↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/56

21・サシャの驚愕

 モンティーレ家に戻ってからの怒涛の日々。


 毎日朝から屋敷に巣食うゴミ掃除から始まるのです。


「今日こそは花壇に埋めて差し上げますわ!」


「この雑巾のシミにして差し上げます!」


「サシャ様! ゴミが見つかりません!」


 メイドたちがゴミを探しています。


「まだこの辺にいるはずです。 決して一人で行動しないで二人一組で対応なさい!」


 メイドたちは「はい!」と言って辺りをくまなく探し始めました。


「いました! 石像に化けてましたわ!」


「逃しませんよー!」


 メイドたちに追われるゴミ(マイラー先生)は慌てふためいて逃げ去っていく。


 モンティーレ家の朝は賑やかです。


    *


「お呼びでしょうか、奥様」


 ある日私はアリサ様……奥様に呼ばれてテラスまでやってきました。


 奥様は優雅にカップのお茶を飲んでから、お皿の上に戻しました。


「……サシャ」


「はい」


「フィリアはどう? よくやっているかしら?」


 学園のことなら帰ってきた時、お嬢様がご報告された通りです……なのにこの質問の意味とは一体――。


「お嬢様はいつも一生懸命です」


「……そう。 ならいいのです」


 奥様はまたお茶を一口飲みました。


「あの子の事を、お願いしますね」


 奥様も忙しい身、今も休憩がてらにお茶をしているだけなのだ。


「……サシャ」


「はい」


「あの子に変な事をさせないでね」


 私はさせたことはない……ないはず。


 お嬢様が変な事をたまにしているのは知っていますが……


 私が少しの間言葉に詰まっていると、奥様はこちらを見てニコリと微笑みかけています。


 しかし……目が、目がうっすらと開いてこちらを射抜く様に見ているのが怖いです。


「よく、注意しておきます」


「……よろしくね」


 いつも通りの優しい笑顔に戻っています。


「ありがとう。 お仕事に戻っていいわよ」


「はい、失礼します」


 私は部屋を出てから、安堵のため息をつきます。


 奥様は普段は人当たりがよろしいのですが……あの笑顔だけは今だに慣れません。


 裏稼業をしていた頃は、あの手の人は必ずいましたが……奥様は別格に感じます。


「……一体、何者なんでしょうか」


 思わず独り言を言ってしまいました。


 私の勘では、この家で最も逆らってはいけない人物です。


    *


 今日はお嬢様と弟のアレス様がごみ……もといマイラー先生の魔法の授業を行います。


 マイラー先生は、魔法の授業をしている時みたいに真面目なら好感が持てる人物なのに……普段の先生は、すっ…………ごく、残念なお人です。


 今日は私にも魔法を教えていただきました。


 指先から風魔法を出して、さらに振動させるのです。


 よくもまぁ、こんなに魔法を考え出せるものかと感心します。


 しかし、これは使いこなせればゴミを屠れますね。


 感謝と掃除は別物です。


    *


 今日はアルベン領から使者の方がお見えになります。


 私たちメイドは朝からゴミ掃除をして、屋敷を綺麗にしていきます。


 お嬢様とアレス様は学術棟へお勉強をしに行きました。


 そういえばカルロス様がゴミを抱えて向かっていきましたね。


 おそらく地下で常識とは何か、とカルロス様から直々に教えられていることでしょう。


 しばらくすると屋敷の前に一台の馬車が到着いたしました。


 馬車から降りてきたのは、まだ若い青年と従者のようです。


 旦那様がお迎えに出てきてお話をしています。


 なんでもマイラー先生を探しているとか。


 旦那様は二人を連れて学術棟へ。


 私も来いと言われたので先頭を歩いて行きます。


 学術棟へ入り、空いている部屋を皆が覗くとお嬢様とアレス様がこちらに背中を向けて立っています。


 お嬢様とアレス様が口上を述べた後、振り向いてこちらを指差しています。


 お嬢様が目を開くとこちらに気がついたのか、動かなくなって顔が赤くなって行きます。


 私なんで見た瞬間に目眩がして額を押さえましたよ。


 お客人も笑いを堪えるのに必死なようです。


 旦那様はしばらく固まっていました。

 

 その後カルロス様が現れて、旦那様にマイラー先生を連れてくる様に言われて……


 しばらくしたら戻ってきました。


 クランツと名乗った青年は領の為になんとかマイラー先生に来てもらうよう、お願いしましたがダメでした。


 お嬢様が自分が魔法を教わり、それをクランツ様に教えると言い出しました。


 流石はお嬢様です。


 マイラー先生も少しは心を動かされたようです。


 そこにアレス様がマイラー先生に耳打ちをしました。


 (先生、アルベン領を救ったとなれば、女の人からモテモテになると思いますよ? キャー、ステキーとか言われるんだと思いますよ? 想像してみてくださいよ、先生の好きな女性たちがいっぱい褒め称えてくれるんですよ? 女性たちが放っておかないと思いますよ?)


 ………………アレス様。


 間違いない……間違いなくこの子は奥様の子です!


 私はこの子が一瞬恐ろしく、驚愕してしまいました、


 マイラー先生は話を聞いてからやる気に満ち溢れました。


 話の内容から、アレス様は思っただけの事を言ってるだけで、そうなるとは一言も言ってないではないですか……。


 しかも、マイラー先生は子供の言っている事を間に受けて……あなたにはプライドは無いのですか?

 

 私はこの時のアレス様の笑顔を私は忘れることはないでしょう。


 ……奥様と同じ笑顔。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。