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エスキープ 耐え続けて生き残った。  作者: 土ノ子 ウナム
第四章 キョウシャシンショウ
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−2話

−2話


 恐らくこの世界は、現実の世界では無い。この肉体は、自分の肉体じゃない。


 オレはなんとなく、そう感じている。


 眠くならない。

 腹も減らない。

 目は閉じられるのに、意識が落ちない。

 食い物を口に入れても、ただ味がするだけだ。

(……気持ち悪い)

 本当のオレは、別の場所にいて。

 この世界は、誰かが作った夢か幻か。

 まあ、どうでもいい。

 そういう違和感ごと、今日も殺して黙らせる。

 コイツらも、どうせ造り物。

 ゲームみてえなもんだ。


「そうだろ?なあ?どうやったらこのゲームから、抜け出せる?」

 オレは眼の前にいる"ソレ"に語りかける。

「お、お前は……頭が、オカシイ……!」

 ソレは震えながらも、至極真っ当なことを言ってくる。そうだな、オレはオカシイのかもしれない。

 だがそれでいいだろ?

 この世界は殺し合うようにルール付けされてるんだから。

「お、お前みたいな奴はな!結局生き残れずに死ぬんだよ!!何人も見ーー」

「うるせえええ!!とっとと死ねッッ!!!」

 オレはべらべらと五月蝿い"ソレ"の髪の毛を掴み上げ、大きく開いた口に鉄筋を突き立てる。


 生存者を前にすると、殺意にブレーキをかけられない。

(この"衝動"も、造りもんかね〜)

 

 部屋を出る。視界の端々では、相も変わらずネオンが光っていた。煩わしいほどに。



 ナイトタウンは日に日に静かになっていった。 

 探しても探しても、生存者と出会わない日が続いた。

「やーい、やい♪」

 歌いながら

「わるい子どっこだ〜、おに〜にく〜われ〜て〜」

 足音を鳴らす。

 なんとなく頭に浮かんだメロディーを口ずさむ。知らない歌なのに、どこか懐かしい。

 

 ナイトタウンには人がいなくなったわけではない。

 視線がオレの背中にささる。気配は感じ取れる。


「いいかげん、かくれんぼはやめようぜー!」

 叫ぶ。入り組んだ路地に、声は染み込んでいく。

「誰か返事しろよ〜!」


「……めんどくせえな」

 とはいえ、街やビルをぶっ壊すほどの威力は出せない。

 

 フラストレーションが溜まる。対象の無い殺意が湧き上がってくる。

(もう、別の街にでも行くかぁ〜?)

 そんなことを思いながら、路地に入る。薄暗く、先の長い一本道。

 その道は比較的ネオンが少なく、各ビルの入口にはシャッターが閉まっている。


 そのときだった。

 

 ガララッ!

 

 両脇の窓が一斉に開く。

 開かれた小窓から、銀色の筒がぬっと出てくる。

「あー……あ?」

 それが"銃口"だと気づいたのと同時に、声が上がる。

『撃てぇええええ!』


 キーーーーーーーーン


 高音、そして銃口に蒼白い光が収束する。

 そして、四方から光の雨が降り注いだ。


「待ち伏せしてたんかよ」

 咄嗟に踏み込み、壁を蹴る。

 横へ跳ぶと同時に、閃光が足元を焼いた。焦げた臭いが鼻につきながら着地。

 着地の勢いをそのままに膝を落として滑る。

 頭上を光が抜け、髪の毛先が焼かれる音。

 即、反転し壁から飛び出ていた排気口を踏み、壁で二段跳び。

 空中に飛んだオレめがけて光の束が交差する。

 体を捻ると、頬に光が掠める。熱を感じるが、血が出る前に焼き固められる傷口。

「おっ、おーー!あっぶねええっ!」

 着地と同時に前転。

 そのまま走る。

 光の収束音が背後から鳴る。高い音が止まると同時に閃光がオレの背中を追いかける。

「全部見えてんだよ!」 


 一本道の先。

 まっすぐと走り抜けた先はーー


 行き止まりだった。


「………まじか」

 袋小路。

 周囲は高い壁に囲まれていて、逃げ場は無い。


 振り返ると、そこにいたのは8人の生存者。

 皆、似たような形の銃を構えてこちらを向いている。

 真ん中に立ってこちらを見据えている、派手な銀の服を着たスキンヘッドの男が口を開いた。


『もう終わりだ。ストライカー』

「オレの為にわざわざこんなに準備してくれてたん?偉いねえ」

『黙れ。お前は目立ちすぎた』

 オレは話しながらも、横目で周囲を観察する。

 扉は無い。2mほどの高さから等間隔に窓。

 屋上からも視線と殺意を向けられている。

(ここに逃げ込むことまで織り込み済みかい)


「アンタら、噂の"メタル輪舞曲"さんたちかい?」

『そうだ。オレがボスだ』

「えらく派手な格好しちゃって、イタいよおっさん」

 周囲の殺意が濃くなる。屋上から声が降ってきた。

『貴様!ターミネーターさんに舐めた口をきくな!』

いまにも引き金が引かれそうな勢いの怒声。女の声だ。

「まあまあ落ち着けよ!オレは丸腰だぜ?」

 オレは両手をあげる。

『落ち着け。コイツの身のこなしを見ただろう。……撃つなら同時にだ』

(チッ……冷静だな)

「ほんで?すぐに殺らないってことは、なんか用があるんだろ?」

『フッ、察しが良いな』


 ターミネーターと呼ばれた男は、笑いながら一歩前に出た。


『オレたちの仲間になれ。お前の実力は高く買っている』

「あらら、人の良さそうな顔をしといて、あんたも結局力を求めてんのね」


『黙れ!ターミネーターさんが話してる途中だろう!』

 また屋上から、声

 ターミネーターは薄く笑いながら、言葉を続ける。

『オレたちには"堕天"との抗争に向けた戦力が必要だ。それに、オレの"能力"で未来兵器をつくってやろう。お前専用のな』

 さっきから撃ってきてる銀の玩具も、こいつの能力産ってわけか。

「ソイツはありがてえ提案だな。仲間になるって言えば、見逃してくれんのか?」

『あぁ。ただーー』


 間を置いて、空気が変わる。


『"足"くらいは、もらわんとな』

『お前に殺された仲間も多い』


 また一歩、こちらに近づいてくる。


『能力的にも、手があれば十分だろう?』


 オレは理解する。

 コイツは本気だ。

 確実に"殺しにきてる"


ーーだから、おもしろい


「はは……いいねえ」

 オレは上がる口角を抑えられない。

「最高だよ。アンタ、最高だ!」

 

 刻々と湧き上がってくる殺意がとまらない。とめどなく溢れる憎悪が、初めて会ったはずのコイツらに向けられる。


 オレはターゲットを、決めた。

 殺るか、殺られるか。

 

ーーだったら先に、殺るだけだ。

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