29話 復讐の道
あの地獄から生き延びたゼストたちはキルーズ家の家で過ごしていた。ゼストたちだけではなくあの街からの生存者も一時的に泊まっていた。ガイアが彼らのために家を解放したからこのようなことができていた。ガイア本人はあの事件の片づけをボランティアとして手伝いに行っており家にはいなかった。
生き残ったとはいえ精神的にも肉体的にも彼らは限界に近かった。身近な者が大勢死に悲しむ暇すらあの時はなかった。死者は確認されているだけでも二百人を超えていた。そして、その最悪のタイミングでキル・コープスの動画が配信されそれは当然ニュースでも報道された。この事件はイギリスだけでなく世界中に大事件として一日持たずして知られるようになった。
当初は貴族中心のテロリストの犯行だと思われていた。それが動画によって奴隷の犯行だと知られ生き残った者たちは奴隷を増悪した。
ミーア「許さない!奴隷は……私が絶対に一人残らず終わらせてやる!!今度は私が奴らを殺す番だ!キル・コープスは私が必ず、必ず!殺す!!」
両親を失ったミーアは生き残った者の中でも特に奴隷を憎んでいた。彼女じゃなくても憎まない理由などなかった。理不尽に多くの命が奪われた。奴隷側にどんな事情があったにせよ彼らには関係なかった。彼らは紛れもなく被害者。
ゼスト(父さん、母さん。俺はどうすればいい?姉さんもここにはいない。ミーアも憎しみに囚われている。俺も憎しみがないわけじゃない……。)
ゼストはあれから声を掛けてなかったミーアに声を掛ける。兄として妹が道を踏み外さないように。
ゼスト「ミーア、父さんと母さんはそんなこと望んでいない。」
ミーア「そんなことは分かっているわ!!だけど、この理不尽を、この現実を何もせず黙って受け入れろっていうの?ただやられっぱなしで失うだけでいいっていうこと!?私はそんなのは絶対に嫌!兄さんは許せるの?キル・コープスを、あの人殺しを!」
ゼストには許せるなんて言葉は絶対に言えなかった。彼だって我慢しているだけでキルを殺したいほど憎んでいる。抱いてはいけない感情と分かっていても抱いてしまう。
ゼスト「許せるわけがないだろ……。父さんと母さんは何も悪いことなんてしてない。なのに殺された。俺だって、俺だって憎いさ!!ミーアだけじゃない。俺も同じだ。
だけど、憎しみは、復讐は何も生まない。俺はそう思いたい。」
彼はミーアじゃなく自分に言い聞かせた。復讐は何も生まない、だから復讐はしないと。そうでも思い込ませなければ自分を抑えきれなかった。復讐を正当化すればきっと自分は復讐を行うから。
ミーア「兄さんはそうすればいい。私は復讐の道を歩む。だから私はここへ出るわ。ガイアさんに礼を言っといて。さようなら。」
ミーアは覚悟を決めてゼストの傍を去った。全ての過去を捨てる覚悟で復讐の道を歩むことにした。
キルーズ家の家を出ようとした時、見知らぬ少年に声を掛けられる。少年の名はケール・ハースト。ミーアと同じく事件の被害者。
ケール「待ってくれ。さっきの話を聞いた。俺も奴隷に復讐したい。協力してくれ。」
ミーア「私に構わないで。」
ミーアはケールに構わず先に進もうとする。
ケール「お願いだ!俺一人じゃ家族の仇を取れない!」
ケールは土下座までしてミーアに頼みこむ。仕方のないような顔をしてミーアは頼みを聞くことにした。
ミーア「分かったわ。私はミーア・アライブ。」
ケール「ケール・ハースト。よろしく。」
二人は協力して奴隷に復讐することを決めた。
ケール「思ったんだけど、まず仲間を集めるっていうのはどう?その方がやりやすいと思うし。それに復讐を望んでいるのは俺たちだけじゃないだろう?」
ミーア「それも一理あるね。でも強制はダメよ。私たちのしようとすることは復讐で人殺し。いずれ私たちも裁きを受けるわ。」
二人は仲間を探すため違う街に向かった。今の場所でも仲間は集まるだろうけど弱みに付け込むみたいだったためミーアは止めた。流れで復讐させたくはなかったからだ。
ミーア「ケールは本当にいいの?」
ケール「俺にはもうこれしかない。だからこの道を選んだ。」
二人の復讐の道は今始まった。




