68話 砕けたもの
ゼストは理解が追い付かなかった。仲間を殺害したところを彼も目撃した。目の前にいる者は自由の民の敵である。自由の民の一員なら選ぶ選択は決まっているはず。彼の心が振り子ように揺れ続ける。
ゼスト「お前は誰だ! 答えろ、さもなくば撃つぞ!」
質問の答えなんて見れば分かることなど一番彼が知っている。それでも違う答えを求めていた。違う誰かなら迷うことなんてない。
答えの前にトランが引き金を引く。放たれた銃弾をゼストは止めることすらできない。
ガイア「俺には効かない。」
ガイアに当たる数センチ手前で銃弾が凍りつき床に落ちる。
ガイア「さっきの質問に答えよう。俺の名はガイア・キルーズ。お前たちを殺す人間だ。別に覚えなくていい。」
冷たい彼の視線がゼストに突き刺さる。もう今の彼は昔の彼ではない。多くの命を奪った人殺しと何も変わらない。しかし、
ガイア(ゼスト、必ずお前だけでも救ってみせる!)
彼の心の内などゼストには届きはしない。
サリア「違うわ、お前は私たちを殺せない。私がお前を殺す!」
彼女も後ろから援護射撃を行う。全ての弾が凍り能力を使用させ続ける。反撃を許せばさっきの仲間みたいに全身を凍らされる。
この隙をつきトランがガイアの背後に瞬間移動し銃を構える。正面の攻撃は防げても背後からの意識していない攻撃は防げないと考える。
トラン(もらった!)
だが、トランは失敗する。拳銃そのものが瞬間で凍りついていた。まるで後ろにも目がついているようだった。
ガイア「まさか、そんな攻撃が通じるとでも思ったのか?」
予測していたため、前もって室温を下げて能力を使いやすくしておいた。トランは逃げようとするが床から足も凍り始める。
トラン「動けない!」
ガイア「お前たちの情報は既に持っている。能力が分かれば簡単だ。」
弱点を知っていたためガイアにとっては敵ですらない。トランは必死に動こうとするが足から上に向かって徐々に凍っていく。サリアは止めようと撃ち続けるが彼女の拳銃も凍りついてしまう。ゼストはこの状況でも何もできない。
トラン「止めてく……」
抵抗虚しく全身が氷結する。その後、仲間と同じ結末で砕け散っていった。サリアにとっては信じられない光景でしかない。
サリア「トラン様! うあああああ!」
彼女は絶叫した。自らの死もすぐそこまで迫っていた。




