第一話 新しい世界で
寝ていた。
とても騒々しい部屋で
寝ていた。
夢を見た。
自分が生まれるずっと前、この世界にはない夢の様な物語の
夢を見た。
起きた。
流石のうるささに目が覚めたから
起きた。
「ん・・・なんだここ・・・」
とても長い時間眠っていたような感覚だった。
1000年の眠りから目が覚めたようだった。
「私は・・・俺は・・・何年寝ていたんだ・・・」
「昨日の晩!寝て、今起きたの!」
聞き覚えのない女性の声だった。
ふと周りを見渡してみると、小屋・・・のような小さな部屋に今、自分が寝ているベットのほか、机や椅子と言った家具が規則正しく並んでいる。
過去、自分がいつものように寝ていたあの薄暗い部屋ではない。
窓からここしばらく浴びたことのない朝日が差し込む。
と言うよりさっき自分に呼びかけたのは誰だろう・・・
「キミは・・・誰かな・・・?」
「何ボケてるの?私はあなたの幼なじみのレウン・ウェックよ?どっかに頭ぶつけた?リザック」
「リザック?それが俺の名前か?と言うより幼なじみって・・・」
「そうよ?リザック・ピエロ、私の幼なじみにして将来を約束し合った仲じゃない!」
What's!?将来を約束し合った仲?!?!
まーーーて待て待て待て待て待て!俺にそんな奴いたか?!いや居ない!居るわけ無い!
彼女が居たどころか手すら繋いだこともないのに?!
ラノベで良くある「彼女の柔らかな体」っていうのに「ハッハッハこんなんあり得んやろワロス」って言うくらい女性経験ありゃせんのに?!
そもそも何だこの可愛い子はぁ!
綺麗な栗の様な髪をして、顔にほんのり残ったそばかすが田舎娘のようなあどけなさを残していて・・・
それになんだこの胸はぁ!?あどけなさ全否定なくらいなナイスバディ・・・
うぉっかしいだろぉおん?!こんな可愛い子が俺のフィアンセ?!
Fooooo!!!結婚したら夜の帳が降りまくりますぞ!!!
頭の中をタイキックされた様な衝撃を受け、今までの事を整理していると
「さぁ!リザック!早く起きて!朝ごはんが待ってるよ!」
彼女が声を俺に声を掛け起き上がらせる為に手を伸ばしてくる。
「あ、ああ・・・」
一瞬、この手を握るべきか握らざるべきか迷ったが、せっかく起こしてくれる手を握らないのは流石に失礼だろうと思い、出来るだけ優しい力で彼女の手を握り、ベットから起きた。
初めて握る彼女の手はとても柔らかかった。
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寝室から出て、しばらくレウンについて歩いているとこの家のリビングであろうそれなりに広い部屋に着いた。
部屋の真ん中に大きな机に6人分の朝食であろう、パンとスープが1席に付き1セットあった。そして机の真ん中には木でできたボウルにこれでもかというくらい野菜が盛り合わせてあった。
「おや、リザックおはよう」
優しい声の桑年ほどの女性が今起きてきた俺に対して挨拶をしてきた。
「リザック、少し寝すぎ何じゃないか?」
厳格を持ちつつも家族を守ろうと言う優しさを持った初老の男性が遅れて来た事に少し注意をしてきた。
「「リザ兄おはよー!!!」」
声デケェ
二人仲良く声を揃えて挨拶してきたのは双子の少女
騒々しさの原因はこれだったのか。
おそらく、俺かレウンの両親と妹二人なのだろう。
「おはよう、父さん、母さん。昨日はちょっと夜遅くまで起きてたんだ」
「やだ!お義母さんですって!」
「リザック、お前はまだ16歳だろ?少し気が早いんじゃないか?」
「「リザ兄レウン姉と結婚するのー!」」
あっれー俺の家族じゃなかったのか。
じゃあレウンの両親ってことか。
「もーリザックったら!さっきのは冗談なの!でも・・・本当にリザックが良いなら・・・」
「ははは・・・ちょっとした冗談だよ。朝から目を覚まそうと思って」
なーに頬赤らめちゃってくれてるの!めっちゃ可愛いじゃないか!襲っちゃうぞー!
そうじゃねえんだ、今は!今は!
一回整理しよう。
1、俺はどうやら今まで生きてきた世界とは違う世界に今居る。
2、前世での記憶はある。生涯童貞で彼女もいなかった。初めて手を繋いだのは来世だった。読んだラノベの冊数と好きなアニメのキャラも覚えている、声優ももちろん。
3、生まれたばかりからスタートではなく、どうやら16歳からのスタートのようだ。俺にはレウン・ウェックと言う幼なじみがいて恐らく初めてはまだだろう。きっと
4、結構重要なんだが、ここが何処かわからない。多分どっかの村だとは思う。どこからか香る土の匂いがそうだと予期させる。
うーん、あまりに情報が足りない。
どんな世界で、どんな人間が居るか、ここが何処だってのかがさっぱりだ。
それに16歳なんて中途半端な年齢からスタートだ、これは実に不味い。何が不味いって、もうすでに人間関係が構築されきっているであろう年齢だ。
今の俺はレウンの名前こそさっき教えてもらったから知っているものの、彼女の両親の名前も妹達の名前も一切知らない。村の人間なんてもってのほかだ。
そんな中で「あなたは誰ですか?」だの「私はどんな人でしたか?」なんて聞いた日には村八分にされるまでは無いにしろ。記憶喪失か、変な人として噂されるだろう。実際そんな状況なんだけどね!
