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4・フィリアの新魔法

 今日はアルベンの街を視察するのです。


 その為に私は目立たない格好をして外出をします。


「張り切っていきますわよ!」


「どこへですか?」


「それはもう街に繰り出すのですわ」


「回れ右をして、書庫に繰り出してみるのも悪くありませんよ?」


「嫌ですわ、サシャじゃあるまいし」


「そうですね、お嬢様はお嬢様ですからね」


「……そ、そう……ですわ……よ?」


 振り返るとサシャがいました。


    *


 朝食が済んで、私はダナトス様に庭で魔法の訓練をしたいと告げると、魔法を練習できる場所に案内してもらいました。


 そこへクランツ様もやってまいりました。


「フィリア嬢も魔法の訓練ですか?」


「はい。 昨日マイラー先生から教わった魔法を練習しようと思いまして」


 クランツ様は興味があるみたいで、私を見ました。

 

「見学してもいいかな?」


「構わないですよ」


 私は集中して昨日の出来事を思い出し、魔力を練り上げます。


 薄く、広く、そして頑丈に……


 私の前にうっすらと光る盾が現れました。


「昨日より上手く出来たかしら」


「ほぅ、一日でそこまで出来るようになるのですか」


 クランツ様が感心しています。


 そしてあの術式を書き込みます。


 ここは……集中力が必要ですね。


 ここです!


 一気に術式を書き込み、シールドが変化しました。


 昨日先生が見せてくれた魔法と同じようにシールドの魔法にうっすらと膜が覆っているような感じの物でした。


「……ふう」


 私が気を抜いたせいで、魔法は解除されてしまいました。


 見ていたクランツ様が拍手をしてくれています。


「凄いなフィリア嬢は」


「そんなことは……」


 普通に褒めていただいているのになんだか気恥ずかしいですね。


「おっと、そろそろ行かないと。 フィリア嬢は?」


 クランツ様は用があるみたいです。


「私はもう少し練習をしたいので……あっ」


 私はあるものが目に入りました。


「どうした?」


「クランツ様、あの樽に入っている折れた棒は要らないものですか?」


「あれは練習で折れた物だから処分する物だ」

 

「なら練習に使ってもよろしいですか?」


「……それは構わないが」


「投げたりしませんから心配しないでください」


 そう言って私は手頃な棒を何本か持ち出して来ました。

 

「それをどうするんだい?」


「これを……こうして地面に立てておきます」


「なるほど、それを的にするのか」


「……あの、お急ぎの用事では?」


「おっと、つい気になってしまったからつい……」


 この人でもうっかりする事があるのですね。


「練習もいいが、気をつけてくれ」


 クランツ様は手を振りながら行ってしまわれました。


 ――始めるとしましょう。


 あの棒にシールドを張ってみます。


 ……


 うまく出来たようなので棒で叩いてみます。


 意外と硬いのですね。


 私は一旦シールドを解除します。


 魔力量は……まだ大丈夫そうですが、一旦休憩しましょう。


 私は袖の紐を緩めて、腕をまくりをしようとした手を止めました。


 袖を縛っていた紐を見ながら考えます。


 シールドの魔法を紐のように出来ないかしら、と。


 休憩が終わったら試してみましょう。


 休憩を済ませ、手の上でシールド魔法を発動させてみました。


 これを魔力操作で形を崩せないか試してみます。


 ……出来ました。


 手に持って叩けるか試してみましょう。


 私は手にしたシールド棒を、地面に立てた棒を叩いてみました。


 パコーンと音を立てて棒は倒れました。


「面白いですわね」


 次です。


 再び棒を立て、今度はシールド魔法を輪っかにしてみました。


「これで締め付けてみたらどうなりますの?」


 試しにやってみたら、思いのほか大変でした。


 棒は折れずに、ただ私が疲れただけでした。


 休憩がてら考えました。


 もっと薄くしたらどうでしょうか……。


 魔力が回復してから再び試しました。


 今度は傷は付きましたが、それまでです。


 ……風魔法の時のように振動はどうでしょうか。


 しかし、離れた所の魔法を振動させるのはすごく大変だったのでやめにします。


 悩んだ結果、回転させる事にしてみました。


 今度はどうでしょうか……。


 輪っかにしたシールド魔法に棒を入れるように設置して回転させます。


 回転の方が振動より楽ですね。


 魔力操作で回転を上げながら輪っかを縮めていきます。


 すると棒が切れました。


「やりましたわ! ついに棒を切る事が出来ましたわ!」


 私は喜びながらその場をくるっと回って後ろを見たら、


 何故かみなさんがじっと私を見ていました。


「フィリア嬢……お主何やってんのじゃ?」


 マイラー先生……。


「シ、シールド魔法の練習……ですわ」


 マイラー先生が私に言います。


「わし、シールド魔法をそんな風にするやつ初めて見たのじゃが」


「せ、先生もおやりになりますか?」


 他の方は黙ったままです。


 誰かなんとか言ってください。


 なんですか! この気まずい雰囲気は!


 私はこの妙な空気に耐えきれず、シールド魔法を棒状にして両手に持ち、木の棒をポクポク叩くのでした。


「ふははは! やはりフィリア嬢を連れてきて正解じゃわい」


 マイラー先生?


「キルデよ、お主もこれくらい柔軟な考えを持った方がよいぞ」


 笑いながらキルデ様に話しかけています。

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