83話 名もなき構成員
攻めてくる何人もの自由の民を仕留めつつ、構成員は建物の中を走り続ける。返り血まみれになろうと血が出ようとも拭き取る暇もない。かつての同胞を敵に回してでも彼にはこうするしかなかった。
構成員「一体何やっているのだろうな、俺は。仲間を殺してまで守りたい者でもないはずなのに。名前もろくに知らない人のために……。」
迷いなんて捨てたはずなのに、自問自答を繰り返してしまう。
構成員「俺は……貴族から人々を守るために自由の民になった。復讐のためじゃない……そうだろ、レスティア。」
今は亡き婚約者の名を口にした。あの日から本当の目的は何も変わっていない。
走った先にいないと思っていたゼストとガイアに出会う。
構成員「何でまだここにいる!?」
ゼスト「どうしても逃げるなんて出来ない。」
ガイア「サリアが避難民から暴行を受けて亡くなった。彼女はきっと彼らを守ろうとしたはずなのに。避難民は別の方向に逃がしたが、貴方もそうなる可能性があるかもしれない。」
こうなることは構成員は予想していた。彼にとってもサリアの死は悲しかったが、ここで止まれば彼女の死は無駄となる。
後ろからは追って来ている自由の民数人の足音が徐々に大きくなる。仲間を殺した構成員を狙ってもいるのだろう。
構成員「だったらゼストはこの先を行ってくれるか? そこに隠してある物資がいくつあるはずだ。俺たちも後で行く。」
ゼストは少し疑問に思ったが言う通りに先に行った。
構成員「君は貴族だな。」
ガイア「ああ、そうだ。」
構成員は能力を使い、自身の肉体とガイアの肉体の一部を差し替えた。構成員の左手と左目は失い、代わりにガイアの左手と左目が戻る。完全ではないにしろガイアに力と体力が戻る。
構成員「これで能力が少しは使えるはずだ。」
ガイア「なぜこんなことをする?」
構成員「君のような貴族は初めて会った。正直嬉しかったよ。結果は最悪でも自由の民を救おうとしてくれた。ありがとう。」
ガイア「結局、俺たちは何も出来なかった。」
構成員「いい。所詮はこれが俺たちの運命だ。後は任せていいか?」
ガイアは構成員が周辺に置いた物を見てしまう。構成員の腹部にも出血があった。この後のことを察してしまった。
ガイア「分かった。貴方は俺たちの命の恩人だ。絶対に忘れない。」
ガイアは涙を少しだけ流した。構成員に背を向けてゼストのところに戻る。
構成員「それでいい。」
見送った後に自由の民がやってくる。銃を構えられ、終わりを覚悟していた。
自由の民「裏切り者はここで死ね!」
構成員「確かに、死ぬ。だが、生きる価値のない自由の民を道連れにする!」
仕掛けた爆弾を起動し、近くにいた自由の民全員を巻き込んだ。爆発の音を聞いてから構成員の意識がだんだん薄くなっていく。
構成員(これで……やっと会いに行ける。待たせた、レスティア。)




