5話ー夏休み
姫野陽子と十島加奈子達は、夏休みが近いと言うことで、スピーチの原稿を練ったり忙しそうだった。
姫野陽子はラジオが好きなだけではなく、かなり仕事が出来るのか、先生から色々任されているようだった。
私はそれが、姫野さんには負担になっているように見えた。
私は職員室から出て来た、姫野陽子に声を掛ける。「陽子?大丈夫?」
そう声を掛けると、陽子はその場に倒れてしまった。
私は先生を呼んだ。
そして、陽子を保健室まで運んでもらった。
私は夏休み明けにある、文化祭での展覧会で出す写真のテーマを写真部の部室で聞いていた。
「目覚めた?」
「加奈子…?あれ?ここは?」
加奈子は「大丈夫?」と言う。
陽子は「勅使河原先生に頼まれた文化祭でやる企画案をまとめなきゃ…」と言い無理に動こうとする。
加奈子は言う。「少し休んだら?急に倒れたわけだし、みんなの為に動くのは立派だよ。でもね?無理してまでも動くのは陽子の悪い癖よ。宮野さんも心配していたのよ。最近、姫野さんの顔色が悪いってね?だから、少し休んだら?明日からはせっかくの夏休みでしょ?だから、今日くらいはここで休んでいてもバチは当たらないと思うわ」
陽子は「加奈子…」と言う。
そして、加奈子は「今日のスピーチは私が変わるから、ゆっくり休んで?」と言った。
姫野陽子は「ありがとう…」と言った。
姫野陽子が最近、頑張りすぎているのは皆が知っていたので、全体集会などが終わった後の学級会の進行が十島加奈子に変わっていても、誰も加奈子に何かは言わなかった。
でも、姫野陽子の心配はしているようだった。
そして、夏休みへと突入した。
家に帰ってから、カメラを持ってあっちこっちを思い思いにシャッターを切った。
カメラを首に掛けたまま、帰ってきた私。
東嗣治は言う。「何処か行きたい所はないか?」
私は「列車に乗って何処かへ行きたい」と答えた。
東嗣治は「車じゃなくて、列車か…」と少し困惑した様子で答えた。
東嗣治は言う。「夏の法要までには、帰られるようであったら、ありかもしれんな…?」
そして、東嗣治は事務用のパソコンがある部屋と向かっていったように見えた。
次の日、私が起きると東嗣治は何故か出掛ける用意をしていた。
いつもの袈裟姿ではなく、背広でバッチリ決めていた。
東嗣治は私にも着替えるように言う。
私は一通り、朝の用意と出掛ける用意を済ませカメラを持って、準備が出来たことを東嗣治に告げる。
すると、車に乗るように促されて私達は車に乗って駅まで向かう。
そして、駅の駐車場に車を止めて、東嗣治は窓口に行く。
窓口の係員は切符は4枚。
東嗣治に渡した。
そのうち、1枚を東嗣治は私に渡す。
東嗣治は改札に切符を通した。
私も真似をして改札に切符を通した。
快速列車がホームに入ってきた。
私はそれを写真に収める。
東嗣治は言う。「これに乗っていこう」
私は無言で頷いて、快速列車に乗る。
北の高原方面へゆく快速列車だった。
首都の方に行くと、かつての知り合いに会いたくなって旅行どころじゃなくなってしまうから、やめたらしい。
私たちは終点まで乗って、到着した駅で降りて改札から出る。
景色が綺麗な丘があるらしいので私たちは登っていった。
下を走る鉄道路線を見下ろすことが出来る高い丘だった。
私はそこでカメラを構えて写真を撮った。
何枚か写真を撮った後、私たちは丘を下り、そして麓の小さな町へと行く。
その後、商店でいろいろお土産やご当地の食べ物を買う。
私は篠島玲子へ美味しそうなご当地のまんじゅうみたいな、お菓子を買った。
その後、小さな旅館へ行くと東嗣治は「予約していた。東です」と言う。
女将さんは「東嗣治さんですね。よくいらっしゃいました」と言い深く頭を下げた。
私はこっちの世界にも、こういうのがあるのだと。
かなり、驚いたのであった。
私達は旅館で夕飯を食べる。
普通に和食のような感じにかつて居た世界に近くて、美味しかった。
すっかり、こっちの世界に馴染み過ぎて自分が転移者であることを忘れそうになるくらいだった。
こっちの世界での父である、東嗣治は窓を開けて言う。「そろそろ、花火大会が始まる。ここからだとよく見えるだろう」
私は外を見ていた。
すると、花火が一発上がる。
続いて二発。
それからは多くの花火が上がった。
父がお風呂に早く入れと言った理由が分かった。
この為だったのだろう。
こっちの世界にもこういうものはあるらしい。
そして、花火が終わった後、東嗣治は言う。「明日には帰るから、自分の荷物はある程度まとめておいて欲しい」と言った。
花火が終わったら、いい時間ではあったので私は寝る準備をした。
父はお風呂に入って来ると言い、そのまま部屋を出た。
私はすっかり眠っていた。
朝、父の起こされて起きる。
色々と用意をする。
しばらくすると、朝食が運ばれてきた。
