6話ー文化祭と気になったことを学ぶための本、そして、親友を護るために。
準備も順調に進んで、いよいよ文化祭の当日になった。
私のクラスは何故か、メイド執事喫茶をやることになった。
写真部では顧問の悪ふざけで、私のクラスの子だけ、着替えずにこのまま写真部の写真の説明などをすることになった。
絶対に顧問の趣味かなと思ったが、私は黙っておいた。
その顧問は女性なんですけどね。
というか、この世界にもこういう概念があることに驚いた。
私はこの世界でのメイドの歴史が気になった。
しかし、今はそんなことを考えている暇はない。
メイド喫茶が忙しすぎるのだ。
そして、交代の時間。
私は篠島玲子と一緒に、写真部の展示の方へ行く。
普段は履かないロングスカート故に二人とも階段で裾を踏んで転びそうになりながらも、無事に写真部の展示がある教室にたどり着いた。
顧問の横島景子先生は、私たち二人を見るなり「二人とも、似合っているよ~かわいいね~」と言う。
篠島玲子は「ありがとう、ここまで階段をこの格好で苦労して、登った甲斐がありましてよ」と言う。
そして、私達は写真部の各々の持ち場につく。
私たちの写真を見て、色んな人が、「おぉ…」と言ったり、感想を紙に書いて写真横の感想欄に貼ってくれたりしていた。
私は、自分の作品が評価されたことに、少しの快感を覚えた。
そして、教室に戻らないと行けない時間になったので、私と篠島玲子は顧問の横島景子先生に挨拶をし、時間になったので戻る事を伝え、教室へと戻るために歩く。
教室に戻るやいなや、大混雑ですぐに接客へと入った。
色々な人が来たが、とりあえず初めての体験も多くて、楽しいと感じた。
文化祭が終わって、帰りのホームルームの時、姫野陽子が売り上げの額を言う。
売上金は全クラス慣例で、慈善団体に寄付すると決まっているらしい。
私はこっちの世界での慣習などを調べる為に休日は図書館に通うようになった。
メイドや執事文化は一般界が魔法界から独立する以前からあった文化らしく、なる為には…。
まず魔法が使えることが必須条件だったらしいが、護衛対象は魔法が使える使えないに関係は無く、お金がある名家だと、必然的に守ってもらえたらしい。
現代では魔法が使えなくても、メイドや執事になれるらしいが、魔法使いからの襲撃を避けるために魔法の気配は最低限、感じられる必要はあり、その時に魔法無効化装置のスイッチを入れる事が出来るなどの、魔法の知識も多少は持っていないとダメらしい。
私は、主を護るって過酷な事なのね…。と思いながら、「一般界、魔法界、現代武装護衛メイド(執事)」という本を本棚に戻した。
そして、私は図書館下の喫茶店でお昼を食べ、珈琲を飲んだ後に。
写真を撮る為にカメラを出して、外を歩き出す。
写真を撮りながら、外を歩いていると、九尾に咥えられて、駄々をこねる篠島玲子がいた。
私は「何してるの?れいちゃん…」と言う。
篠島玲子は「ゆーり…」と言った後「キュビが離してくれないの…」と言う。
九尾は「いや、我の霊力で涼しくしろってうるさくてな…、だから肝が冷えるように咥えてやったのだ」と言いしてやったりな顔をした。
私は「魔力だって、切れることはあるし、霊力だって、切れるでしょ…?だから、あんまり九尾をいじめるのはやめたら?使い魔だからって、雑に扱っちゃダメだよ…。信頼を築かないと…、使い魔扱いの荒い魔法使いは、使い魔からモテないって、父が言っていたけど?」と言う。
九尾は「そうだ。言っては無かったが能力は我の方が上だ。だが、なんでお前の使い魔をやっているのかと言うと、お前の行動が面白いのと、変なギフテッド持ちだから、我はいつでも自由になれるからな」と言う。
篠島玲子は「でも、キュビ。私の家の自家製バニラアイスクリーム大好きでしょ?自由になったら、それは食べられないよ?」
九尾は「うぅ…」と悩ましそうに唸っていた。
私は「飼い慣らされている…?」と言う。
そして、「向こうで夕日の写真を撮ってくるから、じゃあ、またね?」と言い、展望台へと向かった。
夕日の写真を撮り終えて、私は家に帰る。
日が短くなりつつあった。
そろそろ夏が終わる。
今日の夜はビデオ通話をしながら、篠島玲子からデジタル現像のやり方を教えてもらっていた。
魔法のある世界ながら、科学技術を否定しない世界で良かったと、つくづく思った。
そして、私はデジタル現像で写真が化けることを学んだが…。
