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14・冒険者ギルド

 今のうちにどうしても必要な物がありますわ。


 家に帰ると作りに行く事が難しくなりますからね。


 その為にはサシャを華麗にかわして出て行くのです。


 「おはようサシャ、行ってきますわ」


「お待ちなさい!」


 いきなり呼び止められました。


 私は振り返ります。


「なんですの?」


 サシャが一歩近づいてきます。


「一つ、朝食はお取りになりましたか?」


 私は半歩下がります。


「お外でいただきますわ」


 また一歩近づいてきます。


「二つ、そのお荷物はなんですか?」


 さらに半歩下がります。


「お出かけには必要な物ですわ」


 さらに一歩近づいてきます。


「三つ、その格好はなんですか?」


 さらに……壁で下がれません!


「よ……汚れてもいい格好ですわ」


 サシャの手が勢いよく壁につきました!


 壁ドンです!


「四つ、どちらへ向かわれるおつもりで?」


 顔が近いです!


 私はしどろもどろになりながら、正直に答えました。


「ぼ……冒険者ギルドへ登録ですわ」


「な・ぜ・で・す・か・?」


 サシャ……空いている手の指で、私の鼻の頭をグリグリするのをやめてもらえますか!?


 怖いです。


「はぁ……」


 サシャは特大なため息をついています。


「お嬢様」


「……はい」


「登録するなとは言いません。 ですが—— 一言くらいお話して頂かないとサシャは心配でたまりません」


 そうですよね、サシャには申し訳ないことをいました。


「……サシャ、申し訳ありませんでした」


「わかってくださればよろしいのです」


「それで、お友達と行かれるのですか?」


「私一人ですわ!」


 サシャが頭を抑えてふらつきました。


 大丈夫でしょうか……心配です。


「お嬢様」


「なんでしょう?」


「私もついて行きます」


 サシャは過保護です。


    *


「ここが冒険者ギルドなのですね」


 話しや、物語の中でしか知らない世界、楽しみですわ。


 サシャに言われて、護身用の武器として、伸びる鉄の棒を持って来ています。


 取り出して、軽く振ると伸びるんですよ。


 サシャのお墨付きの武器です。


 ギルドの中に入ると沢山の冒険者の方が掲示板の前に集まっています。


 私は中へ入って行きますと、なぜか道が出来るのです。


 悪役令嬢としての凄みがさらに出たのでしょうか。


「サシャ、賑やかなところですね」


 私は楽しそうにサシャに話しかけました。


 サシャは「そうですね」と、にこやかに答えてくれます。


 それにしても今日のサシャの格好はこの前と同じような格好ですが、ネクタイが白いですよね。


 あと、長い薄手のコートを羽織っています。


 サシャらしいですが、暑くないのでしょうか?


 私の格好は長袖のシャツに上着を羽織り、半ズボン姿ですわ。


 いざ、受付ですわね。


「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件で?」


 受付の、お姉さまが笑顔で対応してくださいます。


「登録をお願いしたいですわ」


 受付のお姉様は、一瞬笑顔が消えましたがすぐに手続きを始めてくださいました。


 お姉様が書類をまとめているところに、サシャが「これの更新もお願いします」と言ってカードを出してきました。


 それを見た受付のお姉様が、「しょ……少々お待ちください」と言って奥へと行ってしまわれました。


「マ! マスター!」


 先ほどの受付のお姉さまの大きな声がきこえてきます。


「どうしたのかしら? ね、サシャ」


「はい。 とても賑やかな受付嬢なのでしょう」


 私とサシャはしばらく待っていますと、奥から体の大きな男性が現れました。


「話は聞いたが……まさかお前が本当に来るとはな――サシャ」


 男の方はサシャをご存知なようです。


「お久しぶりです。 ギルドマスター」


「……噂は聞いていたが、昔のお前さんとは随分と変わっちまったな」


「そうでしょうか——いえ、そうなのかもしれませんね」


 ギルドマスターと呼ばれた方はいきなり笑い出しました。


「まぁ、いい! その話は今度詳しく聞かせてくれ!」


 ギルドマスターは受付のお姉様に作業を進めるように指示を出しました。


 受付のお姉様、なぜか手が震えていますね。


「そちらのお嬢様は剣士で登録希望ですね。 では、裏で試験を受けてもらいます」


「試験をするのですね」


 受付のお姉様の後をついて行き、広場までやってきました。


「俺が試験を担当するオリマだ。 壁際にある試験用の武器を持ってこちらに来るように。 武器は自分に合うものを選べよ」


「わかりましたわ」


「お嬢様、頑張って下さい」


「はい。 サシャも見ていて下さい」


 私は広場へ出ました。


「俺に一撃を当てるか、ある程度の時間を耐え抜けば合格だ。 魔法は使うなよ」


「わかりましたわ」


 気を抜かずに行きます。


 試験官に向かって走り出し、剣を振いました。


 ガンッ……


「……くっ、重いな」


 私の攻撃を受け止めたオリマ様。


「なかなかやるじゃないか」


 素早く動いてオリマ様に攻撃します。


「素早さも申し分ない」


 全て受け止められました。


 これが冒険者なのですね。


「今度はこちらから攻撃するから受け止めろよ」


「はい」


 オリマ様の攻撃が始まりました。


 私もできる限り受け止めて行きます。


「よし、合格だ」


「あ……ありがとうございます」


 オリマ様にお辞儀をしてサシャの元へ向かうと、


「そこの黒い服の、次は君か?」


「私はお嬢様の護衛ですので」


 サシャは即答しました。


「なら、手合わせ願えるか? 見たところかなりやるようだしな」


 オリマ様はサシャと試合をしたそうです。


「……なら、一度だけ。 お嬢様に手本をお見せします」


「しっかりと見せていただきますわ」


 サシャは広場に出て、オリマ様と向き合いました。


「武器は?」


 オリマ様が言うと、


「これで」


 拳を出すサシャ。


 審判は、見ていたギルドマスターが務めるようです。


「では、始め!」


 合図とともに宙を舞うオリマ様。


 サシャはいつの間にか懐に飛び込んでいて、腰を屈め、拳を突き出した姿で止まっていました。


 サシャの圧勝でした。

 

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