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16・終業式

「お嬢様もいよいよ冒険者としても活動されるのですね」


 サシャは複雑そうな顔で言います。


「サシャ……」


「私はどんな事があっても、お嬢様をとことんサポートいたします」


「サシャ、私……冒険者にはなりませんよ?」


 だって、悪役令嬢になるのですから!


「………………はっ?」


 サシャの顔がさらに複雑になっていきます。


 気分でも悪いのかしら。


「冒険者カードは大切にするのです」


 そう、いつの日か「お前なんか出ていけ!追放だ!」と言われた時の為ですわ!


 そして、悪い人たちを懲らしめる旅に出るのです!


「そ……それでは何のために取ったのか分からないではないですか」


「そうかしら」


 あら?


 サシャの顔が驚きから、真っ赤に染まっていきますわ。


「お・じょ・う・さ・ま・?」


 サシャは下を向きながら震えていますわ。 でも、圧が……。


「な……な・あ・に・?」


 圧が……。


「お嬢様には休みを返上して常識という勉強が必要と、つよー……く、思い知らされました」


「なにを……なにをおっしゃっていますの!? 私ほど常識を身につけた人はいませんわ!」


「なるほど……私が明日までに常識という問題を千個用意いたします。 常識を誰よりも身に着けたお嬢様なら問題ありませんよね?」


「……くっ」


 ……圧が……。


「ありませんよね?」


「ごめんなさあああああい!」


    *


「ごきげんよう、フィリア様」


「ごきげんよう、ラザリア様」


「あら? フィリア様? お鼻が赤くなっていらしてよ?」


 ラザリア様に言われてから、そっと鼻を隠します。


 あの後、壁際まで追いやられてからのお鼻グリグリがしばらく続きまして……。


「な、なんでもありませんわ」


「そ……そうですか。 フィリア様がそうおっしゃるのなら」


「おはようございます。 フィリア様」


 チャーニさんとセタ君が挨拶をしながら席へ座りました。


 セタ君が振り返り私に話しかけてきました。


「フィリア様。 この間の休みの日に冒険者になったのですか?」


「え? フィリア様、冒険者としてもご活躍なさるのですか!?」


 ラザリア様が驚いています。


「ど、どうしてそのような話が?」


 私は少し驚いています。


「だって、先輩冒険者の人が言っていましたよ? 黒づくめの護衛を連れた女の子が一人で試験に合格したって」


「それだけで私というのは……」


「護衛の凄腕はサシャって言ってたらしいですよ」


「そうなんですか……? 似たような方では?」


「あと、試験を受けた三人組はしばらく再試験は出来なくなったとか」


「仕方ありませんわね、あの方たち不合格といわれていましたしね」


「……」


「……」


 あら? なぜみなさんなぜ黙ってしまうのですか?


    *


「学生諸君、明日から休みになるが、我がヴェリタス学園の生徒であることを肝に銘じ、また、秩序ある行動を心掛けて、日々を過ごしてもらいたい。 以上」


 学園長様の長いお言葉が終わり、続いて生徒会長のカトラス様のお話が始まります。


「新入生は初めての大型の休みになる訳ですが、ハメを外しすぎないように。これは毎年起こることなので…………」


 云々 云々


 生徒会長様もお話が長いです。


 あ、お話はしっかりと聞いてますから大丈夫ですわ。


 休みになったら、まずは悪役令嬢のお勉強からですね。


 まだ何かが足らないような気がしてなりません。


 あとは鍛錬です。


 冒険者にはなりませんが、あの時のサシャの動きが頭から離れません。


 あれは是非とも習得しなければ。


 いつかは「おーほっほっほっ! わたくしを誰だと思っておりますの?」と言える時が来るはずです。


 ふふふ……


 楽しみで仕方ありません。


 そうそう、家にも戻らないといけませんね。


「フィリア……フィリア君。 戻ってこーい」


 可愛い弟が待っています。


「ダメだな。 ラザリア、すまないがみんなを教室まで連れていってくれ」


「わかりました。 先生」


 あぁ、明日からお休みです。


「ルッツ、すまないがこいつが正気に戻ったら俺のところに来るように言ってくれ。 ちょっと説教だな」


「はい。 先生」


 そしたら、そしたら……


 やりたいことが溢れてきますわ。


「フィリア様?……フィリア様?」


 ふふふ……


「おーい! フィリアさまー!」


「はっ! あらあら? みなさんはどちらへ行かれたのですか?」


「お気づきになられましたかフィリア様?」


「ルッツ様」


「フィリア様、オーブル先生がお呼びでしたよ?」


 そうでした明日から休みなんです。


「ありがとうございます、ルッツ様!」


 私は休みになるのがたまらなく嬉しくなり、思わずルッツ様に抱きつきました。


「ちょっ……え? フィリア様!?」


「オーブル先生のところへ行ってまいりますわ」


「フィリア様があんなに楽しそうにオーブル先生の所に向かわれるなんて……お説教が楽しみなのかしら…… まさかフィリア様はオーブル先生のことが!?」


 ……


「君は確か一年Aクラスの――何をしているんだい?」


「せ……生徒会長様!? な、ななな……なんでもありませんわ!」


「あ! 走ると危ないよ、君!」


 ズデン!


「……だから言ったのに。 ほんと今年の一年Aクラスは面白いよね」


「今年の二学期、一年の合同演劇会が楽しみだね」


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