6.報酬と約束
「わかった。じゃあこういうのはどう?」
「ねぇ、どうして依頼する側がそんなにも上からなの?」
私の言葉など、どこ吹く風といった様子で、ニコラスはいくつかの提案を羅列した。
①三ヶ月ニコラスの補佐官として業務を務める。
②期間中、ニコラスの恋人役も務める。
③恋人を務める間は、自分以外の男性と食事やデートに行かない。(ニコラスも同様)
④すべての契約終了後は、私の願いを一つ叶える。
「期間が短くなるってどういうこと?」
「向こうが諦めたら早々に契約解消でいいよ。補佐官は三ヶ月、あいつが戻ってくるまでやってもらうけど」
「…あなた以外の男性と食事やデートに行かないっていうのは?」
「そこは誠実に行きたいだろ?俺もレヴィ以外の女性と食事もデートもしないし。まぁそんな相手いないけどさ」
しばらく黙って考える。
「…一旦、納得いかないものばかりなのは置いておくとして、④の願いを叶えるって、具体的には?本当に何でもいいの?」
「出来ることならね。例えば宇宙に行きたいとかそういうのは無理だけど」
「バカにしてる?」
「まさか」
ニコラスは楽しそうにケラケラと笑った。
「例えばそうだな…あ、レヴィ、ずっとヒリー国に行きたいって言ってただろ?そこでのバカンスと、交通費をこちらが持つ、とか、まぁそんな感じでいいよ」
「えっ!」
ヒリー国というのは、私達の暮らすベビランド国の西側に位置する国だ。
一年を通して温かい気候が有名で、美しい海や豊かな自然など、私達の国では有名バカンス地として知られていた。
特産品や食べ物なども大きく異なり、幼い頃より周辺諸国の文化などに興味のあった私は、当然ヒリー国にも人生で一度訪ねてみたいと思っていた。
もちろん、昔──侯爵令嬢であった頃なら行けただろう。
ただ、今は、自分で働いて、すべて、自分のお金で生活している。生活費や、将来のためのお金、様々なことを考えた時に、有名バカンス地のヒリー国への旅行など、考えてもいなかった。
「期間も、レヴィが行きたいだけ行っていいよ。どう?」
「…なんか、お金で釣られるやつみたいで悔しい…」
「こっちも困ってるから、なりふり構ってられないからいいんだよ」
「う〜〜〜ん」
「双方に利があるんだから、のんでくれると助かるんだけど」
「う〜〜〜〜〜ん…」
「わかった、それに期間中の美味しい食事の提供も約束する。毎日は無理かもだけど…これでどうだ?」
私は一口紅茶を含み、改めて考えた。
ニコラスはたしかに少し面倒くさい人間ではあるが、同僚として考えた場合は、仕事ができるいい人間だと思う。
結局のところ王城で働くということに変わりがないから、まぁここも飲み込める。
それに、ニコラスの元でもあの法律の改法を見届けることは可能だ。なんなら、今までよりも近い位置で見届けられる。
そして───美味しい食事とすべてが終わったあとのバカンス付ときた。
恋人役も、相手のご令嬢が諦めてくれたら短期で終了できる。
ちなみにニコラスはこのご令嬢以外にも大変人気なため、問題ごとは増えるだろうが、一人も二人以上も対して変わらないだろう。
…まぁ、そこまで悪くはないか。
「…わかった」
「おっ」
「口約束ではなくて、しっかり誓約書を書いて。それなら、協力するわ」
「レヴィ!」
画して私とのニコラスの共謀関係がスタートすることとなったのだった。




