の始まり
「お嬢様! フィリアお嬢様!」
朝の静寂は一人のメイドの大声で終わりを迎えました。
「あら、サシャ何事ですの?」
私を見つけたサシャが声を荒げた。
「あら、じゃありません! なんですかその姿は!」
「なにって、これから学園に向かいますのよ」
サシャはため息をついてから私を指さした。
「なら制服に着替えてください。 それとその手に持っているパンを置いていきなさい」
パジャマ姿にマントのどこがおかしいのでしょうか?
私には理解できなかった。
何故サシャはそんなにも怒鳴るのだろうか。
「これが初登校の姿と書物に書いてありましたわ」
「一体どんな書物ですか?」
私はカバンから一冊の書物を取り出した。
「この書物ですわ」
サシャは書物を見るなり顔を真っ赤にして私から奪い取った。
「……没収です」
「没収も何も……それサシャ……の」
「お黙りなさい。 そして着替えて来なさい」
冷たい目で私を睨みます。
こうなるとサシャは怖いのです。
……私、伯爵令嬢ですのよ。
*
ヴェリタス学園。
王都の中でもエリート校である学園です。
「ごきげんよう」
「おはようございます」
朝の挨拶が沢山聞こえてくる、校舎へと続く並木道。
そんな私も挨拶をされています。
「ごきげんよう」
知らない御方とも挨拶をしっかりとします。
これから同じ学び舎の仲間なのですから。
一年Aクラス。
ここが私が一年間通うクラスになります。
そして、悪役令嬢として自分を磨く場所でもありますわ。
ガチャ
扉を開けて教室の中へ入っていきます。
教室は教壇がよく見えるように階段状になっていて、
すでに何人かの生徒が座って話をしたりしています。
学園側の配慮なのか、座席はすでに指定がされています。
私は教室へ入り、皆様に笑顔で挨拶をしました。
皆様も挨拶を返してくれます。
その中で見知った顔を見つけ、私は近寄っていきます。
「おはようございます。ラザリア様」
「おはようございます。フィリア様」
アルベス家の次女、ラザリア様。
家も近くで、昔からよく遊んでくださるお優しいお嬢様です。
「いよいよ学園生活が始まりますね。 わたくし少々怖く感じてしまって」
「ラザリア様。 いつものようにしていれば問題ありませんわ」
「そうでしょうか」
「そうですよ」
ラザリア様の緊張が少し解けたようで、微笑んできました。
教室は次第に人が増えてきました。
教室に、教師と思われる御方が入って来ました。
「よーし、全員席に就け」
生徒が一斉に席へ着いた。
教師は教室内を見渡してから喋り始めました。
「俺がこのクラスを担当するオーブルだ。 これから一年間君たちの担任となるものだ」
オーブル先生ですね。
しっかり覚えました。
「今日の予定は、これから講堂で入学式を行う。 その後、居室に戻ってから自己紹介をしてもらう」
オーブル先生はそこまで言うと、何やらノートを広げて何かを確認しています。
「クラス委員とかは後で決めるとして……今日の引率係としてフィリア君に頼む」
突然の指名に驚きましたが、
任された以上はしっかりとこなして見せますわ。
悪役令嬢として!
「わかりましたわ」
「よろしい。 講堂への行き方は大丈夫か?」
「はい、しっかりと暗記していましてよ」
オーブル先生は時計を見てから、
「では、俺は職員室へ一旦戻らないといけないので後を頼む」
「はい」
私は席を離れ、先生がいた教壇へと立ちました。
「それでは皆様、言われた通り講堂へ向かいますわよ」
皆が席を立ったのを見てから。
「皆の者!我に続け!」
私の言葉にクラス全員が固まった。
教室を出ようとしたオーブル先生も振り返り、驚いた顔で私を見ています。
悪役令嬢とはこうではありませんの?
*
みなさんを引率して講堂へと着きました。
講堂では先輩方の指示で決められた場所へと向かいます。
他のクラスの方たちも集まって来たようです。
目の前の舞台上に演台があり、そこへ学園長が立ちました。
静まり返る講堂に、学園長が静かに語り始めました。
「ヴェリタス学園へ入学おめでとう」
学園長のお話が始まりました。
「我が学園においては貴族や平民などの身分差は無く、等しく学ぶ者である」
聞いた話では、生徒会役員は身分が影響するらしいです。
などと考え事をしていたら、
学園長のとても長いお話が終わってしまいました。
続いて生徒会長からのお言葉です。
生徒会長は、オーリブ公爵家の次男だそうです。
お名前はカトラス様。
カトラス様が演台に立つと、一部の女生徒から黄色い声援が発せられました。
「……んんっ。 静かにしてくれたまえ」
場馴れしているのでしょうか、軽い咳払いで場を静めてしまいました。
しかも表情は穏やかな笑顔のままです。
これは見習うべきところですね。
カトラス様の演説も終わり、
続いて新入生の挨拶です。
代表はこの国の第二王子であるランディル様です。
流石に王子様相手にざわめくことはありませんでした。
「……新入生代表、ランディル・ラル・エルディア」
王子様は随分とおとなしい方のようです。
少しお声が小さくて聞き取れない箇所もありました。
会場内に拍手が起こりました。
王子様は一礼をして演台から離れて行きます。
以上で入学式が終了しました。
私たちは再び教室へ戻る事となります。
「フィリア様、学園長様や生徒会長様のお話で、学園生活が楽しみになられましたね」
ラザリア様は嬉しそうに話してきます。
私も楽しみになりました。
他の皆さんも、仲良くなった方と軽い会話をしながら歩いています。
教室に戻り、男子生徒の方々は腕や背中を伸ばしたりしています。
教壇の前に立っていた私の元にオーブル先生がやってきました。
「フィリア、引率係ありがとう。 席に戻ってくれ」
私は言われた通りに席へ戻りました。
オーブル先生が教壇に立つと皆が静かになりました。
「これから今後の予定と自己紹介をしてもらう」
自己紹介です。
皆さんがどのような方なのか、楽しみで仕方ありません。




