第六話
「早坂さん…?」
俺達は別室で詰められていた。そう、詰められていたのだ。
ここで注目してほしいのはこの部屋に何人居るか、だ。
今説教している本人の姐さん。俺のプライバシーを完全に破壊してきた早坂さん。そして俺。
そう。俺がなぜか居るのだ。
まだ、被害者としての立会ならわかる。だが、俺もやらかした人として、一緒に説教を受けていたのだ。
「早坂には散々言ったはずです。何かしらの弾みでエアガンのパーツを紛失したり、壊したりしても絶対にその原因になった人に当たらないと!」
「はい…」
「全く…何回目ですか…?貴女の…」
「あのぉ…」
「何?!」
「なんで僕まで怒られているんですかねぇ…?」
「当たり前でしょう!」
机をバン!と叩き、ギロついた目でこちらを睨む。キマってるキマってる!
「貴女は早坂さんの容体を分かっていますか?!貴方が叩きつけたせいで肋骨が二本、肺に損傷を負って、結構重症だったんですよ?!まだ、回復役ヒーラーがいたから良かったものの…もし居なかったらどうしていたんですか!」
「というか、俺のほうが一撃で死ぬリスクがあった以上、これは正当防衛と言ってもおかしくないんじゃないのだろうか。そもそも、早坂だけに説教するのなら納得がいくが、俺まで説教される筋合いは無いと思うのだが」
「ああもう!なんで貴方はそんなにすらすら人が嫌がることを言えるのかしらねぇ!」
ヒステリックじみた悲鳴を上げ、整っていた髪の毛をぐしゃぐしゃと乱す。
更年期ってやつっすか笑とも言おうと思ったのだが、流石に殺されそうなのでやめておいた。
「じゃあ、もう出ていっていいすかね?」
「だめに決まってんだろぉっ!」
目にも止まらぬ早業で、腕を掴み、手錠を付けられる。しまった!忘れてた!この人は十五年間懲りずに自分のスキルの研究を続けてアラフォーになった姐さんだった!
「………あんた、私がその状態だったら心が読めるって伝えなかったっけ?」
「………」
ソウイエバソンナコトモアッタナ〜
エーコノタビハ、タイヘンフカイナオモイヲサセテシマイ、ホントウニモウシワケゴザイマセンデシタ~
「あんた、後で別室に来なさい。そこでみっちりと…「あ、取れた」
死んでたまるかと全力で腕を上下させていたら、少しずつ光の繋がりが解けていき、分離させることに成功した。
無言の時間。無論、俺は気まずい顔をし、姐さんは呆れと驚きの中間の顔をした。その空間には早坂さんも含まれているので、彼女は彼女で、平然そうな顔を保とうしていたが、やはり驚きが勝ったのか、なんとも言えない絶妙な顔になっている。
「……あ、あーばよ!銭形のとっつあ〜ん!」
「あ゙っ!待ちなさい!」
ドアを蹴破ろうとした瞬間、袖を捕まれ、部屋に引き戻される。そして、倒れた一瞬の隙を見逃さず、姐さんがどうやら強化して手枷足枷をつける。
「早坂ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「逃げちゃダメだよ。説教は今後の人生を歩むために大切な礎なんだから」
そう真正面から正論を言われてしまうと、何も言い返せなかった。あと、上目遣いで顔を覗いてきたのを見て許そうと考えたが、その後の正座をさせられた挙げ句、膝に重りを乗せられたことを鑑みると、やはり許せないという気持ちが勝った。
「はぁ…もう足の感覚が無いんだけど」
早坂さんが帰った後も、延々と説教が続き、合計で五時間ぐらいの説教を浴びせられた。
お陰で時間は昼の三時を回っている。もちろんお昼ごはんなど食べれていないため、とりあえずなにか買おうと、外に出る。
そして、何も起こることはなく、すき家でみんな大好き三色チーズ牛丼の特盛に温玉をつけた陰キャ飯を買い、流石に店内だと少し恥ずかしかったので、テイクアウトして持ち帰る。
「よし、今日は大きな声を上げずに静かに2ちゃんねるを見るぞ…」
外で叫ばないようにぼそっと呟く。だが、その夢は家に辿り着く前に儚く散った。
ブーッ!と、ポケットに入っているスマホが盛大な音を立てる。それが、立て続けに何度も自分を襲ってくるので、牛丼を落としそうになるも、スマホを的確に操作し、発生源を辿る。
すると、この通知は、【冒険者用ポータルサイト】という、入れた覚えがないため、勝手に入れられたのであろうアプリを開く。
『【緊急】魔の集団襲来について。
ただいま、このメールは半径五キロメートル圏内の冒険者全員に通達されています。ただいま、魔が群れを成して東京都千代田区…の場所で甚大な被害をもたらしています。お近くの冒険者は対応して下さい。』
スマホの電源をそっと閉じ、ぐっと伸びをする。
「よし…初めての仕事、頑張ってみますかぁ…」
俺の踏み込みが、地面を抉った。




