51話 めいどへ
奴隷解放団の登場により世界は少しずつ変わり始めていた。貴族や平民も彼らに協力し、ジェノサイドスレイの活動は緩やかになっていた。それでも現実にはまだ大勢苦しむ人がいる。
泣き崩れたあの日から、ゼストはもうすっかり落ち着きを取り戻した。いまだに悪夢は見るが毎日ではなくなっていた。事件からもしばらく経ったからこともあったがリリアがいたことが彼にとって一番大きかったのは間違いなかった。
避難していた人々もここでの生活に少しずつだが慣れていった。しかし、避難生活で大変なのは変わりなかった。
彼らは今を生き抜くのに精一杯であり、ここ以外の世界の状態などテレビやインターネット、噂などでしか知ることはなかった。彼らにはその方が幸せなのかも知れない。
サリア『こちらの食糧が少なくなってきました。その分の配給量も少なくしていますが、これからはいかがなさいますか?』
ガイア『それは俺が何とか手配はしておく。しかし、避難民がよっぽど増えない限り不足しない計算のはず。何か問題でも起きたのか?』
サリア『いえ、問題はありません。ただ、この状況になりますと計算通りにはいきません。他のメイドや執事の人数も圧倒的に足りていません。ゼストさんやリリア様などにお手伝いしてもらっていますが、いくら減ったとはいえ避難民の数が多すぎます。』
この家のメイドのサリアはガイアと電話で定時連絡を取っていた。食糧以外の課題も山のようにあった。善意でこの家を避難場所にしているとはいえ、その負担は使用人が背負うことになる。
サリア「ガイア様にも我々の負担を考えてほしいものです。」
サリアが受話器を置き、ふと不満を漏らしていた。たまたま、近くを通っていたリリアがそれを聞いてしまっていた。
リリア「ごめんなさい、サリアさん。私はここにいるべき人間じゃないのに。」
サリア「リリア様のせいじゃありません。むしろリリア様のおかげで私たちは助かっています。本当にありがとうございました。」
サリアは今までもそして、これから手伝ってくれているリリアに感謝の言葉を告げ、ゆうこうの証として握手を両手で行い深々と頭を下げた。その行為に照れたのかリリアは少し顔を赤くした。
リリア「これからもよろしくお願いいたします。サリアさん。」
サリア「こちらこそ。」
サリアは紛れもなく本心でこの言葉を言っていた。リリアはその言葉の真の意味に気付くことはなかった。
サリア「それでは失礼します。」
サリアは他の用事のためその場を去る。彼女は別室に行き、他のメイド、執事と合流し話し合った。
サリア「すべての問題はこれで解決しました。食糧の問題も抜かりはありません。」
ゴードン「サリア、お前は私たちの中でも主に信頼されている。だからこそ、これからも失敗は許されない。奴隷解放団が出てきた今この時が大事なのだ。」
この中で一番古参のゴードンはサリアに警告する。今回の件は彼らだけの問題ではないからだ。この家を避難場所としている避難民にとってこの家が唯一の居場所といっても過言ではない。
かつて彼らが住んでいた場所は事件のせいで住める状態とはいえない。復興作業も行われているがあまり進んでいるとは言い難い。仮に復興が済んだとしても大勢の人が犠牲となったあの場所に帰ってくる者などいるのだろうか? そんな疑問の声も当然あった。もし、今回の件が失敗すれば彼らだけの責任だけではなくなる。下手すればこの世界情勢すら変えかねない。
ゴードン「それでは明日の夜にまたここで。」
サリア「はい、失礼します。」
二人は残っている業務と明日のために別れた。ゴードンもサリアのことを信用していた。ここで別れ、後のことを彼女に託した。




