26話 日常.
ガイアは庭の掃除を終えてゼストとリリアがいる部屋へ向かう。もう彼の心には未練はなかった。
ガイア「二人とも、随分と待たせた。」
ガイアは部屋に入り椅子に座ってこれからのことについて説明する。
ガイア「まず、リリアさんの叔父さんの薬の譲渡は適正と調整を鑑みて来週ごろになる。ただし、この薬は未完成で絶対に安全とはいえない。それと投与前と投与後の比較データをとらせてもらうことになる。これが条件となる。これで良ければここにサインを。」
当初から決まっていた薬のことの契約書がリリアの前に出される。リリアはためらいなくその契約書にサインをする。
リリア「これでいいのかしら?」
ガイア「これで構わない。次に婚約のことだが、婚約破棄を望んだのは俺からということになる。それと転校についてはキャンセルしたことにする。書類の手違いということにでもしておく。この際、偽装工作に少々時間が掛かるためまだ何日かはリリアさんにこの家に残ってもらわなければならない。リリアさんの写真も何枚か撮らせてもらうことになる。何か異論があれば気軽に言ってほしい。」
リリア「私はないです。」
ゼスト「俺もない。」
三人の話合いが終わり解散することとなった。もう用事は終わったと思ったゼストはリリアに先に帰ることを伝え帰ろうとすると出口近くでガイアが待っていた。
ゼスト「見送りか?」
ガイア「それもあるが大事な話がある。時間はいいか?」
ゼスト「いいよ。」
ゼストには何の話なのか見当もつかない。話ならさっきすればいいのでは、と内心思っていた。
ガイア「さっき話せなかった話だ。悪くいうつもりはないが、お前の街は最近少しおかしい。」
ゼスト「奴隷倉庫の件か?」
ガイア「それもあるが何人もの人間が行方不明になっている。警察は捜索しているが奴隷倉庫の件であまり動けない。確認されているだけで八人はいない。おそらく実際はそれ以上となっている。」
ゼスト「そんな話警察の父さんからも聞いてない!」
ガイア「今はただの失踪扱いだ。失踪届が出るのにも時間差がある。だが、俺は奴隷倉庫の件と無関係ではないと思っている。あの街には気をつけろ。」
ゼスト「まさか、お前はリリアを守るために?」
ガイア「……ちがう、ただの私情さ。お前の周囲の人間にも警告くらいしてやってくれ。役に立つか分からないが。それとリリアさんを頼む。」
ゼスト「当然だ!」
ガイア「それと」
ガイアは腰のポケットからあるメモを取り出しゼストに渡す。
ゼスト「これは?」
ガイア「俺の携帯電話の番号と親父の会社の上の会社の裏電話番号だ。何か困ったことがあれば電話してくれ。恩があるゼストなら薬関係なら会社に頼めば聞いてくれるだろう。」
ゼスト「ありがとう、貰っておく。」
ガイア「元気でな。」
ゼスト「ああ!」
ガイアは手を振って去っていくゼストを見送った。
ガイア「大した男だよ、お前は……。」
そう一人呟き家に戻った。
あたりは暗く夜になりようやくゼストは家に帰りつく。
ゼスト「ただいま!」
セリカ「おかえり。えらい遅かったね。」
ゼスト「リリアのところに行ってきた。姉さんのアドバイスのおかげでうまくいったよ。ありがとう。」
セリカ「私は何もしてないわ。」
セリカはいつも通りのゼストを見て安心した。もう何も心配はいらないと思った。ゼストは自らの部屋に入った。それから少しすると
母「今日、父さん仕事で帰れなくなるって。」
母親が父親が帰宅できないことを家族に伝わる。たまに帰れなくなることがあるので特に珍しいとは誰も思わなかった。
ゼストにとって最近色々なことが起こった。でも、もうそんなことはないだろう、特別な経験だと思っていた。この経験が何かの役に立つときが来るかもしれない、ゼストは一人そう思い今までのことを思い返した。




