86話 共和国の闇に紛れて2
レイ(俺の知ったことではない。)
無数のカメラをできるだけ避けながら進んでいく。すると女性が彼に助けを求めてきた。
女性「そこのフードの人、どうかこの子を助けてください。」
レイは見向きもせずに無視しようとする。
女性「無視しないで下さい!」
レイ「ちぃ、うるさい!」
声に反応して思わず振り向いてしまう。女性は死んでいる子供を相変わらず抱いていた。
レイ「そいつはもう死んでいる。」
女性「そんなはずありません。まだ生きています。」
子供が死んでいる現実から目を背いていた。そうしなければ生きていく理由を失いそうだった。しかし、そんな彼女をレイは否定する。
レイ「そいつは死体だ。持っていても生き返りはしない。だから……」
彼は女性から子供の死体を引き剥がし投げ飛ばす。レイはそのまま死体に火をつけて燃やしていく。
女性「……何てことを!? この人でなし!」
レイ「お前が言ったんだろう! この子を救えと。このまま腐らせろとでも言うのか? 後で骨は拾ってやる。だから見届けてやれ。」
女性「……う、うあああああああ!」
女性は燃える死体を見て泣き叫ぶことしかできなかった。レイのやったことは価値観の押し付けに過ぎない。
燃え終わるとレイは遺骨を時間を掛けて回収した。回収した者を彼女にそっと渡す。
レイ「悪かったよ。独善を押し付けて。」
女性「……」
彼女は黙って遺骨を受け取った。まだ死を受け入れることなどできない。レイにもこんな強引なやり方が正しいとは欠片も思ってはいないがこの方法しか知らない。
女性「ねえ、あなたは見届けてきたの?」
レイ「……ああ。数え切れないほどにな。」
見届けたなんて綺麗な言葉で誤魔化した。こんなのは弔いではない。やっていることはゴミなを燃やすのと大して変わらない。
レイ「邪魔をしたな……」
レイは彼女の元を去っていく。去りながら彼女のことを立派だと思った。誰のせいにもせずに現実と向き合っているのだから。
レイ(俺は誰かを憎まなければ前に進めない。俺にできるのだろうか? 現実を受け入れて明日を生きることが……。)




