15・冒険者試験
受付へ戻ってきた私とサシャ、オリマ様は気を失って医務室へ運び込まれたみたいです。
「サシャはやっぱり凄いですね」
「それほどでも……」
サシャと話しているところへギルドマスターがやってきました。
「サシャ、前より強くなったんじゃないか?」
「そうですか? いつも通りだと思いますが」
「ほら、お前さんのカードを更新してやったぞ」
「ありがとうございます」
サシャが丁寧にお辞儀をすると、
「やっぱ、違和感しかねーな」
ギルドマスターが渋い顔で言いました。
「サシャのランクはいくつなんですの?」
私が聞くと「Cランクですよ」と教えてくれました。
「今のお前さんならもっと上のランクでもおかしくないな」
ギルドマスターは腕を組みながら一人で頷いていました。
「ところでお嬢さんの最後の試験、後日やるか? 同じ試験の冒険者もいるから今日でも構わねーぞ」
私は考えるまでもなく「本日でお願いします」と答えました。
「なら、少し待っていな」
ギルドマスターは冒険者が休んでいる方へ向かって行きます。
私は何をするのか楽しみで仕方ありません。
「おう、待たせたな。 話はつけてきた。 ついてきな」
ギルドマスターについて行き、私と同じ試験を受ける新人の方たちと合流しました。
「じゃ、お前ら頼むな」
ギルドマスターは試験官と、護衛の冒険者に声をかけて戻って行きます。
「君が追加の子だね。 僕はキース。 このパーティーのリーダーだ。 後ろの二人はリリアとカイだ」
「リリアよ。よろしくね。 怪我しても回復してあげるわね」
「俺は遊撃手のカイだ。 よろしく」
「私が今回の試験官のタムだ。 試験は公平に行う。 試験を受ける君たちも自己紹介をしてくれ」
キースさんは、やり手の剣士という感じで、リリアさんは本当に癒してくれそうで、カイさんは素早そうな格好ですね。
この方たちは、ジャック、リック、モップの三人ですわね。 とても覚えやすいですね。
「私はフィリアと申しますわ」
自己紹介をしましたら、みんなが私を見ていますわね。
「君は、なかなか育ちがいいようだね」
試験官のタム様がそんな事を言われました。
「……それで、このお嬢様の護衛の方ですね」
「はい。 サシャと申します」
三人組から「護衛付きだってよ」そんな言葉が聞こえてきました。
「私もついて行きます。 あなた方の仕事の邪魔はしませんよ」
「わ……わかりました」
なぜかタムさんは震えていますね。
ギルドのお仕事は激務なのでしょう。
お体には気をつけてくださいませ。
*
私たちは馬車に揺られて森の入り口まできました。
馬車の中で私たちは地図をもらい、印のある地点である物を手に入れるのが目的だそうです。
私は護身用の武器が仕舞われている上腕部をさすり、森を見つめました。
「これより試験を開始する。 君たちはパーティーだ。 そこのところを忘れずに。 始めてください」
試験官の、タム様が号令を出しました。
三人は試験官の話を聞いていなかったのか「ヒャッホー」と言いながらバラバラに走って行ってしまいました。
「……あの、私もあの方達のようにしたらよろしいのでしょうか?」
私は後ろを振り向き確認をすると、
全員が頭を抱えていました。
「……カイ、頼む」
「はぁ、仕方のないガキどもだ」
カイさんは物凄いスピードで追いかけて行きます。
「フィリア君はどうする? 彼らは不合格だ。 だが試験は始まったばかり。 このまま一人で受けても構わないが」
私は即答します。
「やりますわ!」
「わかった。 一人だから試験の評価は甘くなる、頑張ってくれたまえ。 では、試験を開始して下さい」
さぁ、頑張りますよ。
地図は先ほど全部覚えました。
まず、草が生い茂っている場所を避けながら、なるべく足場の良い場所を選んで進みます。
時折、森の中から聞こえてくる何かの鳴き声。
やはり本物の冒険は迫力が違います。
前から狼が二匹現れました。
「狼さんが相手ですね」
身体強化を施し、狼さんに接敵し、上腕部から伸びる棒を出して叩きました。
狼さんが倒れると、もう一匹が上から襲ってきました。
すかさず体を捻って狼さんの首に足を当てると、狼さんは近くの木に当たって動かなくなりました。
「ふぅ……討伐完了ですわ」
一度周りを見渡してから目的地へ足を運びます。
後ろから「ほぅ」という試験官のタム様の声が聞こえてきましたが、今は試験中です。
前進あるのみです。
あれから他の魔物に会う事もなく、目的の場所にたどり着きました。
「ここで何かを見つけ出せばよろしいのですね」
私は一旦地図を開き、何かヒントになるものがないか確認します。
地図をよく見ると、岩場の場所に印が付いていたのに気が付きました。
岩場に近づき、地面を見ると何かを埋めたような跡がありました。
私はそこを掘っていくと小さな箱が出てきました。
箱を空けて中を確認しますと、合格と書かれた札が入っていました。
「試験終了です。 おめでとうフィリア君」
いつの間にか後ろにいた試験官のタム様が拍手をしてくれました。
「さすがお嬢様です」
「あぁ、さっきのウルフの対応も見事だったよ」
サシャとキース様も褒めてくれました。
「あとはカイと例の三人組がどうなったかよね」
リリア様がはぐれた三人と、追っていったカイ様の心配をしています。
その時、地響きと叫び声が聞こえてきました。
「どひゃー! こっちくんな! あっちいけよー!」
三人組の悲鳴が、だんだん近づいてきます。
「馬鹿ども! 静かに逃げられないのか!」
カイ様の怒号まで聞こえてきました。
「キースさん、様子が変です。 対応お願いします」
試験官のタム様が、キース様にお願いしています。
「サシャさん、そこのお嬢様を頼む」
その言葉を終えた瞬間——
前方の木々の間から三人組とカイ様が飛び出してきました。
「みんな逃げろ! オークの群れだ!」
カイ様が叫びながら走ってきます。
三人組は私たちに目もくれず、走り去っていきました。
その直後、木々をなぎ倒しながら現れたのは十匹のオークでした。
オークは丸々と太っていて、大きさは私の倍くらいの大きさでしょうか。
「駄目だ! 逃げられない!」
カイ様が叫んで、
「仕方ない! 俺たちで食い止めるぞ!」
キース様も武器を構えて対峙しました。
「お嬢様、この様に囲まれた時の対処の仕方をお教えいたしましょう」
サシャは私に、ここで多対一のレッスンをするつもりです。
「お! おい、あんた何言ってんだ!?」
カイ様が叫びます。
しかし、サシャは——
「お嬢様と同じ魔力量で実演いたします」
そう言いながらサシャは皆の前に歩いて出ていきます。
「私が相手です。 行きますよ」
その言葉を発した瞬間にサシャは二体のオークの近くまで入り込み、一瞬で首を刈り取り、その反動を利用して次のオークへと飛びかかっていきます。
「カイ……リリア……俺たちの新人教習時、ダンジョン内の出来事を思い出したんだが……」
「奇遇だな……俺もだ」
「……私も……あの人今どうしてるのかな……」
キース様三人が何かを言っている間に、サシャが最後の一体を宙に蹴り上げて終わりました。
サシャは何事もないように私のそばに近づいてきました。
「このように対処すればよろしいのです。 おわかりですか?」
「はい。 サシャが凄いというのが良く分かりました」




