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能力社会  作者: コイナス?
1章 憎しみの世界
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30話 歪んだもの

 ミーアとケールは隣街でこれからに必要な物を買い集めて行った。食品や日用品から拳銃や手榴弾など物騒な物まで買いそろえて行った。


ケール「結構買ったね。お金の方は大丈夫?」

ミーア「私は貴族だから補助金でお金はかなりあるの。」

ケール「いいな。俺は平民だから少ない小遣いしかない。でも、そのお金もいつかは底が尽きるよね?」

ミーア「お金がなくなる前には多分復讐は終わっている。」


 本当はいつ終わるか分からなかった。キル・コープスとその協力者を殺せば復讐は終わる?そんな疑問が彼女の中にあった。この憎しみの刃は一体どこに、誰に向いているのか正確には彼女自身すら知らない。


ミーア(復讐なんて愚か。そんな一言だけで片付けられたらどんなに楽か。でも、片づけるつもりなんてあってはいけない。)


ケール「どうしたの?」

ミーア「ううん、何でもない。」


 ケールには心の内を明かさないまま買い物を終える。


ミーア「仲間ってどうやって増やす?」

ケール「うーん?考えてなかった。いきなり復讐を協力してくださいなんて言うわけにもいか。それに復讐する奴隷の居場所も探さないとね。」


 しかし、キルやその協力者の行方は警察や軍が捜索しても今だに見つけられておらず彼らだけで探すことは容易なことではない。それどころか生死すら分かっていなかった。



 二人が歩いていると複数の人に暴行を受けている奴隷と思わしき者を見かけた。


平民「何でお前が生きているんだよ!?死ね、死ね!奴隷は死んでしまえ!!」


 奴隷は抵抗もせずにひたすら我慢した。彼自身が何かしたわけではなかったがあの事件のことがあり奴隷に対する風当たりは日を重ねるごとに強くなっていった。

むしろ今まで通りの方が異常であった。このような光景は当たり前となり、奴隷を解約する者も大勢でてきていた。もう奴隷以外の者たちの奴隷に対する思いは憎しみがほとんどを占めていた。そうでなくても一度でも奴隷の反逆が行われたのだから奴隷を警戒するのは当然であった。奴隷は絶対服従という奴隷制度が成り立つ上での必要条件が崩れ去った。今までの常識が全く通用しない。


 ミーアとケールも当然奴隷を憎んでいた。しかし、それは虐殺を行った者たちへの感情であり決して罪のない奴隷へのものでは少なくても今はなかった。


ミーア(やっぱりこうなるわね。奴隷というだけで憎むべき対象になる。私自身もいつか同じことをするかもしれない。私は罪がないとはいえ奴隷を救うつもりはないわ。)


 ミーアは冷めた感じで見て見ぬフリをした。彼女と奴隷とは所詮相容れぬ関係。姉であるセリカともあの事件以来会っていない。会うつもりもなかった。


 しかし、ケールはそうは思わなかった。


ケール「ミーア、あの子を助けよう!奴隷だからってあんな理不尽な目に遭わされているのはおかしい。あの子自身に罪はないはずだ。」


 ミーアにとって彼がそんなこと言うとは思いもしなかった。彼も奴隷を憎んでいるのは間違いない。それに奴隷を助ければ暴行を行っている者を敵に回すことになる。彼が得することはない。今は奴隷と平民の関係は最悪で助けたところで礼すら言われないかもしれない。


ミーア「何のために?」

ケール「あの子のため……。ううん、自分のため。罪のない人が不幸になるっておかしいよ。俺は少なくてもそんなのは認めたくない。」


 この言葉は彼の家族が殺されたことからきていた。彼女にも彼に言っていることは理解も共感もできた。


ミーア「分かった。ケールに協力するわ。」


 ケールはミーアに感謝の言葉を伝え二人は奴隷の近くに向かった。


平民「ガキが何の用だ?」

ケール「あなたには用はないです。俺が用があるのはその子です。邪魔しないで貰えますか?」

平民「何言っている!?こいつは俺の奴隷だ!どう扱おうが俺たちの勝手だろ!」


 他の者もその言葉を肯定するような発言をする。その会話にミーアが口を挟む。


ミーア「さっき貴方たちはこの奴隷を殺そうとしていた。殺すくらいなら私たちが貰ってもいいんじゃないかしら?」


 ミーアは彼らにかなりの金額をかいた小切手を渡そうとする。


ミーア「これで手をうたない?足りないならまだ出すけど?」


 その小切手を見た彼らは態度を急変させた。彼らにとっては奴隷よりお金の方が大事だった。彼らの行動は八つ当たりに近いもので大した意味はなかった。


平民「分かったよ。その奴隷はお前たちの好きにしろ!」


 そう言って彼らは去っていった。それでも怯えたままの奴隷にケールが声を掛ける。


ケール「君、大丈夫?」

奴隷「大丈夫です。だから……もうやめて。」


 暴力の恐怖があったからか差し伸べられた手をそう簡単に取ることはできなかった。


ケール「俺たちは君にひどいことはしない。約束しよう。君を助けたかっただけだ。」


 その言葉でようやく奴隷はケールの手をとった。


奴隷「あの……ありがとうございます。」

ケール「俺は何も。礼なら彼女に。」

ミーア「私はただ紙切れを渡しただけ。」

ケール「紙切れってあれかなりの金額だったじゃん。」

ミーア「あの小切手は効果がない本当の紙切れよ。」

ケール「さすがだね。騙されたよ。」


 ミーアの詐欺まがいの行為にケールは驚き、笑った。彼ではそんなこと思いつきもしなかった。


ケール「さて自己紹介しようか。俺はケール・ハースト。彼女がミーア・アライブ。君は?」

ポピー「ポピー、そう呼ばれています。年は十二です。」

ケール「ええっと?失礼だけど性別は?」


 奴隷であるポピーの服装はぼろいため服装からは判断しにくかった。かといって顔も中性的な顔立ちで分かりにくい。


ポピー「あ、ごめんなさい。女です。」

ケール「もし、行くところがなかったら俺たちについてくる?」

ミーア「ケール!それは……。」


 ミーアは彼女が同行することに反対だった。これからの復讐、それも奴隷を殺しに行くのに同じ奴隷の彼女にそんな行為を見せるわけにはいかなかった。


ケール「俺たちの目的は分かっているが彼女をこのまま放置するわけにはいかない。」

ミーア「……分かったわ。まともな新しい雇い主が見つかるまでならいいわ。」

ポピー「ありがとうございます。これからよろしくお願いします。」

ミーア「それと敬語はなしよ。私たちは雇い主じゃないから対等な関係でいきましょう。」

ポピー「分かりまし……分かった。」


 彼らは新たな仲間を加えて宿泊施設を探しに向かった。

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