16.アレックス殿下の突撃①
「…あの、発言してもよろしいでしょうか」
「だから、別にそんなにかしこまらなくていいよ?どうぞ」
まだ若干書類が散らばっている執務室に佇むアレックス殿下の姿は、どうにもこの部屋に馴染んでいない。
彼がいるだけで、この部屋の雰囲気がどこか厳かに感じるのだから、王族のオーラというのは、単調な感想ではあるが本当にすごいなと改めて思った。
「申し訳ありません。なんだかまだ状況を飲み込めず…。その…えっと、アレックス殿下は、本日どのようなご用事でいらっしゃったんですか?」
私は、恐る恐る口を開く。
「あぁ」
そんなことか、と言った様子で手を叩きながら彼は答えた。
「ニコラスに恋人が出来たって聞いたから、どんな子なのか見に来ようかと思って」
「…!?わ、私ということですかね?」
「ニコラスは二股とかするような男じゃないと思うし、君なんじゃないかな?」
こんなことを王族に言うのは良くないのかもしれないが、流石ニコラスの友人という気がする。
ニコニコとどこか食えないアレックス殿下。
ニコラスと友人、ということは、前にニコラスが言っていた『強力な助っ人』というのは、アレックス殿下のことなのだろうか。
…というか、殿下と友人なら予め教えてくれてても良かったのに。
こんなの、契約に含まれてない。
ひとまず簡単に執務室を整えて、やりかけの業務をササッとまとめて片付ける。
そして、適当に買った茶葉で申し訳ないが、執務室に置いている紅茶を淹れた。
「よかったらどうぞ」
「なんかごめんね?気を使わせちゃって」
「いえ…」
(ニコラス!早く戻ってきて…!!)
こんなにもニコラスを恋しく思ったことはない。
普段はいつも口喧嘩ばかりしているが、今は一刻も早く戻ってきて私を助けてほしいと思った。
「レヴィちゃんもよかったら一緒にどう?休憩ということで、僕の相手をしてくれると嬉しいんだけど」
「レ、レヴィちゃん!?え、いえ、私なんかがお相手では…」
「うん、それが一番可愛いかと思って。ね、さっきから線を引きすぎじゃない?同じ人間だし、もっと気楽に話してくれていいのに」
ほらほら、と自身の腰掛ける向かいに置かれたソファを指差した。
これは、もう覚悟を決めるしかないのだろう。
私は、自分の分の紅茶を手早く淹れると、殿下の向かいのソファに恐る恐る腰を下ろした。
小さい頃には、何度かパーティーなどでお見かけしたことがあると思う。
ただ私は家督のこともあり、両親含めて殿下の婚約者という座を狙っていたわけではないので、あくまで一般的な挨拶程度でしか話したことはなかったと思う。
小さい頃の話なので、あんまり覚えてもいないけれど…。
(流石に、私が侯爵令嬢とバレることはないと思うけど、殿下の前に出るなら、もう少しお化粧とかしたかったわ…)
思わず腰掛けた自分の服装などをチラリと見やる。
可愛い乙女心だと思ってほしい。
自分たちの国の王子なのだ。
そうそう話す機会なんてないのだから、少しでも着飾って御前に出たいと思うのは必然だと思う。
そわそわしながら、乾いた喉を潤すように紅茶に口を付ける。
二口ほど飲んだあたりで、アレックス殿下が不意に口を開いた。
「ねぇねぇ、ニコラスとはどうやって付き合ったの?ニコラスが告白したの?」
「!?」




