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能力社会  作者: コイナス?
1章 憎しみの世界
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95話 ゼスト・アライブ

ゼスト「撃ちたくなかった。俺は……あああ」


 どっちにしても後悔することには変わらなかった。 正解なんてどこにもなかった。これが間違い続けた結果。

 胸が苦しくて張り裂けそうになるが、死ぬことなんてできやしなかった。生きたまま茫然と立っていることしかできない。追いついたリザが声を掛けてもゼストは反応ない。目の前の亡骸で彼女は理解して強引にゼストを連れていく。


スジュン「ようやく来たか。早くジェノサイドスレイが来る前にここから逃げるぞ。」


 隠していた車に生存者を乗せて逃げる。死神は間に合わず見ていることしかできなかった。


死神「くそ、ここまで来て逃げられたか!」




 リザたちは車を他のアジトに向かわせた。車の中はいっぱいで身動きがほとんど取れないうえ、心境も最悪だった。それでもリザやスジュンはゼストを責めることはしなかった。


 数時間でアジトに着きそれぞれの思いを秘めたまま下車していく。他の者がアジトに入っていく中でゼストだけは足を止めた。


ゼスト「俺はここには居られません。今までありがとうございました。」

スジュン「待て、他に行くとこがあるのか。」

ゼスト「家に帰ろうと思います。両親や姉妹、幼馴染、親友が待っていますから。」


 スジュンは嘘だと完全に分かっていたが、止めることはできなかった。食料などに余裕があるわけでもないし、ここにいたところでゼストの精神が回復するとも思えなかった。


スジュン「分かった。これが連絡先だ。何かあったら掛けてくれ。力になれるかはわからないが。」

ゼスト「感謝します。」


 ゼストは紙を受け取って奴隷解放団の元から離れた。




 それからひたすらさまようように歩いた。かつて自分の家があった場所に戻ってきていた。彼自身、なぜここに戻ってきたかよく分からなかった。かつての幸せの記憶を思い出すための無意識の行動なのかも知れない。しかし、その場所はもう面影など残していない。あるのはかつての地獄の跡のみ。









 俺は疲れて目を深く閉じた。


リリア「そんなところで何しているの、ゼスト。」


 その声に俺は驚いた。生きているとは思ってもいなかった。


ゼスト「生きていたのか?」

リリア「奇跡的に能力による治療が間に合って助かったの。」


 そんな奇跡もあるのか、と凄く喜んだ。不幸中の幸いだ。以前も似たようなことがあったような……。ガイア……


リリア「泣いているの?」

ゼスト「嬉しくて。リリアだけでも生きていてよかった。」

リリア「私だけじゃないよ。ミーアちゃんやセリカさんも近くに来ているよ。」


 リリアの後ろにはミーアと姉さんが見えた。


セリカ「辛かったね。でも、これで終わり。」


 みんなにあえてよかった。辛いだけじゃなかった。救いがあったんだ。


ミーア「母さんや父さんはいなくなったけど私たちは生きている。未来があるんだよ。」


 ああ、俺には未来がある。死んでいった者たちのためにも俺たちは生きていく。   











 そんなわけないだろ。


 全ては偽物。


ゼスト「もう俺には何もない……。」


幻覚は終わった。今までのことを思い出しながら呟いた。あの虐殺から始まった殺戮だらけの世界。何を願っても叶わなかった。たった一つの守りたいという願いすら。


ゼスト「もう嫌だ、楽になりたい。一体いつまでこの世界で生きればいいんだ!」


 嘆きを叫んで泣いた。懐から持っていた拳銃を取り出して自らのこめかみに突きつける。死ねば終われる。楽になれる。何も見なくて済む。


ゼスト「……死ね。」


 まるで他人に告げるかのように呟いた。それなのに指は震えて引き金は動かせない。


ゼスト「死ね、死ね、死んでしまえ! お前なんか生きる価値はない。世界中の誰よりも有害で人殺しのお前を誰が必要とする! 傲慢でクズで他人任せの人でなしが!」


 それでも引くことはできない。ガイアの遺した言葉のせいなのか、本心は死にたくないだけなのか誰にも分からない。


ゼスト「……! どうして、どうして、俺は!」


 拳銃を投げ飛ばし、自殺も生きることも嫌になる。何より何も出来ない自分が心底嫌いだった。


 心のどこかで自分は特別だと思っていた。誰かを救い、人の役に立てる人間だと思っていた。選ばれた存在だと勘違いしていた。だから何でもできると思い込み、人を救おうとした。何かの物語の主人公のつもりでいた。救えなければ今度は悲劇の人になった。自分が一番不幸と嘆いた。実際は巻き込まれた人が不幸だというのに。傲慢にもほどがある。


 全ての原因は彼だった。何もかもの行動が悲劇を起こした。屍を積み上げた。

 力があれば救えた。行動が変わっていれば悲劇は防げた。本当の覚悟があればこうはならなかった。足りなかったのは全て。


ゼスト「だから俺は……何もかもを壊し、全てを……」


 もう何もいらない。ゼストにいるのはただ一つの……。

 そして、彼はそれを得るために持っていた携帯電話であるところに電話を掛けた。その一本の電話が彼を、そして世界すらも変える始まりとなる。


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