31話 迷走
三人はとりあえず格安の宿泊施設で三部屋借りて休むことにした。いきなり同室も気まずいだろうというミーアの配慮でこうなった。次の日の集合時間を決めて後は自由行動とした。
ミーアは一人、部屋で考えごとをしていた。これからのことをどうするか、どうすればキル・コープスを探し出せるか考えていた。しかし、普通に考えればミーアたちより警察や軍が見つける方が早い。いくら逃走経路を確保していようが世界中で指名手配されているため逃げ切れる可能性は限りなく低い。もう捕まってしまったら復讐は不可能となる。
ミーア「一刻も早く見つけなければ私の復讐は果たさないまま終わりを迎える。おそらく共犯者とキル・コープスはもう合流しているはず。あの程度で死んだとは思えないし思いたくない!楽に死なせてたまるものですか!
問題はどこに逃げているか?あちこちで検問をしているから表立ったところを通ってはいないことになる。」
ミーアはこの辺り一帯の地図を広げ逃走ルートを絞り出そうとする。検問がなく怪しまれずに逃げ切れる場所はあまり数多くはなかった。
ミーア(でもこれはあくまで地図上の場合。地下を通ったり飛行機などを手配していたら意味がない。いくらでも方法は逃げようはある。そして、逃げた後に何をするか。しばらくは動きは見せないだろうけどしばらくすれば必ずまた何かしらの行動を開始するはず。あれだけ宣戦布告しておいてこれで終わりのはずがない!)
何かしらの情報得るためにテレビをつけニュースを見ることにした。あの事件に関しての内容だった。
『犯行は動画の通り奴隷倉庫から脱走した奴隷のものとされており、今この時も警察、軍による捜索が行われています。……たった今最新情報が入りました。現場近くの森にて多数の罠と何者かがいた痕跡があったとの報告がありました。罠自体は非情に原始的なものが多く侵入者を拒むように作られていたそうです。この奥に使用済み紙コップや非常食の包装と思われる廃棄物が多数散らかったようにあったそうです。このことから犯人たちはこの場所に少なくとも何時間か居た可能性があります。もうその場所に居ないことからここから遠くに逃げたことが考えられます。』
新たな情報を得たミーアはそれをもとに考え直す。
ミーア(森に痕跡を残すということはばれても問題ないところまで逃げ切れる確証があるということ。近くにいるならそんな分かりやすい物は残さない。逆に痕跡が見つかる前提ならこれ自体が時間稼ぎのカモフラージュということもありえる。もう今は既に近くにはおらずとっくに遠くに逃げたならイギリスにはもういない可能性だってある。……一体どうすれば?)
考えれば考えるほどにいくつも可能性が出てくる。ますます困惑し迷走しかしなかった。
ミーア(考えても駄目ね。外にでも行って気分転換しようかしら。)
彼女は一旦考えるのを止め外に出ようとする。以前の復讐だけに囚われていた彼女ならこのようなことはしようともしなかっただろう。このように冷静に考えられるようになったのはケールとポピーという仲間がいたおかげといえる。
外に出かけたミーアは特に今は用はなかったがあちこちの店を見て回ることにした。しかし、昼間だというのに人が少なくあまり活気があるとは言い難かった。いくらあの街から距離があるとはいえ事件の影響を全く受けていないはずがなかった。人々の心は暗く沈みある者は憎しみを抱いていた。ミーアの想像よりもあの事件の被害者は多い。この街にも事件の遺族はいる。
ミーア(買い出しの時は気づかなかったけど、今のこの街の雰囲気は良くないわね。戻ったほうがいいかしら?)
彼女は帰るために近道の路地を通ることにした。するとよく分らないが強烈な悪臭が奥のほうから臭ってきた。よく見るとそこには腐敗した死体があった。暴行された後が多数あり直視できるようなものではなかった。
ミーアはそれに耐えきれずその場で吐いてしまう。
ミーア(一体あれは何?何であんなことになって?)
考えないほうがいいと分かっているが考えてしまう。ポピーのことと事件の直後であることから彼女は簡単に答えは出てしまった。
ミーア「まさか……奴隷?」
その答えは必然だった。奴隷に憎しみを持つ者など今となってはそこら中にいる。
ミーア「ポピーももしかしたらああなった?こんなの復讐でも何でもない!こんなのただの人殺しよ!」
だが、ミーアたちのしようとしていることはほとんどこの行為と大差はない。そんなことを自覚してしまう。
ミーア「違う。私は、私たちはキル・コープスに復讐するために……。」
目の前のことと同じじゃないか、そんな心の声が聞こえてしまう。必死に否定すればするほどもう一人の自分に言われている気がした。
当然、彼女は直接人を殺したことはない。あれほど憎んでいたキル・コープスですら殺す機会はあったのに殺せなかった。この世界で最も憎む者だったのに最後の最後で戸惑った。
ミーア「何で?何でよ!どうして割り切れないの?私は決めたはずよ。キル・コープスに復讐すると!」
迷走をしたまま放心状態で彼女は戻っていった。




