85話 抜けることはできない
平民の能力で建物の壁をすり抜けてショートカットを行う。障害物などを気にせず進めるため本来よりも遥かに早い時間で移動が可能となる。ゼストにとっては早くて安全に済むため助かっていた。
平民「もうすぐで建物を抜けられます。」
ガイア「……ちょっと待ってくれ。」
平民「どうかしましたか?」
ゼスト「何かあったのか?」
ガイアには確証も何もなかったが、不自然に感じられた。
平民「問題がなければ早く行きましょう。」
ガイアのそれはすぐに分かることになる。
建物の外には大勢の自由の民が待ち構えていた。増援できたであろう者も何人かいた。
ゼスト「彼らは自由の民!? どういうことだ?」
避難民と思い込んでいた平民たちが自由の民の側に駆け寄る。最初に助けを求めていた平民は能力で変身させていた顔を戻した。それは全くの別人の顔だった。ここでゼストは騙されたことに気付いた。ここにいる者はゼストとガイア以外は全員自由の民だった。
ガイア(そういうことだったか!)
ゼスト「騙したのか? そんな……」
平民「これだと避難民たちはもういないみたいね。あなたたちは邪魔でしかない。仲間も何人も死んだ。仇はとらせてもらう。」
ゼスト「仇って最初に手を出したのは自由の民だろ! みんなを騙して巻き込んで、そんなに人を殺したいのか!」
大きな声で怒るしかできなかった。人を人とは思っていないからこんなことが平然とできるのだと思ってしまう。
平民「別にあなたたちを殺したいわけじゃない。でも、あなたたちは自由の民に逆らった。裁きを受けて貰うまで。」
ゼスト「逆らったから殺していいのか? それが正しいって何で思っているんだ!? サリアは変わってくれた。名も知らないあの人だって間違いだって思っていたはずだ! 俺は自由の民でも変われると信じている。」
サリアの名前を出され、平民の彼女は不機嫌になる。
平民「お前がサリアを死に追いやったのか! 洗脳みたいなことをして仲間同士で殺し合いをさせて! 許さない!!」
誤解が憎しみを生み、それはゼストとガイアに向けられた。誤解を解く時間も方法もおそらくない。この場を切り抜ける手段がゼストにはなかった。




