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家出した侯爵令嬢は、今日も定時で帰りたい  作者: 千翔りさ
2章 協力関係のスタート

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14/21

14.新しい敵

それからと言うもの、私の予想通り彼女は「こんな女なら絶対に勝てる!」と思ったのだろう。


毎日のように執務室に押しかけてきては、私が対応して嫌味を言われながら追い返す。

そんな地獄の日々が始まった。


最初のうちは、まぁなんだかんだと楽しくやっていたのだが、一週間も立つ頃にはだんだんとストレスにもなってくる。


そんな私を哀れに思ったニコラスが、元はといえば彼のせいなのだが、約束通り、ちょっと高いお昼ご飯を奢ってくれたり、有名店のスイーツだったりを差し入れしてくれることもあった。


ただ、それだけでは釣り合いが取れないレベルになってきていた。


そしてついに、私の予想していたことが起きたのだ。


「娘から聞いたんだがね。やっぱり、そういうことは良くないと思うんだよ。ねぇ、どう思う?平民から文官まで成り上がった才女のような君なら、私の言ってることが理解できるだろう?」


言葉の節々から、私を見下したような棘のあるセリフを言うこの男は、ご存知の通り、エレーヌ様の父、ドモン公爵である。


ニコラスが会議で不在な時を狙って、この執務室にに突撃してきたのだ。


娘の可愛いお願いを聞き、彼女を補佐官にするのは職権乱用で不純だと。

…一般論として考えた場合に、そこに関しては否定できないが。


まぁ正直なところ、あの初日のエレーヌ様突撃事件の次の日には、彼がすぐさまやって来るかと思っていたので、よく耐えたほうな気はする。


ただ、私は本当に巻き込まれているだけなのだ。

そもそも、彼女というのも嘘だし。


そして、私が思っていたよりもニコラスの業務は忙しい。

私が引っ越した日以降、彼と家ですれ違ったことはない。


メイドや執事に聞いてみても、ニコラスが家の中で気を使ってくれている、とかではなく、帰らないのが日常で、本当に毎日多忙なようだった。


(だったら私、引っ越す意味あった?とは思うけど)


そして、ニコラスが忙しいということは、一次請けの私もそれなりに大変だということ。


家に帰れない程ではないが、前よりも残業は増えたし、家に帰ってからは記憶のないうちに気絶して、朝の光で目が覚める日がほとんどだ。


まぁつまり、本当に、なんでこんなにも忙しいときに、このようなくだらない内容をグダグダ聞かなければいけないのか、ということである。


暇なときに来てくれと言うわけではないのだが、もう少しタイミングを考えてほしかった。


少しでもそんな心を落ち着かせるために、関係のないことを頭に浮かべながら意識を反らしていると、そんな私の態度が気に入らなかったのか、公爵は突然グッと顔を前に突き出した。


「おい、聞いてるのか!?全く、神聖な城の職場で、ましてや個室も与えられているような高官が女を連れ込むなんてなぁ!」


(その高官の執務室に毎日のように押しかけて業務の邪魔をしているのは、あなたの娘ですけどね)


「大体あの男は前から気に入らなかったんだ!私のやることなすことに否定してきて。若造のくせにいつもいつも…───」


(それ、もう私に関係ないニコラスへの文句じゃない。よくもまぁそんなに長いこと言えるわ…)


「しかもこんなにモサッとした女だと?節穴にもほどがあるだろう、変な趣味のやつだ!エレーヌもあんな男のどこがいいんだか…」


(ニコラスが節穴なのはどうでもいいけど、変な趣味って!…いや、まぁ、変な趣味か)


「おい、だから聞いてるのか!いいか、だから君は補佐官をクビだという、」


いよいよ我慢の限界が来た私が、その言葉に流石に反論しようと口を開きかけたときだった。


「それは、誰の許可の下で言ってるのかな?」


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