23・いざアルベン領へ
「ルベルト君! 間違いないのだね?」
「はい。 間違いなくマイラー様もご一緒に行かれます」
キルデ様を迎えに行き、馬車に乗ってからずっとこの調子だ。
同じ問答をかれこれ十回以上している。
よほどマイラー様にお会いするのが楽しみだったようだが……流石に疲れる。
「まもなくモンティーレ家に到着しますね」
俺はウキウキしているキルデ様に伝える。
「モンティーレ家ですか……そういえば学園の測定の時にいた子がファイヤーボムを使っていましたね……マイラー様とどのようなご関係なのか」
馬車がモンティーレ家の門を潜ると大きな木の棒に一人の老人が括り付けられている。
その周りには箒を持ったメイドたちが喜びあっていた。
俺はキルデ様に気がつかれないように、そっとカーテンを閉めた。
俺も疲れているのだろうか……。
早くクランツ様と合流しよう。
*
旦那様に頼まれ、わたくしカルロスは冒険者ギルドへ依頼を出しに来ました。
受付でギルドマスターを呼んでもらい、奥の部屋で依頼内容を伝えました。
「……なら、今王都に来ている若手の六人組のパーティーがいるから、そいつらに頼んでみる。 少しお待ちください」
そう言ってギルドマスターは部屋にいた女性に六人の所在を確認してもらう。
女性は部屋を出て受付に向かった。
なんとタイミングよくギルドの掲示板付近で六人が居たので、急ぎこちらに連れてきてくれたようだ。
「彼らがそうです」
女性は六人を私の前に並ばせた。
「俺から見てもこの六人は問題ないです」
ギルドマスターは彼らの功績などを私に教えてくれた。
「なるほど……ランクCながらも、若手で慢心せず、評価も高いと」
これなら旦那様の言われた信頼出来そうな冒険者に当てはまりますね。
「では彼らに依頼内容をお伝えします」
「依頼内容はモンティーレ家のお嬢様の護衛で、期間は戻って来るまでの期間となりますが、よろしいかな?」
冒険者は仲間と話し合ってすぐに了承してくれた。
「詳しく説明いたします……」
こうして冒険者の確保はできました。
*
「ふふふ。 話し合いに参加した甲斐がありましたわ。 アルベン領に行けますわ」
「……あれを参加したと言えるお嬢様は凄いですね」
「そうです! 私は凄いのです!」
「さて、何を持っていきましょうか……」
私は荷物をまとめています。
サシャも荷物をまとめるのを手伝ってくれています。
「サシャ?」
「なんでしょうかお嬢様」
「なぜ大量の書籍を鞄に詰めていらっしゃるのですか?」
「何をおっしゃいますか、お嬢様は向こうで何もしないおつもりですか?」
サシャは何を言ってますの?
私は常に勉学に励んでいらっしゃいますのよ?
「今更常識問題の百や二百、どんとこいですわ!」
「なら、戻って来たら常識問題二千問をお出しします」
「……向こうでも勉学に力を注ぎますわ」
*
――翌日
「結局昨日はマイラー様にお会いできなかった……」
「残念ですね、キルデ様」
そんな声が馬車の方から聞こえてきます。
「おはようございます」
私はみなさまに朝の挨拶をします。
「おはようございます、フィリアお嬢様」
お二人も私に挨拶をしました。
「今日からよろしくお願い致しますね。 クランツ様」
「こちらこそ」
クランツ様の方は馬車が二台。
我が家は四台で移動する事になります。
馬車の方には冒険者の方やうちの騎士が話をしていました。
私は護衛してくださる方たちに挨拶をしに向かいます。
「あら、あの冒険者様の声に……聞き覚えがありますわね」
私は近づいて冒険者様たちを見ました。
「あら、聞き覚えがあるお声だと思いましたらキース様ではありませんか」
「え? 俺を知って……あっ!」
「あらこの子、試験の時の子よね」
「ここのお嬢様だったのか」
私の試験を見届けてくれた冒険者たちでした。
「お久しぶりですみなさま」
私が挨拶をするとみなさんも「久しぶり」と返してくれました。
そしてキース様に、パーティーメンバーを紹介していただきました。
キース様のパーティーは六人でしたのね。
リーダーで盾持ち剣士のキース様。
遊撃手のカイ様。
回復士のリリア様。
この三人は試験の時の護衛でしたね。
見たことのない方は、
剣士のアラン様。
魔法使いのミシェッド様。
双剣使いのダリア様。
この三人は試験の時には別の仕事をなさっていたようです。
「そういえばお嬢様、この間の黒ずくめの護衛の方はご一緒ではないんですか?」
キース様がそんなことを聞いてきました。
「黒ずくめ……ああ、サシャのことですね」
そんなサシャは縄で縛られたマイラー先生を連れて来る所でした。
「彼女がサシャですよ」
メイド姿のサシャを見て、「メイド?」とキース様が呟いていました。
他の方は見ているところが違いました。
「貴族に逆らうと……俺たちもああなるのか……」
「この依頼……大丈夫かな……」
何やら不安になっている様子です。
「大丈夫ですわ。 サシャはいつもあんな感じですから」
冒険者の方たちは、
「あれが普通……なんか怖くなってきたな」
「……受けた依頼はやり遂げるのが……私たちだけど……」
一体どうしてしまったのかしら?
「そんなことより間も無く移動開始ですわ! 張り切っていきましょう!」
馬車に乗り込む時に、クランツ様がアレスとお話をしているのが目に入りました。
いつの間に仲良くなったのかしらね。
「お嬢様、出発しますよ」
サシャの声に私はワクワクしながら馬車に揺られていきます。
こうしてモンティーレ家を、王都を後にするのでした。




