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鏡の向こう  作者: 優希
6/7

交換された世界

指先が鏡面に触れた瞬間。


冷たいはずのガラスが、水面のように柔らかく波打った。

ドクン、と心臓が大きく跳ねる。


「えっ……?」


次の瞬間、強烈な白光が莉亜の視界をすべて埋め尽くした。

「何も……何も見えない!」

莉亜は思わず叫んだ。体が浮遊するような感覚。重力から解放されたような、不思議な軽さ。


***


一方、トイレの個室。


光が消えると、そこに立っていたのは「莉亜」だった。

だが、その瞳の色は、先ほどまでとは違っていた。深く、そして静謐せいひつな青。


ソフィアはゆっくりと自分の手を見下ろし、指を曲げてみた。

「ふむ……これが、莉亜の世界か。」


彼女は周囲を見渡す。狭いトイレ、落書きされた扉、そして外で待ち構えるいじめっ子たちの気配。

「面白い世界ね。」

ソフィアは莉亜の顔で、不敵な笑みを浮かべた。


「さて、今は『君は私、私は君』だ」


彼女は鏡の前に立ち、鏡の中に映る自分――つまり、鏡の向こう側にいる本物の莉亜の姿を確認した。


鏡の向こう側。

莉亜は呆然と立ち尽くしていた。

そこは、彼女が見たことのない、奇妙で美しい空間だった。空は紫色で、二つの月が輝いている。


「ここは……?」

莉亜がおずおずと尋ねると、鏡の外(現実世界)にいるソフィアが答えた。


「それは私の世界よ、莉亜。ようこそ」


ソフィアは、莉亜の身体を使って、優雅に髪をかき上げた。

「安心しなさい。今の私は、あなたと同じ容姿、同じ声。誰も気づかないわ」


そう言って、ソフィアはトイレのドアノブに手をかけた。

「じゃあ、行ってくるね。あなたの『日常』を片付けてくるから」


ガチャリ。

ドアが開き、ソフィア(莉亜の姿)は廊下へと踏み出した。


鏡の中から、莉亜はただただ、その背中を見つめることしかできなかった。



【次回予告】

次回の『鏡の向こう』は……

「あら、有理さん。また会ったわね」

いじめっ子の前に現れたのは、もう一人の莉亜!?

ソフィアの反撃が始まる……!


つづく


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いじめ 鏡 救済
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