71話 その選択を信じて
放たれた弾は人には当たらず飛んでいき壁へと着弾した。気の迷いでこうなったのか、それとも必然の選択なのかゼストにはわからない。それでも確かなのは殺さないということを選んだことだった。ガイアはその選択に口を出すつもりはなかった。
ガイア(殺しはしないのか。きっと俺とは比べ物にならないくらい憎かっただろうに。)
サリア「一体何のつもりだ?」
ゼスト「みんなを殺したお前を許すつもりはない。でも、殺すのは何か違うって思った。」
言葉にできないそれを抱えていたからこその結果だった。情けや同情とは少しだけ違う気がした。
ガイア「俺なら殺していたがゼストは俺なんかとは違う。きっとこの選択が正しいと俺は信じたい。」
彼にとってはそう信じなければ今すぐにでも目の前の女を殺害してしまいそうだった。
ゼスト「もう人を殺すな、操るな! 二度と俺たちに関わるな!」
サリアにそう告げて彼女を逃がすことにした。姿が見えなくなるまでガイアは一切警戒心を緩めることはなかった。
ゼスト「これで良かったよな? リリア……ごめん。」
疑ったこと、信じてやれなかったこと、救えなかったこと、仇を取れなかったこと、その全てを無意識に含んだ言葉。
ガイア「それじゃあ、これで俺は去ることに
するよ。」
ゼスト「待ってくれ。まだ避難民が残ったままだ。ガイアが戻ってきてくれたらきっとみんなも喜ぶはずだ。」
ガイア「……分かったよ。やることがすんだら行くよ。」
ゼストはみんなが待っているであろう保護されている場所に真実を告げることも含めて向かった。これでなかったことにはならないが、少しは楽になれると思った。
ガイアは殺した自由の民の名前を紙に書き連ねた。名も知らない者も当然いた。これが罪滅ぼしになるとは微塵も思わない。ただ、忘れないために行う。
ガイア「こいつらにも理由があったんだろうか。それが正義と信じて……正しいと思って。許すつもりも許されたいとも思わないさ。でも、他の選択肢を見てしまったからな。俺はやっぱり弱くて傲慢なままだな。」
何の力もないと思っていた平民と自らを比べてしまう。あらためて能力なんかが全てではないと思い知らされた。
きっといつか変われるなら、許せる日が来るのだろうかと心の片隅で考えた……。




