11・テスト
「お嬢様……お嬢様、起きてください」
「この問題が……こうですわ……」
「お嬢様……」
「ふふふ……」
突然世界が揺れ動きました。
「な! 何事ですの!?」
「お嬢様がベッドから転げ落ちただけです」
私は声のした方を見ると、布団を手にしたサシャが立っていました。
「サシャ……テストは?」
サシャはいつものようにため息をついてから、
「今日がテスト日の朝でございます」
そうです、テストの日です。
ですが……
「なぜ私はベッドから落ちているのですか?」
「お嬢様の寝相が悪かったのではないでしょうか?」
嘘です!
サシャは絶対に嘘をついてます!
「早く顔を洗って朝食にしてください」
そうですね、まずは顔を洗って着替えてからの朝食です。
サシャへの追及は後回しです。
着替えを終えて、すでに朝食が用意されている席へと腰を下ろします。
食事をしている私にサシャが話しかけてきました。
「そのままで結構なのでお聞きください」
食事中に珍しいですね。
「どうしました?」
「貴族寮のメイドたちの集まりがありまして……」
「はい」
「テスト結果の悪いご子息、ご令嬢には三日間の特別授業を受けてもらう事となりました」
「……な……なぜ、そのような事を」
「はい。 各お家からの通達がありまして……ゆえに私たちメイドごときではどうしようもありません」
なぜかサシャがにやりとしています。
わ……私の成績は良い方ですわよ!
「なのでお嬢様、手は抜かないでください」
サシャの笑顔が怖いです。
「ぜ、全力でテストに挑ませてもらいますわ!」
「それでこそお嬢様です」
私はサシャの横に積まれた教科書の山を見てしまいました。
決して負けられない戦いが始まりました。
*
「フィリア様、聞きましたか?」
「なにをでしょうか?」
ラザリア様が少し落ち込み気味で聞いてきました。
「貴族寮の話です」
「もしかして、特別授業のことでしょうか?」
やはり特別授業の話はラザリア様も気にしていますよね。
「そうなんです。 私心配で心配で」
ラザリア様は頬に手を当ててため息をつきました。
「ため息なんて、ラザリア様らしくありませんよ」
「……そうですね。 少々弱気になってしまっていましたね」
教室内を見渡すと、みんなテストと言う事でそわそわしています。
チャーニさんとセタ君、トーラス君も三人で集まって問題の確認をしています。
ルッツ様は周りとは違って、焦りもなく席に座っています。
カラーン コローン ……
鐘がなり、オーブル先生が教室に入ってきました。
「よーし席に着け、テストを始めるぞ。 ペン以外は片付けろよ」
全員席に着いたのを確認するとテスト用紙を配り始めました。
全員に配り終えたのを確認すると、「始め」の合図がかかりました。
全員が一斉にテストに取り掛かります。
最初は歴史ですか。
この辺はしっかりと覚えています。
王都で起きた事件の問題までありますが、授業ではやっていない問題ですね。
王都の外にある巨木が消し飛んだ原因は……
これは二年前の出来事でしたね。
三択ですか。
答えはモンスター災害ですね。
あの時は屋敷から出たらダメと言われましたね。
なんでも、たくさんのモンスターが暴れていたとか。
お父様に言われていたもの。
冒険者や破壊神なんて、あり得ませんからね。
次は……。
……。
カラーン コローン ……
最初のテストが終わりました。
次は算術ですわね。
……
一年で教わる算術なら、すでにマイラー老師から教わっています。
……
残るは法令と、魔法理論だけですね。
……
カラーン コローン ……
終了を告げる鐘の音が響き渡りました。
そしてテストも終了しました。
「答案用紙は明日渡すからな」
オーブル先生はなぜか楽しそうです。
ラザリア様にルッツ様。
チャーニさんにセタくんとトーラス君、みんな終わったことを喜んでいます。
「みなさんお疲れ様でした」
「フィリア様もお疲れ様です」
ルッツ様から話してきました。
「お疲れ様です。 ルッツ様。 どうでしたか?」
「ええ、どうにかやり終えた感じでした。 フィリア様に教えていただいた所もありましたから助かりました」
ルッツ様に微笑むと、少し顔を赤らめて視線を逸らされてしまいました。
これはあれですか、箔がつくというやつですわね!
「チャーニ、算術どうだった?」
セタ君がチャーニさんに算術の出来を聞いています。
「なんとか全問解けたと思うわ」
「すごいな! 俺なんか三問わからなかったよ」
「二人とも凄いね……僕、五問もわからなかったよ」
トーラス君も混じって、算術について話し合っています。
「ラザリア様はどうでしたか?」
私が聞いてみると、
「算術は……なんとか全問回答いたしましたわ。 フィリア様は?」
「私も同じような物ですわ」
そんなテストの後の会話が、教室内のあちらこちらで聞こえてきます。
明日が憂鬱だと言いながら帰る準備をしていく男子生徒のみなさん。
「そろそろ帰りましょうか」と私は言いました、
「そうですね。 今日はお部屋でゆっくりしますわ」
流石に疲れたご様子のラザリア様。
普段はこのようなお姿を見せるような方ではありませんの。
「それではみなさん、ごきげんよう」
帰ったら今日のことをサシャに報告ですね。
ふふふ。




