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能力社会  作者: コイナス?
1章 憎しみの世界
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20話 出した答え

 ゼストは家に帰ってすぐにベッドに横たわった。疲れるようなことはしていないが精神的に参っていた。もう何から考えていいか分からない、そんな状態だった。


ゼスト「俺なんかができることは何もない……。」


 彼はそう呟き考えるのを止めた。しばらくそのまま寝ていると部屋の扉をノックする音が聞こえた。ゼストが扉を開けると姉のセリカがいた。


ゼスト「何?」

セリカ「何かゼストの様子がいつもと違ったけど何かあった?」


 ゼストは顔には出さなかったが驚いていた。家に帰ってきてそのまま部屋に向かったためセリカがゼストを見たのがほんの数秒。わずかその数秒で異変を感じたことは普通ではできないことだった。


ゼスト「実は……」


 ゼストはセリカにリリアのことを話した。話すだけでは解決しないことは分かっていたが話すことで少しゼストの気は楽になった。セリカはゼストの話を聞いた上で質問する。


セリカ「それでゼストの願いは何?」

ゼスト「何って……。」


 ゼストは言葉に詰まった。答えが出てないから悩んでいる。もう答えが出ているのなら悩むことも落ち込むこともない。ゼストは今の思っていることを素直に口にした。


ゼスト「分からない。分からないんだ!分かったらどんなに楽か!自分でも自分のことが分からない!!」

セリカ「今は分からないままでいい。でも、いくら時間が掛かってもいいから必ず答えを出して。……私が偉そうにいえる身分じゃないけど。」


 ゼストはセリカの言葉を聞いて少し落ち着いた。ゼストは今まで焦っていた。彼にとって何もかも急で混乱していた。今まで当たり前のようにいたリリアが突然いなくなり不安だった。彼女のことを特別に意識したことなど彼には一度もなかった。いなければならないではなくいて当たり前の存在だった。ゼストはリリアに支えられていた、いつもそばにいた。家族には話しにくいことも彼女なら話せた。


ゼスト(俺にとってリリアは……大切な存在?どうして今まで気づかなかった?でも、それに気づいたところで答えは見えない。正解は何?)


 ゼストは一つ姉のセリカに質問する。彼にとってこの質問は卑怯だと思ったがそれでも聞いた。


ゼスト「姉さん。もし、俺の出した答えが間違っていたらどうする?それが誰かを傷つけることにつながったら?誰かを不幸にしたとしたら?それでも答えを出すべき?」

セリカ「答えが正しいなんて誰にも分かるわけがない。でも、その答えの結果として今がある。ゼストは今この私たちの生活が間違っていると思う?私は……間違ってはいないと思っている。ゼスト、覚えておいて。必ずしも正しいか間違いの二択ではだけではないということを。これは私自身の経験だけど。」


 ゼストには最後の言葉の意味が理解できていなかった。正解の反対は間違い、すなわち不正解が常識だと思っていた。その中間なんて曖昧なものはないだと。


ゼスト「それってどういう」

セリカ「私はもう部屋から出るね。」


 ゼストの言葉を遮るようにセリカが言葉を放った。その後すぐに彼女は部屋から去っていった。


ゼスト「ありがとう、姉さん。」


 ゼストの迷いは消え、答えはもう見えていた。彼にはリリアを諦めることはできない。少なくともこのまま別れることはゼストには耐えきれなかった。


ゼスト「俺は……リリアに会いに行く!たとえ相手が貴族だろうと関係ない!リリアから直接話を聞く!!」


 ゼストは部屋で独り覚悟を決めるかのように呟き、カレンダーで次の休日を確認する。リリアの居場所は交通機関を使えば数時間で着く。その休日に会いに行くことをゼストは心の中で決める。



 リリアは婚約者のガイアの家にいた。ガイアの家はかなり広くまさに貴族の家といった感じで内装も豪華であった。彼女には専用の部屋と世話係が用意されていた。婚約者であるにも関わらずガイアはリリアに対して軽く挨拶されただけで以降はほとんど会っていなかった。彼の両親も仕事でほとんど会っていない。何のためにこの家にきたのかリリアはよく分らなくなっていた。仕方なく部屋で貴族の学校への転入の準備をしていた。


リリア「食事や洗濯はしてくれるから不自由はないけど他人の家はなんか窮屈に感じるわ。でも、婚約が成立したら私はここで暮らすことになる……。分かってはいたけど今までの環境とは全く違うのね。これからは貴族としての自覚を持って生きなくちゃ!」


 これからの彼女にとっては住むところも学校も違い周りは貴族が多くなる。平民との暮らしが多かった彼女には貴族の学校が未知の領域に思えた。授業もシステムも以前通っていた学校とは全く異なる。転入の日はまだ先だったが緊張していた。


リリア(ゼストには何も言わず別れたけど悪いことしたな。)


 僅かな心残りがあったが心の内に隠したままにした。

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