82話 引き返しても
ゼスト「何をやっている?」
避難民「ゼストか。やっと仇を討ったぞ。」
ゼスト「自分たちが何をやったのか、分かっているのか!」
思わず怒りを声に出してしまう。こんなことは許されるのかと思ってしまう。
彼自身だって同じようなことをしようとしていた。非難する権利はないはずなのに。それが分かっていても、いざ彼女の亡骸を見てそう思わずにはいられなかった。どうしてこうなったのか理解出来なかった。もし、説明させたところでまともに話など聞こうともしないだろう。
ゼスト「サリアはお前たちを救おうとしていた。そんな彼女をなぜ殺した!」
答えなど彼が一番知っている。聞かなくても分かるものを叫ぶ。
避難民「何で怒る? こいつはみんなを操り殺した。今度はこっちが殺しただけだ。何が悪い?」
何一つ男の言うことは間違ってなどいない。間違った方法を取っているのはゼストの方。そも言葉にゼストは言い返せずしゃがみこんだ。
ガイア「……仇を討ったならもういいだろ。これ以上は犠牲者が増える。この場から立ち去れ。」
避難民「そういうわけにはいかない。自由の民、全員を殺さなければ恨みを晴らせない!」
ガイアにとっては彼らの気持ちが痛いほど理解できた。少し前の彼と同じような者。
ガイア「だったらいいことを教えてやる。奴らはサリアと数名を囮にして既に撤退している。瞬間移動を利用してお前たちが追っている反対方向に逃げた。今、全員で引き返せば間に合うかもしれん。」
避難民「貴重な情報ありがとう。行くぞ、みんな。」
ガイアの嘘を信じて彼らは負傷者を背負いながらガイアの言った方向に向かった。彼らがいなくなったことを確認がしゼストに話し掛ける。
ガイア「これでいいか?」
ゼスト「すまない。助かった。」
ゼストは必死に出そうな涙を堪えていた。いつまで経っても憎しみを断ち切ることなど出来ない。自分の愚かさと無力が嫌になっていた。
ガイア「これで終わりじゃない。急いでここから逃げるぞ。」
ゼスト「ここで逃げても何も変わらない。俺は無力かもしれないけど自由の民を止めたい。」
残っている構成員のためにも来た道を引き返すことにした。ガイアは仕方なくゼストに従った。




