5・キルデ主任の魔導具作り
先ほどのフィリアお嬢様が結界魔法で色々な発見をなさっていたのを見て、僕も魔法省主任として負けていられない。
彼女がいなければ、新たな魔導具作りのアイデアは生まれなかっただろう。
この街を覆うくらいの結界。
そして、それを維持する為の魔導具!
彼女の少ない魔力を見たからこそ浮かんだアイデアですよ。
完成したら彼女にもプレゼントする事にしよう。
「やるぞー!」
僕はマイラー老師を引きずって、早速魔導具製作のために小屋に引き篭もったのだ。
老師は何か嘆いていたようでしたが、気のせいですね。
「わしは女子たちと楽しくしたいのじゃー! むさい男と一緒は嫌じゃー!」
「楽しくなりますねー! 老師様!」
*
魔法の特訓を終えた私は騎士たちが訓練しているところへ足を運びました。
「あ! お嬢様も剣の稽古ですか?」
我が家の騎士たちが私に気が付きました。
「近くまで来たので見学にと」
「そうでしたか。 剣を握るのであればいつでも相手をいたしますよ」
騎士たち四人は訓練に戻りました。
その先では冒険者の六人が固まって何かやっています。
「みなさん、何をなさってますの?」
「フィリア様、じつは……」
どうやら、キース様は先日の戦闘で盾の調子がおかしくなり、先ほど訓練していたところ壊れてしまったそうです。
「なら、今から買い物に行きましょう。 それがいいですわ」
「ですが……」
キース様が何か言おうとしてましたが、私は気にせずサシャを呼ぶために笛を吹きました。
ぷひょ〜……
「お呼びですか? お嬢様」
「うわ! いつの間にかメイドさんが!」
突然現れたサシャに、アラン様が驚いています。
「サシャ、今から街へ行きますわよ」
「また、突然ですね。 今度は何をしでかすのですか?」
変な事言わないでください!
ほら、みなさん変な顔で見ていらっしゃいますよ!
「ち、違うわよ! キース様の盾が、昨日の魔物との戦いで壊れてしまったので買いに行くのです」
「なるほど、そう言う事でしたか」
「では、私が付き添いますのでお嬢様はこちらで……」
「私も行きますわよ!」
私はまだ街を見ていないのです。
私はサシャをむーっと睨みつけました。
サシャは顔を逸らして降参しました。
私の勝ちです!
サシャは騎士たちに事情を話し、私が外出する事を告げています。
「騎士たちにはマイラー先生の護衛を任せました」
こうして私たちは街へ繰り出す事へ……。
「おお! ここにいたんですね!」
キルデ様が走ってこちらにやってきます。
「どうしましたか?」
「フィリア様ではなく、そちらの冒険者に聞きたいことがあってな」
キルデ様はキース様に話しかけました。
「君たち、今魔石は持っているかい?」
「魔石ですか? 誰か持っているか?」
キース様は仲間に聞いてみました。
「……二個ならここに」
ダリア様が袋から綺麗な魔石を取り出しました。
「これ、売ってくれないか? 実験にどうしても必要なんだ」
ダリア様はキルデ様に魔石を渡すと、五万エミリを受け取っていました。
「……こんなに」
「また魔石が必要になるかもしれないから、手に入れたら持ってきてもらえるかい?」
そう言って走り去って行ったキルデ様。
「……魔石二個で五万」
ダリア様が呆然としています。
「まじか! ダリア得したな!」
アラン様が笑いながらダリア様の肩を叩いています。
「魔石とはそんなに高く買い取ってもらえるのですか?」
魔石の装備がいくらなのかわからないから聞いてみました。
「さっき程度の魔石なら、普通二千から三千が、相場だね」
ミシェッド様が教えてくださいました。
「取り急ぎ必要だったのでしょう。 あの口ぶりからして、まだ必要になるかもしれませんね」
サシャはそんな事を言いました。
「なら、ついでにギルドで何か依頼を受けると言うのは如何でしょうか?」
サシャも納得してくれました。
魔石、必要なんですよね。
*
「マイラー老師! 手に入れましたよ!」
僕は冒険者から買った魔石を手に小屋に戻ってきた。
小屋の中にはマイラー老師が張り切って仕事をしてくれているので捗ります。
小屋の窓からアルベン家のメイドが定期的に、
「マイラー様頑張って下さいませ」
とか、
「差し入れでございます」
と、窓越しから色々してくれています。
その都度マイラー老師は、
「任せなさい! うほほー!」
と、やる気に満ちた声を上げています。
「老師、こちらの魔石加工完了しましたよ」
「流石、魔法省主任じゃの。 仕事が早いのー」
簡易型結界魔導具試作品の完成だ。
後は動作試験をやるだけだ。
フィリア嬢の発想を元に出入り口を付けてみた。
これは人を識別して、入り口が閉じたり開いたりするのだ。
*
「……まさかここまで効果があるとは思わないぞ、普通」
「どうしましたか? クランツ様」
ルドルフが聞いてきた。
「モンティーレ家を出る前にアレス君から貰ったメモがな……」
俺はメモをルドルフに渡した。
「アレス様と言えば、まだ七歳でしたね……」
そう言ってメモに目をやるルドルフ。
“マイラー先生は女の人が大好きなエッチなお爺さんです。
なので、部屋か小屋に閉じ込めて、外からメイドさんたちにやる気を出させるように声をかけたり差し入れするといいですよ。
なるべく女の人は近づけさせないで下さい。
アレス・モンティーレ〟
「ぶふっ……」
珍しくルドルフが笑ったな。
「失礼しました。 これ、本当に七歳の子が書いたものですか!?」
わかる……その気持ちわかるぞルドルフ。
アレス君は、俺の目の前でそれを書いたのだからな……。




