第二話 干し肉と本と次の町へ
大きいリュックを背負い、村を出ておそらくはかなりの距離を歩いただろう。
太陽もちょうど真上にある。昼ぐらいだろうか、朝から昼まで歩きづめか。
しんどい。しんどすぎる。
足が凍ったバナナのようにカッチカチになっている。釘が打てちゃうよ。
それに腹も減った。よく考えれば朝ごはんも食べずに飛び出してしまった。そりゃ腹も減るな。
「ふー、ここいらで休憩しようかな」
周囲を見渡し座るに良さそうな岩を見つけ、腰を下ろす。
義母さんが持たせてくれたリュックを開け中を覗いて食べ物があるか探す。が
「えっ・・・寝袋・・・?」
リュックの中にギッチリと寝袋が入っていた。
見た限り寝袋しか入ってない様だ。
「えっなにこれは・・・食べ物とか入ってるはず、調理器具が入ってるはずと予測してたんだが?」
これは不味い。非常に不味い。
ひとまず寝袋を出そう。下に何かあるはずだ。
寝袋を出してみると一人用にしてはかなり大きい。二人で寝るようなのではないか?
とまあ、大きさは気がかりだか今は飯だ。何かあるかな?
「あった。干し肉一枚・・・・しかも裸で入れられてる・・・」
裸はないだろ。裸は。寝袋に匂い移っちゃうよこれ。ってかもう移ってる後かもしれない。
「夜干し肉の匂いに包まれて寝るのか・・・いやだなぁ・・・」
とりあえずは空腹をなんとかしよう。この干し肉がラスト食料だとしても食べないことにはやってけないだろ。
明日はなんとかしよう。そう思いながら干し肉をかじった。
「転生人生初飯が干し肉って言うのも悲しい物があるなぁ・・・」
話を切り出すタイミングをミスったと思った。
「そういえばあの双子からもらった本、ちょっとしか読んでなかったから今のうちに読んでおこう」
干し肉を咥えながらリュックのポケットから本を取り出し、読み始めた。
----
『初めまして、新しい僕。僕の名前はリザック・ピエロ。転生してくる君を僕は知らないまま僕はこの世を去るだろう。
なぜそんなことが分かるかって?ある日、黄金に輝く天使が僕の元にやってきたんだ。
その天使は言った。僕はしばらくしたら体を残してこの世を去る。そしてその体に新しい魂が宿る。って
初めは理解できなかった。でも、それも運命だって。受け入れるしか無いって。そう思ったんだ。
転生してくる君はきっとまだ何もわからないだろう、だから少しでも力になりたいからこの本を遺しておく』
『この世界は、きっと君の居た世界と文化も社会も何もかもが違うんだろう。
だから、まずこの世界の事を伝えよう』
『君が今いる大陸はファーランドという大陸で、一番大きい都市はキンエス。
君が発った村から一番近い町はイタイテという町だ。まずはそこを目指すといいよ。
きっと持たされたリュックの中には食べ物なんて入ってないだろうから、朝に村を出てちょっと休憩を入れても夜には着くはずだよ』
『この世界には魔法というものがあり、普通の人間はみんな魔法が使える。もちろん僕も魔法が使えるよ。
魔法は魔力を消費して使う。
人間と魔法には属性と言う共通点があって、その共通点で人間は使える魔法が決められるんだ。
例えば、炎の属性を持った人間は炎の属性の魔法しか使えないみたい。こんな感じで人間が使える魔法には限界があるんだ』
『でも、僕は違う。
僕は普通の人間とは違う【特異体質】らしく、様々な属性の魔法が使える。得意な魔法は【創造】。
一見異常なまでに突出している様に見えるけど、実際はそうじゃないんだ。
様々な属性の魔法は使えるけど、どれも一級・・・いや二級、三級・・・までとは言わないけど、単一の属性を持った魔法使いに劣ってしまう。
水の魔法で喉を潤したり、火の魔法で肉を焼くことはできるけど、人間を傷つけたりはできないだろう。
得意な創造の魔法だって、作れるのはナイフとか石ころとかだけで肉や野菜みたいな食べ物は一切作れない。
作ったナイフもバターすら簡単に切れないなまくらだから、武器としては期待しない方がいいと思うよ』
『あと、魔法の使い方だけど頭の中で出したいものをイメージしてそれを手の平から出す。そんな感じでやってみればできると思うよ』
----
ここまでにしておこう。この本結構厚みがあって全部読もうと思ったら夜が開けてしまうだろう。
ひとまずイタイテって町に行くか。
「ところで、あるだろうと思ってたけどやっぱりあったか!魔法!」
そんな物があるって分かったら使いたくなってくるっていうのが男心ってもんでしょう!
