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パンプキン・ナイト

そしてホワイトアイスはあることに気づいた。近くのビルの10階あたり。

そこにぼんやりとした光が見えた。ほんの一つ、明かりがついたように光っている。


「・・・・・・・・・」


おかしい。ビルに人はいないはずだ。それとも誰かが悪霊に追われて逃げついたのか。だがその考察が腑に落ちる前に、別のビルで光がまた一つ灯った。


「あの光は・・・なんだ・・・」


光はそれだけにとどまらない。

徐々に無人のはずのビルに一つ、また一つと明かりが灯りはじめた。いやそれはビルだけではない。街の至る所にぽつぽつと火が灯りはじめた。十字架の側、街灯の根本、割れたガラスの上、積み上げられた雪の上、ビルの中。場所を選ばず輝く光。


その正体は、鬼火のように燃える炎の塊だった。おまけにその炎には、ニヤリといたずらな笑みを浮かべる表情がくっついていた。


「なんだ・・・これは・・・」


ホワイトアイスは目を細めて街を見る。

橙色の鬼火は、あっという間に増え、長い停電から明けたように、煌々と街を照らした。ビルには働いているような明かりが、街灯には行き交う人ための明かりが、遠くに見える明かりは温かな生活を思わせた。


ボッ、ボッ、ボッと炎は増え続け、間もなく眩しいくらいに街を照らした。それはまるで街が息を吹き返したようだ。かつて繁栄した光が戻ってきたみたいようだった。


「・・・覆してみろと言ったなホワイトアイス。ならば覆してやろう、街中にはびこる何百、何千いる悪霊、全てを追い払ってやる。見ろ、ホワイトアイス・・・」


ジャック・オ・ランタンは空を指さした。その先には、雲が晴れた空に浮かぶ満月があった。


「絶好のタイミングだ。月が照り、ランタンに明かりが灯った。不味そうだがお菓子もある。パーティーの準備は整った」


ジャック・オ・ランタンはくっくっくっくと笑う。


「走れ、鬼火のランタン共!騒げ!笑え!悪夢の夜を始めろ!」


ジャック・オ・ランタンがそう告げると、街中の鬼火たちは歓声を上げ一斉に動き始めた。

人を追いかけている、あらゆる場所にいる悪霊を見つけては、追いかけまわし、逃げまどう悪霊にくっついてその炎で浄化し始めた。


「「kkkkkkkkkkkkkkkkkkkmmmmmmmmmmmmmmmmmm!!」」


悪霊達は悲鳴を上げて逃げまどい、それを追う鬼火たちは高らかに笑いながら、追いかける。


「「アーハハハハハハハハハハハハハァ!!」」「「ヒヤハハハハハハハハハハアア!!」」


街中に響く悪霊の悲鳴、そして鬼火の甲高い笑い声。


「なんだ、この変な炎は・・・?」


悪霊から逃げまどっていた人が言った。


「黒い奴らがどんどん燃えて消えて行く・・・すごい・・・スノードーム・シティに光が灯ってる・・・」


「ほんとだ、街が光ってる。こんなの初めて見た・・・」


「・・・すごく、綺麗・・・」


叫びながら燃えていく悪霊と、明かりが灯ったスノードーム・シティを交互に眺めて人々は感嘆の声を漏らした。


「ククククク・・・・・・ハハハハハ・・・」


ジャック・オ・ランタンは笑う。街中から聞こえてくる騒乱の音に体の中をぞくぞくとさせる。


「灯り・・・悲鳴・・・騒乱・・・これこそ『悪夢』の夜だ・・・クククク」


ホワイトアイスは街を眺め、静かに振り返ってジャック・オ・ランタンを見た。その目には恐ろしいほどの激情を浮かばせていた。


「よくも・・・よくも・・・」


ホワイトアイスは涙を流した。怒り、悔しさ、憎しみ、悲しみ、あらゆる感情をない交ぜにして顔を歪ませる。


「・・・殺してやるッこのクソがああああああああああああああああああああああ!!!」


ホワイトアイスの体は徐々に崩れ始め、『キャンディ』をバラバラと溢し始めた。


「許すものか・・・貴様を殺して、悪霊どもの餌にしてやる!!俺の怨みを、この街の果たせなかった夢の重みを思い知れ!ジャックオオランタアアンッッ!!!」


そうしてホワイトアイスはその原形を失っていく。ばらばらと体中から『キャンディ』を大量に吹き溢すと、やがて遠くから巨大な黒い影がぞろぞろとやって来た。

悪霊の群れだ。その数はユウを追っていた数の比ではない。巨大な暗雲が襲ってくるように、何百という悪霊達がせめぎ合いながら、キャンディになったホワイトアイスめがけて迫ってくる。


「『キャンディ』の山に釣られてきたか・・・」


ジャック・オ・ランタンは依然笑みを浮かべながら、手をゆったりと広げる。


「集まれ・・・カボチャのランタンたち・・・」


悪霊は『キャンディ』めがけて、一目散に向かってくる。街中を照らされ、追い詰められてしまった闇の集合体だ。


「「「「「yyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz!!」」」」」


ザザザザザザザザ!と不穏な音をかき鳴らしながら迫る。

ジャック・オ・ランタンは近くに集まってきた幾つものランタンを従え、その身の炎を燃え上がらせる。周りの雪が一瞬で蒸発した。超高熱と、直視できないほど激しい光を放っている。ジャック・オ・ランタンはそのまま悪霊の群れに高速で突っ込んでいく。

悪霊は巨大な体を使い、ジャック・オ・ランタンと鬼火をばくんと呑み込んだ。


「カボッ!チャムッ!」


ユウは叫ぶ。闇の集合体は大きくうねる。


「「「「「llllllllllllllllllllllllllllllqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx」」」」」


そして勝ち誇ったような甲高い声をあげ・・・ピタッと止まった。



一瞬の静寂。



「・・・・・・ッ?」


ユウは異変に気付く。悪霊達の山の中から光が洩れている。悪霊が苦しそうに呻き始め、そしてボオンと火山のように爆発したかと思えば、中から橙色の煌々とした光が立ち昇った。

悪霊はやがて中から燃え上がってきた炎に包まれていく。


燃え上がる闇の塊から出てきたジャック・オ・ランタンは煌々と燃える悪霊を背に、遂に高らかに声を上げる。


「アーーーーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!ハッハッハッハッハッハッハっッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!アーハハハハハハハハハハハハハハ!!!!ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!ハハハハハハハハア!ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!アハハハハハハ!!ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハハッハッハッハッハッハッハッハッハッハハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!フフハハハハハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ・・・・・・!!」



・・・・・・



・・・


その夜。

街は煌々と照らされ、悪霊の悲鳴、騒ぎまわるカボチャの鬼火、そしてジャック・オ・ランタンの止むことのない高らかな笑い声が響き渡った。

スノードーム・シティはホワイトアイスの運命を覆し、雪に橙色の光を反射させ、美しく輝き続けたのだった。


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