静寂の始まり
ほぼ同時刻。ウェストタワー34階。
・・・どこかで気づいていた。
遠のいていく姿に、わずかに心の奥がざわついた。たったそれだけのざわつきだったのに、ずっとその感覚が私から離れなかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
どこかでジャック・オ・ランタンの声が聞こえる。ホワイトアイスの声が聞こえる。衝突音。破砕音。落下音。着地音。風の音・・・・・・
全て遠くの世界の音。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
冷たい体。重い体。何度も何度も触れたことがあるのに、初めて触るようだ。
雪の塊ように冷たく、雪の塊のように白く、雪の塊のように重い。
「・・・・・・・・・・・・シャオ」
もう何度も呼んだ。叫んだし、揺すったし、泣いたりもした。
「・・・・・・・・・シャオ」
膝の上に乗せた頭を撫でる。髪がパリッとしてる。
「シャオ」
また涙があふれ出てくる。
「・・・シャオ、私頑張ったよ・・・」
涙がぽたぽたとシャオの額に落ちる。
「私、箒で飛んだのよ。それで悪霊と追いかけっこして、チャムを蘇らせて、お菓子の狼と戦ったのよ・・・。私・・・頑張ったのよ」
「・・・頑張ったのよ。もうシャオに引っ張ってもらわなくても大丈夫。私が今度はシャオを引っ張っていくの。私には出来るわ・・・・。だから・・・・・・だから・・・・・・ちゃんと付いてきてよ・・・シャオ・・・」
「まだ一人は・・・慣れてないの・・・」
それとほとんど同じタイミングで風の音が止んだ。
街は凪いだ。
それは絶望が始まる前に許された少しの静寂でもあった。




