78話 救えたものは
ガイアは何もかもを捨てる覚悟だった。家族も貴族としてのプライドも全てを失った。大切な人と呼べる者はたった一人しか思い付かないほど。だから、捨てれるものは自分が持っている肉体くらいしかない。彼の左手は消え、左目は光を灯すことはない。
ようやく、ガイアはゼストたちと合流する。ガイアの目ではゼストを認識することはできずに声で判別した。
ゼスト「ガイア! 良かった、無事だったのか。」
ガイア「ゼストも無事なようだな。避難民たちも今は抑えている。氷がいつ砕けるか分からない。できるだけ早く遠くに自由の民を逃がせ。」
ゼストはここで初めて気が付いてしまう。一瞬、見間違いかと思ってしまった。
ゼスト「ガイア……左手はどうした? 左目も何か変じゃないか?」
ガイアは正直に話すべきか迷う。話せばきっとゼストは責任を感じるだろう。自分のせいと思い込む。でも、話さなくてもいずればれる。だったらいっそここで……
ガイア「能力強化の薬を使った副作用だ。違法薬物でしかも試作品だから安定はしていない。でも、心配するな。たかが手と目一つ、能力で再生治療すれば治る。当たり前だが、命はどうにもならないから命のほうが大切だ。」
能力で治るといっても大物の貴族ですら支払いが難しい莫大な治療費が掛かる。ガイアが借金しても払える額では到底ない。そんな事実などゼストはまだ知らない。
ガイアのそんな姿にサリアは目を背けた。
ゼスト「確かに。命は大事だけど、もっとガイア自身の体も大切にしてほしい。」
ガイア「悪かったな……今後は気を付けるよ。」
構成員「俺たち自由の民のために……すまない。そして、ありがとう感謝する。この恩は忘れない。」
構成員は深々と二人に頭を下げた。サリアもそれに続いて下げる。
サリア「許して欲しいとは言わない。でも、みんなを救ってくれてありがとう。」
ガイアとゼストにとってその言葉は救いにもなった。感謝されるなんて夢にも思っていなかった。ガイアにとっては命を奪い続けた手で誰かを救えたことが贖罪にもなった。
ゼスト「やっと……誰かを救えた。無理かも知れないって思っていた。俺は無力で何もできず見てるだけだって。でも、これで何も出来なかった自分じゃない。」
人が殺され続ける惨劇にようやく終止符を打てたと感じた。ゼスト自身、大きな一歩を踏み出せた。
ゼスト(俺は変われた。これからもきっと何とかなる!)