なんか、写真のようで写真で無いような気がして、撮って出しで良いかな?と思うようになってしまった。
私は休日に古本屋街を歩いているときだった。
図書館で見た「一般界、魔法界、現代武装護衛メイド(執事)」という本が売りに出されて居るのを見かけた。
しかも、相場より結構お安く。
私はおこづかいから、即決で買っていた。
その後、「魔法界の文化論(上)」「魔法界の文化論(中上ー一般界の独立)」「魔法界の文化論(中下ー王政と教育革命期)」と「魔法界の文化論(下ー戦争期と敗戦、その後、一般界による統治)」の本も買った。
それを家に帰ってから読みふけていると、前の世界に居た頃、とある国で使われていたような文字が多用されていた。
それは主に中下の冊で見られた。
私はこっちの世界での養父に聞いてみた。
「なんか、魔法界の文化論って本にキリル文字みたいなのが、多く出てくるのだけど…」と
養父は察したように「この世界がまだ、繋がっていた頃、不意に迷い込んだ人たちが、魔法を自分の国の言語で体系化したときに、この詠唱文字は生まれたのだよ。そして、その詠唱文字は表音文字でこの世界のどの言語よりも、まだ単純な方だった。だから、魔法界では今までの文化を捨てて、教育改革と称して、口語をこの文字に合せて文語もこの文字で表すことにした。今までの文字を捨ててね。魔法を詠唱するわけでも無いのに、こういう事が魔法界文化会の会長である私の耳に事後報告で入ってきた。その時に私はこの国に未来は無いと思って、独立直後のこちら、一般界へと逃れてきた。そして、その頃の一般界は科学を追い求めるあまりに心を蔑ろにしていた、その所為で街が荒れていた。だから、私は一般界では異端に近い宗教家になると決心をした。あぁ、懐かしいなぁ…。最初は冷ややかだったけど、ずっと真面目にやってきたから、今のような地位がある。だから、何でも真面目にやるといい」
私は養父、東嗣治に「お父さんは本とかは書かないの?今の話とか、小説にしたら、面白そうじゃ無い?記録にもなるし」と言う。
東嗣治は「でも、すでに魔法界あたりだと、一般界主導で教育の再構築が行われたから、私も教科書に載っているそうな…、だから、私がわざわざ発信をする必要性はないかな」と言って軽く笑った。
そして「魔法界の文化論(下)」の読みえ終えて、後書きを読む。
後書きには「僕は若い頃、国を発展させるためには、教育を分かりやすい形にする必要があると考え、「まずはわかりにくい文字体系を詠唱する人の共通言語。詠唱文字へと置き換えるべきだ」と王に進言、王は乗り気では無かったが、私が個別に粘り強く、交渉。そして、実現するに至った。しかし、ある程度完成していた教育システムが崩壊し、魔法界文化会メンバーの多数に逃げられ、一部は自ら命を絶つ文化会メンバーも居た。最初は必要な犠牲だと思ったが、今思えば、そんなことしなくて良かった。特に文化会、会長の魔法学者に逃げられたのは、国を運営する上で大きな痛手となった。反省や自分の振り返りも兼ねて、この魔法界の文化論を締めたいと思う。(栄生(世栄)真澄)」
私は「世栄…。なんか、どっかで聞いたことが…」と思ったが、深くは気にとめなかった。
魔法界の文化論には文化のことは出てくるが、王家が誰で、王が誰でとかは、一切、書かれず。
ただひたすらに、「魔法界でのこの時期はこういう文化が、こんな文化がありました。」と書かれる。
ある意味、文化を俯瞰している、私見の少なそうな本だった。
私は気になったので、養父に本(魔法界の文化論(中下))を見せて、「これって本当なの?」と聞いてみた。
養父は本を見ながら、「事実を淡々と書いている。俯瞰して、私見があまり書かれていない。誰の書いた本?」と聞いてきた。
私は、魔法界の文化論(下)の後書きを見せた。
養父は何かを、察したようだった。
「あの若き青年だった真澄が、一度、人づてに文化を破壊して反省しているとは、聞いたが、その反省もあって、あまり私見を入れずに俯瞰で、事実を淡々と書いて、この書を書き残すことにしたんだろうな…」
養父は何故か、目に涙を浮かべていた。
養父は携帯電話で本のタイトルを入れて、調べているようだった。
そして、養父は言う。「この本、大切にしなさい。もう手に入らないから」
私は「もしかして、絶版…?」と聞く。
養父は「そうだ。しかも、かなり高値で取引されている。」と答える。
