82話 ヴォーン・ジッツ
ヴォーンは自分は負けることはないと心のどこかで思っていた。自分はアインスやツヴァイとは違い旧人類が相手でも慢心も油断もしていないと。その発想自体が無意識に相手を見下し大きな敗因を生んだ。
ヴォーン「……俺を殺すのか?」
観念したかのように彼らに呟く。
アリー「お前、私たちを殺すつもりはなかっただろ。そもそもただ裏切るにしては不可解な点が多すぎる。私たちを死なせないためにケミール側についたんだろ。」
ヴォーン「気付いていたのか?」
スジュンはやっぱりそんなことかと納得する。バゲージもちょっとは驚いたが理解までそう時間は掛からなかった。
アリー「私たちはお前の予想通りだと死ぬはずだった。それを回避するためにあんな回りくどい真似をした。」
ヴォーン「そこまで分かるのか?」
アリー「何となくな。……奴隷解放団に入る前に色々な雇い主をみてきた。報酬を渋る奴、裏切って殺そうとしてくる奴、何かを守ろうと必死な人。お前は奴隷解放団を……いやみんなを死なせなくなかったんだろう? たとえ恨まれ何人か殺す羽目になっても。」
ヴォーンは見透かされたような気分だった。経験が違うというのはこういうことかと実感もした。
ヴォーン「…………そうだ。ケミールと手を組む前の共和国にいた頃、まだビヨンドではないのに能力の共鳴が起きた。そして未来が見えたんだ。奴隷解放団が全滅する未来を……」
バゲージ「でもそれは回避できた。もしこれからも危機が迫っても何とかしてみせる! だからまたともに戦ってくれ!」
バゲージはヴォーンに手を伸ばす。リザなら同じことしただろうから。
ヴォーン「また……よろしく。」
差し伸べられた手を取り彼は再びあるべき居場所へと戻ることにした。




