第七話
冒険者という職業において、世界共通の強さのランクというものがある。
上から特級、一級、準一級、二級、準二級、三級、四級、五級、六級、七級、八級という順番で構成されている。
級の決め方は圧倒的実力主義なので、性格が終わってても上にいる人はいる。
四級までで、全冒険者の八十パーセント以上を占めており、それ以上のランクは、基本的に一人で十体ほどの魔物を屠り、それでいて無傷で帰って来る実力者に限られている。
大体こういうのは、二級、場合によっては準一級を一人送り込むだけで十分なのだが、今回の群れは数が違った。現場の映像を見るに、五百体ほどの魔が、交差点を、マンションを荒らしに荒らしている。
そこで、姐さん率いる東京本部は、今居る中で一番の戦力を───投入したくはなかったが───投入することにした。
「さぁさぁさぁ…!凡人たちよ!共に行こうじゃないか!光栄だと思え!一級の私と一緒に戦えるのだからな!」
はっはっは!と、高らかに笑っている人物を尻目に、二級以下の五人が、ひそひそと話している。
「ねぇ…私あの人苦手なんだけど…いっそのこと一発ぶちかましたほうがいいんじゃないかしら?」
「やめとけ。スキル使っても赤坂には当たらなかっただろ。スキルを使っても当たらないってことがあるってもう分かってんだろ」
何やら物騒な会話をしている早坂準一級と春風二級。
「あわわ…またこの人ですか…?」
「はぁ…めんどくせぇ…」
「なんか僕たち毎回面倒なことに巻き込まれてません…?」
ぴょこんと立っているアホ毛が特徴的な、桜井二級
毎日がエブリデイ。目が死んでいる、大迫準一級
THEショタ。これをショタと言わずしてなんという。実年齢は十七歳の、東雲二級
そして、それを率いる隊長は…
「さあさあ!行こうじゃないか!いいか?君たちは黙って僕の指示に従えばいいんだ。分かったか?」
王子一級。基本的に自分より下のランクの人を見下し、道具同然の扱いをする。だが、そのくせ上の階級の人達には媚びを売るため、このような横暴が公に出ていない。
だが、彼よりランクが低い人間には絶対に逆らうことができない。よって、一級と特級の合わせて約500人以外は、従えることができるのだ。
彼のスキルは【勇者】自分よりランクが低い場合、絶対的な命令権を持つというものだ。
これだけを見ると、洗脳に近いのだが、本物の洗脳のスキルを持っている人物は、ランクを問わずに洗脳できるため、それとは少し違う。
だが、そのかわりに、発動している間は自分の身体能力が1.5倍になるという特徴もある。
「さあ、行こうじゃないか」
その瞬間、勇者のスキルが発動する。全員の目から光が消え、操り人形になる。
このスキルの前では、五人はなすすべがないのだった。
「………何が起こった…?」
彼は、ただ呆然とするしかなかった。五百もある屍が、山のように積み重なっている。そして、その頂上で一人の男が何かを食べている。
スキルから開放された五人は、それぞれが別の反応をしていた。
「………やると思った」
「奇遇だな。僕もだよ」
予想ができていたと言わんばかりの様子の早坂と春風。
「あわわ…い、一体何が起こったって言うんですか?!」
「あの頂上の奴がやったのか…?だが、一人で五百体は流石に無理が…」
「なんのスキルなんだろうなぁ〜?」
アホ毛がピンと立ち、驚いているのが一目で分かる桜井。
いつもは目が死んでいるが、このときばかりは目に光が戻った大迫。
興味津々で子どもみたいな感想を言っている東雲。
「あ、来てくれたんだ」
「死ねぇぇぇぇ!」
彼は錯乱していた。勇者の力で五人を操って戦えばいいものを、単身で切り込みに行った。なぜなら、今まで一人で五百体を屠った人を一度も見たことがなかったからだ。よって、彼は赤坂のことを魔と認識したのだ。
会話をする魔が居るのか?実際には居る。
魔が強くなれば強くなるほど、知能が比例して上がる。そうすると、一定以上の知能を持っているものは会話をすることができる。
だが、大体の魔は喋れたとしても何を言っているか分からないため、ここまで明瞭に話せるということは相当に強い魔である。
そう彼は考えていた。いや、正確には考えさせられていた。
そして、斬りかかろうとした。しっかりと体を捉えた。刀が体に食い込む。顔を歪める。このまま血が吹き出し、内臓が千切れ…
そこで意識が途切れた。
「ふっ…それは残像だ。全く、人にいきなり斬りかかるって何事だよ。この人の動きが遅かったから良かったんだけどさぁ…」
「あんたねぇ…よくそれを食べながら回避できたわね」
「全く…僕の三色チーズ牛丼温玉のせの特盛が無駄になっちゃダメだからね」
三人で和気あいあいと話していると、桃色の髪の人がこちらに話しかけてくる。
「えっと…なんでこんなことになってるんですか?」
頭の上のアホ毛が、はてなの形をしていた。