私は「古本屋街のお店で、私が買えるくらいの値段で売っていたのに…」と言うと、
養父は「奇跡に近い。いらなくなったら、私が読むから、渡して欲しい。こんな良本は中々ないから」と言う。
私は「そうなんだ…」と言い、とりあえず自分の部屋に本を持って戻った。
私は魔法界の文化などを学ぶのが趣味になっていた。
だけど、一般界の一般人向けの学校に行っているので、その所為でその趣味を公にして、学校では言えなかった。
だけど、二人きりで篠島玲子に会うときは、そういう話が出来た。
私と、篠島玲子はお互い色々な秘密を抱え、友達でも深い関係。
篠島玲子はどう思っているか知らないが、親友とも呼べる関係になっていた。
私は篠島玲子と一緒に居るときは、何故か少し心が落ち着くような気がした。
ある日、私は学校終わりに篠島玲子と遊んでいるとき、玲子の使い魔であるキュビに呼ばれた。
キュビは「玲子はゆーりのことを好きだと思っているらしいぞ」と言った。
私は「れいちゃんは友達として、好きだよ」と言う。
キュビは「ゆーりは本当に鈍感だなぁ…」と言う。
そして、キュビは「まぁ、気づかない方が幸せな事もある」と言って、私の方を見てため息を吐いた。
私は何が何だか、分からない。
れいちゃんが呼んでいる。
私は呼び声のする方へと向かった。
れいちゃんは公園に生えていた花で、冠を作ってくれていた。
「可愛いでしょ」とれいちゃんは言う。
私は「前に居た世界でもこういう花で、冠を作るのが得意な子がいたのよね…」と思わず思い出して、遠くを見てしまった。
篠島玲子は「ゆーり。大丈夫?」と声をかけてきた。
私は「大丈夫。ちょっと昔のことを思い出しただけだから…」と平静を装うが、確実にダメージを受けていた。
私は幼いとき、こういう花冠を作るのが苦手で、公園で遊んだときに一人浮いてしまった記憶があったからだ。
しゃがみ込んだ私を抱きしめて篠島玲子は言う。「ごめんね…、私が花冠なんか作ってしまうから…」
私は「大丈夫…」と言い、篠島玲子が落とした花冠を玲子の頭にのせる。
そして、私は「相変わらず、れいちゃんは可愛いね。よく似合ってる。だから、ずっと変わらないでね…」と言う。
篠島玲子は「ゆーり…。まるでお別れみたいな事を言わないでよね…」と言う。
篠島玲子は「生きていたら、きっと、また会えるから…。だから、死なないでよね…、自殺だったら、私も後を追うから…」と言う。
私は「自殺だとしても後は追わないで…、あなたには生きていて欲しいから…、今は理不尽に聞こえるかもしれない…。だから、また会えたときには、居なかった間の、思い出話をして欲しいわ」と言って、そのまま、階段を降りていく。
篠島玲子は私を追いかけようとする。
それをキュビが咥えて止める。
篠島玲子は「なにするのよ!!!!離して!!!!」と言う。
キュビは「主が死んでしまうのは、我にとっても気分の悪い出来事だ」と言う。
篠島玲子は「どういうこと?」と言った瞬間に地面が大きく揺れた。
地面の揺れが落ち着いてから、キュビは「あいつは未来が見えてしまった。そして、お前を護るために、あえて、人柱になることを選んだ」と言う。
来るときに二人で上がった階段は崩れて、さっき階段を降りていた宮野由利の姿は見えなかった。
篠島玲子は「ゆーり!!!!」と何度も叫ぶ。
しかし、返事は無かった。
キュビは篠島玲子を咥えて、そのまま空を飛ぶ。
キュビは「人柱になるって事は…、身体は見つけられない」と言い、篠島玲子に暗に諦めるように言う。
篠島玲子は「そんな…。ひどいよ…ゆーり。どうせなら私も一緒に…」と言い泣く。
その頃、私は冥界にいた。
冥界の門番は「より良い別世界で、せっかく生かしてやったのに…、親友を生かすために人柱になるなんて…」と言う。
そして、あの地震から25年が経っていた。
僕はあの地震を経験していない世代だ。
生まれ故郷の中規模都市で、タクシー運転手をしていた。
流しで走っていたら、歩道で手を上げる40歳くらいの女性がいた。
夏の法要というか、弔いの期間でお墓にお参りに行く人が多い時期。
僕は「どちらまで?」とその女性に尋ねる。
すると女性は地元で有名な寺院の名前を告げて、そこへ行くよう求めた。
その寺院は何故か、懐かしい感じがするのだ。
上手く説明するのは難しいが、僕が大人になる前から、そういう感情を抱いていた。
