73話 これ以上奪わせないために
扉を開けばそこには大勢の避難民が集まっていた。その横には自由の民が一人、血を流して横たわっていた。もう間に合わなかった。
平民「自由の民の奴らを決して許すな! まだ何人も残っている。全員に私たちの怒りを思い知らせろ!」
そこにいるかつて避難民の平民たちは覚悟などとうに決めている様子だった。それでもゼストは止めたいと強く願った。
ゼスト「止めてくれ、こんな復讐をして欲しくて話をしたんじゃない! 真実を知って欲しかっただけだ。」
平民「真実を知ったからこそこうしている。復讐が間違いなんて誰が決めた? ゼストさんだって憎いだろう?」
ゼスト「……確かに憎いよ。でも、人殺しなんて駄目だ。」
平民「そんなことは初めから分かっている。もう遅い。一人、命を奪っている。止めようとしてくれてありがとう。」
溢れそうな涙を堪えて男は同志とともに次の自由の民を狙いに行く。ゼストは説得には失敗したが諦めるつもりはなかった。
ゼスト「ガイア、お願いがある。力を貸してくれ。お前のその力があればできるはずだ。」
ガイア「……俺の力でどうするつもりだ?」
ガイアの心の中にも同じ考えは浮かんでいた。無茶なのは百も承知だった。だとしてもこれ以上誰一人死なせるわけにはいかない、そう強く願った。
ゼスト「俺たち二人で力ずくでも止めてみせる。」
ガイア「自由の民も既に一人やられている。どちらも命を奪い合うはずだ。」
ゼスト「だから人殺しを妨害した上で説得し戦いを終わらせたい。」
どちらも死なせたくはなかった。幾度なく人の死を目の当たりにし続けたゼストだからこそ出た結論だった。何もしなかった、出来なかった自分とは違うと思い込んだ。今度こそは正しい選択と結果に導くために。
無謀な戦いを二人は開始した。




