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能力社会  作者: コイナス?
1章 憎しみの世界
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23話 話し合い2

 ゼストからの報告を聞いてリリアはもの凄く喜んでいた。それを見てゼストも一安心する。


リリア「さっきはひどいこと言ってごめんなさい!そして、ありがとう!」

ゼスト「別にいいさ。でも、婚約はこのままだけど。」

リリア「それでもガイアとこの家とは対等な関係になった。それだけでも大きな進歩だよ。」


ゼスト(俺のあの時の行動がまさか生かされたとは思わなかったな。)


 結局のところはあまり現状は変わらなかったがリリアの責任の重みが少しは取れた。しかし、ゼストの本心は納得しきれていなかった。


ゼスト(分かっている。これでいいはずだ。俺にできるのはここまで……。いや違う!まだできるはずだ!!こんな俺にもまだ何か!?)

ゼスト「ちょっとガイアのところにもう一回行ってくる!ちょっと待ってて。」

リリア「え?ちょっと!」


 リリアが止める間もなくゼストは再びガイアに会いに行った。うまくいくかは分からない。下手をすれば薬の件すらなかったことになるかも知れない。それでももう一度話しを、いや交渉を試みることにした。婚約はリリアが望んだことではないから破棄させようとゼストは考えた。リリア本人から破棄をする可能性は彼女の性格を考えたら限りなく低い。何よりゼスト自身が婚約を破棄させたかった。一度決まった婚約を破棄させるのは当人同士か親同士でないといけない。それが第三者、無関係なゼストがするとなるとはた迷惑以外何者でもない。転校もしているのだからそう簡単なことではない。

それでもゼストはやろうとした。自分の思いに嘘はつきたくないからという正直で愚かな理由だけで。リリアやガイア、キルーズ家の思いなど完全に無視した上での行動。

ゼストはさっきガイアがいた部屋の前まで来てノックした。


ゼスト「まだ話していないことがある。」

ガイア「やはりな。お前がこの家に来た目的は薬じゃない。リリアさんを連れ戻すこと。しかし、それは婚約破棄と同じ意味だ。分かっているだろう?」

ゼスト「分かっている。だからこそ改めて話に来た。」

ガイア「さっき断っただろう。」

ゼスト「いいや、お前は『そのまま』と言った。つまりチャンスがないわけではないということだ。」

ガイア「そういう解釈か。いいだろう。話だけは聞こう。」


 再び両者は向かい合って座った。ゼストには婚約を破棄できる交渉材料も策もない。だが、この婚約にはかなりの疑問点がある。そこを突いていくことにした。


ゼスト「いくつか質問する。なぜ急に婚約を決めた?なぜこの家にリリアを引っ越させた?」

ガイア「この家の跡取りがいずれ必要になる。親父の跡は俺だがその跡も当然必要になってくる。それは早い方が何かと都合がいい。それに加えてこの家にも早く馴染めるようにもしたかったからだ。」

ガイア(それは建前でしかないけどな。)


 ゼストはその答えにあまり納得がいかなかったが次の質問に移る。


ゼスト「どうしてリリアを選んだ?」

ガイア「この辺にはあまり気に入った女性はいなかった。貴族という条件なら結構いたが貴族特有の平民を下に見る奴らしかいなかった。そもそも貴族の大半は大した努力もせずに優れた能力を持っているプライドだけが高い連中ばかりだ。俺はそういう貴族が大嫌いでね。

その点、リリアさんはいい意味で貴族らしくなくいい人と聞いたからだ。実際にこんな無茶なことでも文句の一つも言わなかったから俺にはもったいないかもしれないな。」


 ゼストはガイアの言葉が意外に思えた。貴族が嫌いな貴族は珍しいと思ったからだ。


ゼスト「嫌なら無理にとは言わないがなぜそこまでそのような貴族が嫌いなんだ?」

ガイア「……俺は貴族とは言っても紛い物だ。

俺は昔奴隷だった。親父は審査で貴族になったが俺はダメだったらしい。それから親父が手を回しての知り合いが雇い主となった。それから俺が自ら進んで能力の覚醒実験を受けた。体を切り刻んだり、餓死寸前まで追い込んだこともあった。薬物もかなり試したがそれはあまり効果なかった。しかし、そのおかげで俺の場合は実験期間たった五年間で覚醒し貴族となった。だから今こうしてお前の前にいる。」


ガイアの過去の話はかなり省略していたがゼストには壮絶さが伝わっていた。ゼストには貴族になるために実験を望むなど聞いたことがあるはずがない。


ゼスト「苦労したんだな。」

ガイア「確かに苦労はしたが、俺の場合はかなり運がいい方だ。大抵の奴は実験中に死ぬか覚醒せずに終わるかのどちらかだ。……ゼストにとってはあまり気分のいい話ではなかったな。忘れてくれ。」


 忘れてくれと言われてもゼストには無理に近かった。あまりの衝撃さに忘れることができない内容である。


ガイア「ゼスト、どうしても婚約を破棄させたいのか?」

ゼスト「ああ、無理だと分かっていても可能性は捨てられない。リリアは俺にとって大事な人だ!」

ガイア「なるほど。ならば決闘で決めるとしよう。平民のお前に負けるくらいなら俺もそこまでの存在だということだ。到底リリアさんとは釣り合わない。俺が負けたら婚約は破棄だ。ゼスト、これでいいか?」

ゼスト「決闘か……。受けさせてもらう。無茶を何度も聞いてくれてありがとう。」


 決闘の時間を決め二人は握手を交わした。

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