よく分からない、存在しない楽しい思い出を思い出す感じするのだ。
僕はそこの前まで、車を走らせる。
そして、僕は「ここで良いですか?」と言う。
その女性は「えぇ」と言う。
僕は「3560リベルになります」と言う。
女性は多めにお金を渡し、「少し待っていて?」と言う。
5分後、その女性は戻ってきた。
その女性は今度、自宅と思われる住所を告げる。
僕はその家の前を通ったことが何度かある。
そこもあの寺院と同じく、何故か懐かしさを感じる場所だった。
僕は思わず「あの寺院、小さい頃から何故か謎の懐かしさを感じるんです…」と言う。
その女性は「そうなんですね…」と答えた。
そして、僕は「何故か、あの寺院に行くと懐かしさ以外にも「れいちゃん」って、存在も知らない女性を思い出して、元気にしているかな…?って頭によぎるんですよ、本当に誰なんでしょうね」と言い笑う。
その女性は、涙目になっていた。
僕は「なんか、悪いことを言いましたか?」と顔面蒼白だ。
その女性は「昔を思い出しちゃって…、私をれいちゃんって呼ぶの、あの地震で亡くなったゆーりっていう親友くらいだったから…」と泣き出していた。
僕は何故か、色々と存在しない記憶が蘇る、全然知らない世界で電車に飛び込んで、気づいたら、知らない駅事務室にいて、路線図が違う世界のもだと驚いて、その後、気づいたら病院にいて、僧侶が養父になって、その後も死のうと用水に浸かってみたり、心配してくれたクラスメイト、友達のクラスメイトが趣味の変わったラジオを聞かしてくれたり、養父が私の要望を聞いて、列車で旅に連れて行ってくれたり、旅館で花火を見られる部屋を取ってくれたり、文化祭ではメイド服を着せられたり、そこから、この世界の文化が気になったり。
そして、未来が見えてしまい、親友を護るために人柱になったことも。
僕は「断片的だったし、その上、もう忘れかけていたのですが…、私の前世はあの地震で若くに亡くなった女性だったみたいで、篠島玲子っていう親友がいたみたいで…、ごめんなさい…。初対面のお客様にする話では無かったですよね…」と口を滑らした事を謝る。
その女性は「今?なんて?」と言う。
僕は「何でもありませんよ…」と言い取り繕う。
そして、その女性は「私、篠島玲子って言うの。両親は普通の一般人だけど、私は魔法が使えるの。だから変異者のギフテッドがあって、私は杖が使えないの」と言う。
僕は何故か、まるで昨日の事のように前世の記憶が取り戻されていく。
実は現世の僕も両親共に普通の一般人で魔法は使えない。
だけど、僕には魔法の能力が発現し、しっかりハンデとギフテッドもあった。
僕の場合は詠唱限定の魔法が杖からの発動は出来るが、詠唱は何をやっても発動しないっていうハンデとギフテッドだった。
僕は「僕も両親共に魔法が使えないのに、僕に突然魔法の能力が顕現して、生まれてきちゃって…、僕は逆で杖は使えるんですが、詠唱が全くダメで…。お客さんのような詠唱使いって憧れちゃうんですよね…。無い物ねだりなんですけど」と言う。
篠島玲子は「得意な魔法は何かある?」と聞いてきた。
僕は「攻撃魔法を直撃しない程度に至近弾で当てるのが一番得意ですね」と言う。
篠島玲子は「ゆーりも上手かったのよね。それ」と言う。
そんなことを話している間に、篠島玲子の自宅前に着いていた。
僕はメーターを支払いにして「5760リベルです」と言う。
篠島玲子は6000リベルを渡してきた。
僕はおつりを用意しようとしている間に篠島玲子は言う。「なんか、懐かしかったわ。だから、おつりは受け取って?あなたにするのも、ちょっと違うかもしれないが、ゆーりが先に行ってしまう前にされた事の仕返しも出来たしね。本当に…。ゆーりのバカ…」
僕は前世の記憶を思い出して、胸が締め付けられた。
そして、篠島玲子は「ありがとうね…。湯之島利来利来さん」と僕の名前を呼んで、そのまま玄関の鍵を開けて、そのまま家の中へと入っていた。
僕は車を走らせて、次のお客を探すことにした。
ここまで、お付き合い頂きありがとうございました。
この作品はここまでになります。
書き出しの思いつきだけで、書き始めた作品ですが、
書き続け、そして完結まで持って行く事が出来ました。
自己満足だけで、ダラダラ書いておりますが、
他の作品も読んで頂けると励みになります。
ありがとうございました。