だったら、この村の情報を集めるより、この世界の情報を集めるほうが先決だろう。
要は過去の自分を切り捨てて、新しい自分を作っていくべきだってことだな。
であれば次に起こす行動は!
「ささ!リザック!ここに座って!」
「おいおい、レウン。いつもはリザックと反対側で座ってるのに今日は隣かー?朝からお熱いねー!」
俺はレウンに案内されるまま椅子に座る。
お義父さんのテンションがうぜえくらい上がってるのは明白だが、突っ込んでしまうと危ないと俺のセンサーが警告している。
何時挙式上げるの?とかそんな言葉が出てきそうだ。
「で、お前たちは何時結婚式をするんだ?」
ほれ見たことか。
違うねん、そういう意図で父さん母さんって言ったわけじゃないねん。
このままではダメだ、自分の意思をしっかりと表明しないと。
「あのさ、俺・・・旅に出ようと思うんだ」
意表を突いた俺の言葉は温和なムードの食卓を一瞬で凍りつかせた。
「えっ・・・あっ・・・リザック・・・?」
「リザック・・・お前・・・本気で言っているのか・・・?」
「「リザ兄どっかいっちゃうのー?」」
お義母さんだけ何も言わずじっとしていたが、他のみんなはそれぞれの反応を見せた。
「いやさ、俺ももう16歳だし、外の世界も見てみたいなって思って」
「そんな!リザックそんなこと一回も私に相談もしないで決めて!私リザックに出られたら・・・」
「レウン、もういい」
泣きそうになりながらありったけの感情を吐き出そうとしたレウンをお義父さんが制止する。
「リザックの言うとおりだ。お父さんもリザックの歳くらいになったら旅をして、色んな世界を体験したものだ。リザック、お前がそうしたいと言うなら私達は止めはしない。むしろ応援したいと思う。だから気兼ねなく行くと良い」
「そうよ、リザック。いつか・・・お前がそんなことを言うだろうと思って、お義母さん色々準備してたんだから。ほら」
そう言うとお義母さんは大きなリュックを取り出した。
恐らく、食べ物や料理器具などが入ったリュックなんだろう。
「これを持ってお行き。辛くなったらいつでも帰ってくるんだよ?あと、旅の様子を手紙として送ってくれるととても嬉しいわ」
「うむ、お義父さんもしばらくこの村の外を見ていないからな、手紙を送ってくれるとなるととても楽しみで毎日の手紙が待ち遠しくなってしまうな」
「お父さん、お母さん・・・でっでも!私は・・・私は・・・!ひっぐ・・・えっぐ・・・」
ついに泣き出してしまった。
するとお義母さんは優しく語りかけるようにレウンに声を掛けた
「レウン?女は男が旅に出るって言う時素直に「いってらっしゃい」って言う甲斐性も必要なのよ?だから、涙は少し我慢して。笑顔で見送って上げましょう?」
「うっうん・・・!リザック!いってらっしゃい!でも、帰ってきて・・・絶対、帰ってきてね!その時は・・・その時はちゃんと、告白・・・させてね!」
「ああ!リザック!大変だと思うがとても楽しい旅になることを祈っている!帰ってきた時に素晴らしい土産話を期待しているぞ!」
「「リザ兄いってらっしゃーい!!!」」
んーーーーーーーーーうんーーーー???
待て待て待て待てー?なんで今行く事になってるの????
いやいやいやいや・・・・いやいやいやいやいや!!!!
俺としては数日、この村で情報を集めてから行こうって算段だったのに!?俺の意思無しで事が進んでる!
だがしかし、ここで否定すれば空気がぶっ壊れる!!!
だが何も知らないまま冒険の旅は不味い!
空気を壊してしばらくこの村で居るべきか、それとも危険承知でこのまま旅に出るか考えていると妹二人が
「「あっリザ兄!渡さないといけないもの忘れてたー!待ってて!」」
と言い走って自分の部屋に行ってしばらくすると、1冊の本を持って帰ってきた。
「「前にリザ兄が旅に出る時に返してくれって言ってた本ー!」」
妹二人は持ってきた本を突き出してきた。
何の本だろうと思い、表紙を捲ってみると
『将来の僕の代わりとなる君へ贈る』
と一言書かれていた。
そして次のページには
『何も知らないだろう君へ、少しの知識とこの世界の事を伝えよう』
と書かれていた。
これは・・・!俺に移り変わる前の自分が俺宛に書いた本なのか・・・!
これがあれば、大丈夫な気がしてきた!よし、迷いは無くなった!いざ行かん新しい世界へ!
「ありがとう!義父さん、義母さん!レウンに妹達!俺は色んな世界を旅して来てきっと帰ってくるから!」
素敵な冒険が始まる・・・そんな予感がした。そんな気がした。




