36話 下水道の中で
リザたちの奴隷は遠くの町の下水道に逃げ込んで生活していた。消えない異臭とすぐ横で流れ続ける汚水の音に気がつけば慣れてしまっていた。 あれから何日たったのか、そんなことを考える余裕はなかった。
交代で数人の仲間が地上に出て生活に必要なものを調達していた。しかし、お金もないのにそう簡単に食料等が手に入るはずがない。平時ですら不可能に近いのに事件のせいで治安が最悪になっている状況では略奪行為以外に道はない。失敗し死んだ奴隷も多くいた。
感染症や飢え、なによりストレスが彼らを追い詰めていった。
スジュン「今日の分の食料だ。」
スジュンたち数名が命がけで取ってきた食べものをみんなに配っていく。これが命綱。みんなは我先にと食べ物を口に運ぶ。その光景は醜く卑しい、意地汚いものだった。尊厳やプライドなど生き抜くことに比べれば何の価値もない。
リザ(いつまでこんな生活を続ければいいの?)
隠したつもりの不安が彼女の顔に僅かに表れる。スジュンは彼女の様子を察してもかけてあげる言葉がなかった。
そんな状況をたった一つの報告で劇的に変わってしまう。
奴隷「大変だ! ジェノサイドスレイに俺たちの居場所がばれた。もうじきここが襲われる!!」
今までの最悪だと思っていた状況をさらに上回る絶望を突き付けられる。
スジュン「みんな急いでここから逃げろ!」
その言葉を聞いて全ての者が全速力で走る。
「誰か助け」
「嫌だ、待ってくれ……一人にしないで」
走る彼らの耳には後ろから銃弾の音と仲間であろう者の叫びが響き渡る。きっと報告した者や後方にいた者が殺されたんだ、と想像してしまう。それでも自分の命のために走り続けなければならなかった。振り返ればすぐ見えるような惨劇から目を背けた。聞こえるはずの音から耳を遠ざけた。




