1・アルベン領への道
馬車は進んでいきます。
アルベン領へ近づくにつれ、魔物の数が多くなってきているように感じます。
他の馬車に比べて、私の乗る馬車と護衛の馬車が少し遅れてしまっていました。
森を通過する時、前の馬車との間に大木が倒れてきたので、離れ離れになってしまったのです。
大木をどかすのに時間がかかると思われたのですが、サシャが以前マイラー先生に教わった風の魔法で大木を切り刻んでくれました。
騎士と冒険者の方たちが、破片を片付けてくれたおかげですぐに馬車が通れるようになったのですが……。
今、護衛の騎士や、キース様たち冒険者が魔物を迎え撃っています。
「彼らなかなかやりますね。 実力はCランク中って所でしょうか」
サシャの感想を聞きながら、彼らの闘いぶりを馬車の中から眺めてました。
魔法使いのミシェッド様と回復士のリリア様の方を見ていたら、左の草むらが微かに揺れました。
お二人は気づいていないみたいなので、私は馬車の中から危険をしらせて、魔法を放ちました。
「ファイヤーボム!」
指先から小さな火球が弾き飛ばされてから草むらに着弾し、辺りに小さな爆発が起きました。
草むらからは二匹の狼さんが飛び出し、ミシェッド様に飛び掛かろうとしましたが、すでに魔法を展開していたミシェッド様の的でしかありませんでした。
魔法は二匹の狼さんに当たり後ろへ弾き飛ばされながら凍りついていました。
彼は私に会釈をしてから他の魔物へ向かいました。
魔物はまだ沢山います。
ゴブリンや鳥。
狼さんや木のような魔物です。
「よく気が付かれましたね、お嬢様」
「はい。 草むらが微かに揺れましたので」
「いい判断です。 このような場所でも隠れる場所はありますからね」
サシャも気がついていたらしいのか、手には黒い手袋を着けていました。
「魔物とはこんなにいる物なんですか?」
私は何気ない疑問をサシャに聞いてみました。
「普通、ここまで多くはありませんね」
「何かあるのかしらね」
「それはわかりません。 ですがクランツ様が結界の魔導具を欲するのはわかりました」
そうですよね。 これだけたくさんの魔物がいるのでは、お散歩なんてできませんよね。
……これは、悪役令嬢を目指す私の試練なのでは!?
「お嬢様……変な事を考えてはいませんよね?」
「そんな事はありませんわ! 真剣に考えていますの!」
サシャ、失礼ですわ!
たくさんいた魔物もいなくなり、私たちは急いで先行している馬車を追いかけました。
馬車の中から外を見ていたら、前の方から馬が二頭、凄い勢いで走ってきました。
あれは……クランツ様とルベルト様?
馬は馬車の周りを回ってから横に並んできました。
「フィリア嬢、無事でしたか」
クランツ様が心配して来てくださったようです。
「はい。 みなさんが守ってくれましたから大丈夫ですわ」
「それは良かった」
「心配してくださり、ありがとうございます」
ここはしっかりとお礼を言っておきましょう。
「君に何かあった方が問題だからな」
クランツ様は何やら安心した顔つきになられました。
「護衛の者たちもありがとう」
クランツ様は他の人たちにも聞こえるようにお礼を述べています。
「……これはこれは」
サシャが含み笑いをして、小さい声で何か言ったようですが、なんでしょうか。
クランツ様とルベルト様が先頭を走り、馬車は進んでいきます。
少し進むと塀に囲まれた村に辿り着きました。
アルベン領の馬車とモンティーレの馬車がありました。
「クランツ様、ご無事でしたか」
「我儘を言ってすまない」
クランツ様はご自分の護衛の方に謝っていました。
馬車を降りるとこちらにマイラー先生がやって来ました。
「フィリア嬢、ご無事でしたか」
「マイラー先生、大丈夫ですわ」
マイラー先生も心配してくださったようです。
「それに、護衛の方たちの頑張りがあったからこそですわ」
マイラー先生は「そうかそうか」と言って、護衛を務めた騎士や冒険者の方へ向かっていきました。
「フィリア嬢、今日はここで休んで、明日アルベンの街につきます」
クランツ様が明日には街につくとおっしゃいました。
どんなところなんでしょうか、楽しみですね。
*
あっという間に朝です。
今日も一日頑張りましょう!
窓から外を見ますと、
騎士や冒険者の方たちはすでに準備が終わっているみたいですね。
私も負けじと部屋を出て表に行くことにします。
「お待ちなさい!」
突然サシャが私の襟首を掴んできました。
「な、なんですの?」
「なんですの? ではございません! お嬢様はその格好でどこへ行こうとなさるのですか?」
「私の格好ですか?」
私は自分の姿を確認しました。
「はい。 パジャマですね」
「そうですね」
「では行きましょうか」
「お待ちなさい!」
「ぐぇ……」
サシャの掴む力が強くなりました。
「お嬢様……ここはお屋敷でもないんですよ? 少しは恥じらいを持ってください」
サシャは私の襟首を掴み上げながらお説教が始まりました。
私はサシャに持ち上げられながらプランプランしています。
どうしていつもこうなるのでしょうか……。
「聞いてるのですか?」
サシャは私の鼻をグリグリするのをやめてくれません。
「ううう……私が悪かったですわ」
サシャの言う通り、少しは恥じらいを覚えましょうか……。




