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第九話

「とまあ、途中での援軍があったものの、実際に倒したのは全員俺だよ」

「はぁ…これはしっかりと本部に通達するのと…」


早坂さんが気絶している王子(バカ)を一瞥する。


「こいつは、そろそろ潮時ね。本部に報告させてもらうわ。なにせ、私達を緊急事態と言うほどでも無いくせに、同意も取らずに無理やり従わせて、かつ、貴方と話をせずに斬りかかったからね」

「はぁ…」


なにか黒い感情が彼女の中で渦巻いている気がするが、気にしないことにしよう。


そうして、俺は本部までの帰途へついた。




薄暗い通路へと歩いていく。仄かな土の香りが精神を安定させてくれる。


これから始まる幹部会議。それに耐えなければならない。

もし、人間と共闘しているとバレたら、どんな仕打ちをされるのかが分からない。


下手したら…いや、確実に殺される。


鼓動が高まる。嫌な汗が出てくる。呼吸が荒くなりそうなのをなんとか抑え、平然とした顔で門を開ける。


大きな円形のテーブルに僕以外の魔がズラッと座っている。僕を含めた十六名。それが、魔王軍幹部であった。


「よお、随分と遅かったじゃねぇか。どこで道草を食ってたんだぁ?落ちこぼれ」


隣りにいる鬼の魔…シェル・オーガが僕を蔑むように落ちこぼれのところを強調する。


「挨拶ありがとな。にしても、お前悪口が一種類しかないのか?」

「んだとぉ…?!」


もともと赤かった顔を真っ赤に染め、殴りかかってこようとする。これは、毎回短気な彼が僕にやってくることなので、対処はとても簡単である。


「なっ!おい!出せ!」


こんな感じに障壁に入れてしまえば、武器を持っていない彼は抵抗が出来なくなる。

この茶番を毎回やっている気がするのだが、何故か彼は一向に学ばない。


もうここの場では恒例行事と化しているので、何事も無かったかのように会議が始まる。


「では、早速本題ですが…」


あぁ…駄目だ。これは犯人探しが始まる合図だ。

本題にいきなり入ろうとするのは、味方の裏切りが発覚したときぐらい。二年前、人間と駆け落ちたということで、女の魔が聖水攻めという、魔にとっては地獄とも言える刑に処された。


十字架に貼り付けられた彼女の周りを、大きい水槽のようなもので囲み、そこに一秒に一滴ずつ聖水を落とした。


十六分で一リットル溜まり、一時間で彼女の足元に聖水が当たった。すると、当たった部分が溶けていき、彼女の顔は歪み、耐え難い苦痛であることが分かった。


どんどんと聖水が上に上がっていき…


考えるのを止めよう。これ以上は精神的に悪い。


そうして、断罪が始まった。


「この中に、ここの情報を漏洩した者が居る。正確には、仲間の名前を話した、ということだ。ただこれは匿名の通報でな。この前みたいに直ぐに犯人が特定できるということはない。よって、今から探していきたいと思う」


議長が発した言葉によって、幹部たちの中で殺意が渦巻く。元々、こういうことをするのは嫌っている魔が多いのだ。だが、僕の考えは異様なほどに困惑していた。


僕以外にも裏切りを企んでいる人がいるのだろうか

頭の中ではぐるぐるとはてなマークが回っているのだが、とりあえず体だけは殺意を出しておく。


「おい…今日お前遅かったよな…何やってた…?」


隣から怒気を孕んだ声が聞こえる。声の主はもちろんシェルだ。

Oh…僕に飛び火が来るか。そうだよな。うん。知ってた。


「はぁ…今日は地上の魔を見てきただけだよ。ほら、スピードが五百体の魔を放っただろう?それが集団で行っているか見ていただけだよ」

「今現状で一番お前が怪しいんだよ。分かってんのか」

「そもそも、他のやつだって地上に行っている可能性があるだろ?まずそれをなぜ調べない。あぁ、ここで聞いても無意味だぞ?分かってるか?この場で言うわけが無いからな」

「……っ」


シェルが悔しそうに顔を歪める。残念だったな。脳筋なお前よりも僕は舌が回るんだよ。


「じゃあ、これ使おー。嘘発見器」


五百体の魔を放った張本人…スピード・スロープがどこからともなく出してくる。


「これ、こっそり発動させてたけど反応しなかったから、多分リングくんは白だよ〜だから、彼以外の人で調べればいいんじゃない〜?」


ちなみに、僕の魔の名前はリング・ウィンドである。スプリングのリングと、風のウィンドで、リング・ウィンド


なぜかスピードのアシストが効き、全員がそれに向かって、「私は地上に行ってない」と言うことになった。だが、不思議なことに、それは一切反応せず、再び疑惑の目が僕に集まる。


「おい!やっぱりお前じゃねぇのか!?あ゙ぁ!?」

「だから、僕は幹部の名前なんか漏洩してないって!ほら、嘘発見器も鳴っていないだろ!あ、そもそもスピードがまだじゃねぇか!」

「え、僕…?」


明らかに動揺している。嘘発見器を使わずとも分かるほどの…


これには、人の感情を読み取るのが疎いシェルでも分かったのか、ズカズカと距離を詰めていく。


そして、胸倉を掴まれそうになった瞬間、


「もうこうなったら仕方ない!僕はここから逃げさせてもらう!じゃあな!」


狭い空間に、百を超える爆弾を置いた。

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