38話 選んだ道
逃げていてもいずれ少ない体力が尽きて追いつかれる。そんなことはここにいる奴隷全てが理解していた。どうにかしなければという思いがリザの中に少しずつ芽生えてくる。
このまま迫りくる死を受けいれるしかないのか、そんなのは嫌だと生きることを諦めなかった。
リザ(まだやれることはあるはず。)
生きるために戦うという選択肢が頭に浮かんだ。それを選ぶということは人を殺めることにも繋がる。
それでも仲間の誰かが死ぬのは見たくないという思いの方が強い。どちらを選んでも人は死ぬ。どちらを殺すかなんて彼女にとっては選択肢ですらない。問題は戦えるかどうかそれだけだった。
奴隷として生きてきた彼女に今までそんな選択など選ばなかった。奴隷倉庫では姉に頼りながら依存して生きてきた。そこを出てからもこれといって何もせずに一か月を浪費した。そのせいで虐殺を止める機会を見逃し、今のこの現状を引き起こした。
リザ(もうあんな思いはしたくない! あの男にできたんだから私にできるはず。)
彼女とキルの戦闘能力の差はかなりある。無論、キルの方が低い。
だからといって同じもしくはそれ以上のことを易々とできるわけではない。
もう悠長に迷える時間なんてなかった。死んだら後悔すらできない。
動かしていた逃げ足を止め仲間に呼び掛ける。
リザ「みんな聞いてくれる? 無茶なことだって分かっているけど……ここで戦おう。向こうは人数はそれほど多くはないと思う。それにこっちが反撃するなんて夢にも思っていないはずよ。」
スジュン「負けたら皆死ぬんだぞ?」
リザ「このまま逃げ切れるとも思えない。」
そんなことはスジュンも分かっていた。それでも出来るだけリザの選択を避けようとしていた。一度戦えば何度も戦うことになる。きっと終わりなんて見えてこない。
暗闇の中でも懐中電灯が照らす光のように、光がないと生きてはいけない。その光がリザの選択しかないなら選ぶ以外に道はない。
リザの決意の目を見てスジュンも決意する。
スジュン「確かにそれもそうだな。皆もリザに協力して欲しい。」
リザの意見に反対するものは誰もいなかった。死に抗うために全員が戦う道を選んだ。




