86話 何もかも砕けた
ガイア(力が少し戻った今ならこの状況を切り抜けられる。ただ、加減もそこまでできそうにない。切り捨てるしかない……)
ガイアは覚悟を決めてゼストを逃がすことにする。小声で意思を伝える。
ガイア「逃げろ、ゼスト。」
ゼスト「嫌だ、何もせずに逃げるなんてもうできない。」
ガイア「もうそれしか手はない。分かってくれ。」
ゼストがそれを拒むこともこれからする行為を嫌うことも予想はできていた。そんな彼だからこそ生きてほしいと願った。
ガイアは彼を後ろに突き飛ばした。
ガイア「ゼスト、死ぬなよ。絶対に生きろ!」
二人の間に大きな氷の壁を作り出して遮る。その壁は端まで塞いで迂回も出来ない。厚さも銃弾すらも弾き返しそうなほどだった。
ゼスト「ガイア、ガイア! まさか死ぬつもりじゃないだろうな!」
ゼストは必死に能力で炎を出して氷を溶かそうとするがほとんど意味がない。通信機を出して手当たり次第に周波数を変え助けを求める。誰かにこの声が届けば状況は変えられると信じていた。
ゼスト『誰か俺たちを、ガイアを助けてくれ!』
そんなゼストを無視して、ガイアは壁を通り抜ける能力者を真っ先に凍らせる。加減など出来ないうえに攻撃すらもすり抜けられたら打つ手がない。
ガイア(殺さなければゼストが死ぬ。悪いなゼスト、結局こんなやり方しか俺にはできない。)
その平民の肉体を躊躇なく砕き殺害する。まだ残っている体力で残存する自由の民を全力で襲う。拳銃を発砲しながら抵抗されるものの銃弾は全て凍りついて地面に落ちていく。
一人ずつしか殺せずに時間が掛かる。敵一人残してガイアの攻撃が止まってしまう。とっくに限界が来て体が悲鳴を上げていた。
ガイア(あの人から貰った力を使ってもここまでか!)
足場を少し凍らせた段階でガイアは倒れてしまう。意識はあっても体は動かせなかった。
そんな彼を見てチャンスと思い残った平民は銃を連射する。ガイアは頭への攻撃は何とか防ぐものの背中の攻撃は防ぎきれなかった。何発も撃たれ、やがて痛みすらも薄れていく気がした。
平民「死ね、死ね!」
ガイア(これで時間を稼げれば……ゼストは……)
彼の思考する力すら消えかけ、目の前が段々と暗くなっていく。残された意識もなくなり、全ての感覚も消失する。
彼の命は、氷の壁とともに消失してしまう。
ゼスト「嘘だろ……うああああああ!」
そんな泣き叫ぶことしか出来ないゼストを平民は狙う。
平民「お前も死ね。」
ゼスト(これで……俺は)
死を覚悟した瞬間、別のところから発砲音が聞こえ平民が倒れて死ぬ。
危機一髪のところで通信が偶然繋がった奴隷解放団が助けにきた。
リザ「間に合った!?」
ゼスト「どうして……もっと遅く来てくれなかった!」
最悪の言葉が思わず出てしまう。