「よし、まずは水を出してみよう!干し肉の塩分で若干喉も乾いてたしな!」
水をイメージしてそのイメージを手の平から出す!
どうせならドバーッと出してみたいな!
「水よ、出ろ!!」
手の平を前に突き出しそう唱えると
チョロチョロチョロチョロ・・・・
細い水の線が曲線を作りながら弱々しく地面を打つだけだった。
「んー・・・イメージと違うなぁ・・・」
かなり残念だった。
昔テレビで見た扇子から水を出す芸みたいだった。
「ま、まあ水は出せたんだし問題はないか」
手を口に覆うように当てチョロチョロ出てくる水を飲んだ。
「ん?そういえば、俺自分の顔って見たこと無いな。村では鏡とか見る暇なかったし、手に水溜めればちょっとは反射で見えるか?」
両手を重ねて受け皿の様にし、水を溜める。
ある程度溜まったところで覗き込んでみた。
「イケメンかよ・・・何だこいつ。誰だよ・・・俺か」
目鼻立ちは整い、芸能人のような顔立ちだった。
「顔はイケメン、魔法は色んな属性が使える。さらには得意魔法は【創造】と来たものだ、こいつはいよいよラノベの主人公みたいだな」
実際転生してチート級の能力を持ってるなんてことは出来過ぎている。
これが天使が導きし我が運命か・・・
「さてと、あんまり長いこと休憩してても夜には町に着かないだろうし、そろそろ行くか」
リュックにもう一度寝袋を詰め込み、その上に本をしまった。
----
~イタイテ~
休んだ場所からそれなりに歩いたが、意外と早く到着した。
だが、時間はかなり経っただろうか夕方ぐらいで町は夕飯を食べる為店に入ろうとする客や、買い物をする客で賑わっていた。
「ここがイタイテか。結構活気があるなぁ・・・」
案外大きい町で人の往来が激しい。
とりあえず寝床は確保しておかないとな、あとご飯とか色々。
「ってか、俺今いくらくらい持ってるんだ?」
ズボンのポケットを探る。
「ん?待てよ?まさか・・・そんな・・・」
リュックのポケットの中、服の中、色んな所を探したが・・・
「無い・・・財布も無ければ、金貨とかの貨幣もない!!うっそだろ・・・オイ!」
あまりの衝撃に大声を出してしまった。
周りの人達が驚いている。軽く「すみません・・・」と言ったあと、道の端っこに行き壁にもたれ掛かって考える。
「どうする・・・異世界に来てばっかりで知り合いもいなければ、頼る人も居ない・・・どうするよ・・・・そうだ、俺の顔はイケメンだから道行く女の子に声を掛けて貢いで貰う?いやいやそれは流石に無いだろ・・・ゲスいしナルシストだし。じゃあ、そうだ!魔法でナイフを作って売る!いやバターも切れないなまくらだろ?売れるわけ無い・・・手から水を出してイケメン汁として売る・・・?いやいやいやもっとないわ・・・」
前の世界から引き継いでいる記憶を掘り返して何かいい方法が無いか思案してみる。
「水・・・聖水として売る?イケメン汁と変わんねえな・・・イケメン・・・芸能人・・・芸能?そうか!芸をすればいいんだ!ストリートダンサーみたいに踊ればいい!旅芸人だ!そうだ!ナイフも作れるからそれでジャグリングしてみるのもありだな!」
まるでピエロだ。
ん?俺の名前か?
「そうだ!ピエロになればいいんだ!そうなれば!人がよく集るところはどこだ!町の中心?大きい町だから噴水みたいな所あるだろ!早く行こう!夜になる前に!」
そう言うと人の多いところに向かって走っていった。




