66話 今は動けない
ジェノサイドスレイは他の自由の民がいないことを確認した上で屋敷から撤退することにした。帰り道の車の中でシェリーは深く反省していた。こちらに死者はいないが、貴族と自由の民の逃亡を許したので事実上は敗北に近い。
シェリー(自由の民を全滅できなかった。奴らはこれからはジェノサイドスレイも標的にする。何としても奴らを殺さなくてはならない! この世界のためにも。)
敵は奴隷だけではなくなった。初めから自由の民とジェノサイドスレイは共存なんて不可能だったのかもしれない。
事情が何であれ組織としては敵を増やしたことになる。今度こそシェリーは幹部からは降格になるだろう。処分の可能性すらあり得た。
彼女はジェノサイドスレイの中では、比較的民間人の犠牲を避けていた。組織内では甘いやり方だと非難されたりしてあまりいい顔はされていない。
覚悟をして電話で上に事後報告を行う。電話を掛けてすぐに人が変わり、想像していなかった人物が出る。
彼女は驚きで声が出なかった。電話の相手はジェノサイドスレイの創設者でリーダー、コードネームは死神。
死神『久しぶりだな、シェリー。自由の民との衝突は避けられないことだった。気にすることはない。シェリーには今まで通り幹部を続けてもらう。』
死神にとっては自由の民との敵対は想定内でしかない。
死神『自由の民のことだが今は排除は後回しだ。奴隷解放団の動きが活発になってきた。勢力も拡大しつつもある。他の奴隷も逃げ出したり抵抗している者も増え始めた。お前たちにはそちらの対処を頼みたい。詳細は後日伝える。』
シェリー『了解しました。』
ジェノサイドスレイの本分である奴隷の抹殺が優先事項であった。このままでは第二、第三の奴隷解放団やキル・コープスが現れてもおかしくはない。
このことを仲間に伝えるとほとんどの者は納得していた。ミーアだけは理解はしつつも複雑な気持ちだった。
ミーア(当然、奴隷を放置するわけにはいかない。でも、自由の民も同く危険な連中。今は誰かがやってくれるのを期待するしかない。)
変わり続けるこの世界で今は何もできずにいた。