私たちは、それを食べ終えて。
小さな旅館を後にした。
宿泊代はすでに振り込みで入れたらしく、特に何もなくそのまま、外へ出る。
女将さんが、「本日はありがとうございました。この後もお気をつけて」と言う。
私は「とても、良かったわ。こちらこそ、ありがとうございました」と言う。
父が時計を気にしている。
そこから、待ってくれていたタクシーに乗り込んで、駅へと向かった。
1250リベルを運転手さんに払って、タクシーを降りた。
切符を改札に通して、駅構内へと入ってホームへと向かう。
まだ列車は居ない。
二人はホームのベンチに腰掛ける。
座って少し待っていたら、スピーカーから接近放送が流れ出す。
私たちはホームにやってきた帰る方面の快速列車に乗って、始発なのでシートに座ってひと息ついた。
自宅の最寄り駅に着いた。
鞄を肩に掛け、スーツケースを引いて列車から降りて、止めてある車へと向かった。
東嗣治が車の鍵を開けて、スーツケースをトランクに積んで、二人車に乗ってそのまま自宅へと向かった。
私たちは自宅に着いて、荷物を整理した。
一泊二日だったので、夏の法要に影響はない。
この世界にも夏の法要みたいな、風習があるらしく。
お寺と言うこともあり、色々な人が訪れていた。
そして、私は色々な人が出入りしていると言うこともあって、邪魔になりそうだったので篠島玲子にお土産のお菓子を渡した後に撮影をするために遊びに出掛けていた。
私は篠島玲子の家に行き、チャイムを鳴らす。
玄関のドアが開き、玲子が出て来た。
玲子は「由利じゃない?どうしたの?」と言う。
私は「お土産のお菓子を渡したくて…。この後って玲子、暇?」と聞く。
玲子は「まぁ、暇だけど…?」と答える。
私は玲子にお土産のお菓子を渡して、家に仕舞ってくるように促し、カメラを持って二人であちこち、写真を撮って回った。
すると、いつの間にか夕方になっていた。
私と、玲子は同じ夕焼けを撮っていた。
篠島玲子は言う。「綺麗だね」
私は「そうね…」と言う。
そして、篠島玲子は時計を見て「そろそろ帰らないと…」と言う。
私も時計を見て、「そうね、私も帰らないと…」と言う。
白い毛並みで九尾の狐が来た。
玲子の使い魔である。
「そろそろ、夜だぞ」と言う。
篠島玲子は「分かっている。今から帰るところ」と答える。
私と篠島玲子は今日は別れて、お互いの家路を歩いて行った。
始業式の日。
宿題は全て終わらせたし、写真部の文化祭で展示する写真も用意してあるし、出来なかった事はない。
前の世界に居た頃より自分、順調に生活をこなしている。
下駄箱のある玄関で篠島玲子に会い「れいちゃん、おはよ」と私は言う。
篠島玲子は「ゆーり、おはよ」と返してくれた。
そして、私たちは教室へと向かった。
教室に入ると、姫野陽子も十島加奈子もいた。
姫野陽子は夏休みで休んだのか、顔色が前より良くなっていた。
私は姫野陽子に「陽子、休み前より顔色が良くなっているわ。よかった」と言い、顔を指でつついた。
姫野陽子は「心配掛けて、ごめんなさい」と言う。
十島加奈子は「さぁ、準備するわよ」と言い、先生が来る前の準備を姫野陽子をつれて一緒にし出した。
担任の勅使河原荘司先生が来た。
勅使河原先生は「いつも、ありがとう」と姫野陽子と十島加奈子に言い、一礼する。
挨拶の号令を姫野陽子が言う。
そして、ホームルームが始まった。
その後、全体集会として体育館に集まって、全学年に伝えるべき事項などが伝えられた。
一年のとあるクラスでは水難事故で亡くなった子がいるとか、なんとか。
私は自分のクラスではないから、特に気にとめても居なかった。
その後、帰りのホームルームの後に帰路について、家に帰るなり。
私は「あ゛ぁ゛~」と言い、寝転んだ。
夏休みの後半は宿題を終わらせるべく頑張ったので、少し気が抜けていた。
明日からは文化祭の準備で授業などが変則になるらしい。
とりあえず起き上がって、私は明日の用意をした。
明日は放課後に写真部の展示の選考がある。
そんなことなどを考えていた。
そんな時だった。
篠島玲子からスマートフォンにメッセージが入った。
「写真部に出す写真。決めた?」
私は
「決めたよ。明日、もって行く」と返信をした。
篠島玲子からは「ゆーりの写真。楽しみにしている。」と返信が来たので、
私は「私もれいちゃんの写真。楽しみだわ」と返した。
そして、私はスマートフォンを伏せた。
違う世界といえども、前の世界にある程度は似ていて、違うのは魔法が存在していることくらい。
モノの名前が今まで居た世界と違って困惑する事も稀にあるが、こっちの世界の人たちには良くしてもらっている。
だから、こっちの世界の学校での文化祭も、特に変わったことはないだろう。
私はそう信じて居たいし、信じて居る。
そう信じて準備をし、楽しみに待つ事にした。




