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能力社会  作者: コイナス?
1章 憎しみの世界
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19話 関係

 家族は食事を終え片づけに入った。父親の話は家族全員が聞いていたが姉のセリカは終始黙ったままだった。彼女なりに今回の話のことを考えていた。


セリカ(奴隷の反乱……。奴隷制度は完璧じゃない。奴隷だって生きている人間!大勢の平民や貴族は奴隷たち人を物のように扱う。それがこの世界では当たり前なのかもしれない。でも、いつの日かきっと共に人として共存できる日がくるはず。……綺麗ごとで傲慢ね。私が何も知らないから言えること。人は分かり合うフリはできても分かり合えない。それは私自身が証明しているというのに。)


 彼女は嘘をつき続けてきた。初めの嘘は何だったかは覚えていない。ゼストとミーアとの関係だってどこかうわべだけのものだった。嫌いなわけではない。愛していないわけではない。しかし、距離を詰めようとはしない。無意識に彼らと自分の違いを悟り遠ざけようとする。今の関係を壊さないように失わないようにと必死に自らを取り繕っている。それが今のどこか歪んだ家族関係。むしろこれこそが正常なのかもしれない……。



ゼストは自室でさっきの話のことを思い出していた。よくよく考えれば考えるほど疑問が湧く。外部からの襲撃とはいえ拳銃などがあり、そう簡単には墜ちるはずがない。あまり詳しくないゼストでもそれくらいのことは分かっていた。奴隷が欲しいのであれば購入するほうが遥かに得策である。


ゼスト「もし、奴隷の反乱だとすれば彼らは今どこにいる?……全然分からない。俺が平民だからか?平民の俺は彼ら奴隷と比べてかなり恵まれているんだな。能力だけで身分が決まるか……。考えればそこからしておかしいのかも。いつからこの世界はこんなになってしまった?俺はこのままでいいのか?」


 自分自身に問いかけるが答えはでない。出るはずがない。ゼストはただの平民でそれ以上でもそれ以下でもない存在。世界から見たら今はただの一般人。今日のことだってただの偶然に近い。父親の話を聞いただけで何かできるわけではない。だが、無関係でいられるとも思えなかった。




 何一つ答えが出ないまま朝が来ていた。ゼストは眠そうな顔でいつもより遅く起きた。まだ彼は昨日のことを引きずっていた。早々に支度を終え学校に向かった。いつもと変わらぬ学校のはずなのに彼にはどこか違って見えていた。昨日のことがあったからかもしれない。

だからこそ改めてゼストは今が日常を実感した。変わらないものがここにあると。そう今は

愚かにも信じていた。


 朝のホームルームが始まる時にゼストは今になってリリアがいないことに気付く。彼女は遅刻を今までしたことがないことから何かあったとゼストは思う。その答えは意外にもすぐに担任の先生から告げられた。


教師「急な話ですがリリアさんは先日、貴族の学校に転校することになりました。」


 ゼストにとってそれは衝撃そのものだった。彼には理解できなかった。


ゼスト(一体何の冗談だ?転校なんて聞いてない!)


 その後の休み時間に教師に問いただしたが詳しいことは知らないようだった。ゼストはそのまま今日の授業を受けたがほとんど頭に入らなかった。放課後になってリリアにでも何度も電話を掛けるが出なかった。その数時間後にごめんと一言だけのメールが送られてきた。


ゼスト「リリア……。何故なんだ?なぜ急に……?」


 ゼストにはいくら考えても分かるわけがなかった。彼には思い当る理由も素振りも感じられなかった。しかし、普通は貴族なら貴族の学校に通うのが一般的であった。逆にリリアがゼストら平民と同じ学校に通う方が珍しかった。

貴族の学校に平民が通うという特例もごく少数存在するがほとんどない。身分による壁は当人たちが思っているよりも分厚く簡単に超えられるものではない。しかし、ゼストだけではなくここの学校の生徒のほとんどは知らない。周りの生徒は平民ばかりで身分の違うものはこの学校では一部の教師くらい。

実際に社会に出れば平民と貴族の差は広がる。貴族なら給料、役職、将来の安定が約束されている。貴族として認められた時から国からの多額の補助金も出る。そのため、社長などの位の高い地位の者は貴族である。その分、貴族ならではのしがらみやルール、責任も当然付きまとう。

リリアはその貴族のしがらみに囚われてしまった。親が決めた貴族同士の婚約であった。全ての貴族にこんなしがらみがあるわけではない。自由に生きている貴族だっている。しかし、彼女自身は貴族であっても所詮はただの人間でありそれを変える力も勇気もなかった。



数日後、ゼストはリリアの両親に会って彼女のことを聞き出すことができた。最初は頑なに話そうとしなかったが何日諦めずに聞きに来たゼストに折れた。ゼストが聞き出した情報は以下の通りであった。


先日、リリアはある貴族に婚約を申し込まれた。婚約相手の名はガイア・キルーズ。彼はリリアのことを大変気にいっていること。彼自身も貴族で能力はかなり優れている。彼の父親はある製薬会社の社長でかなりの権力がある。

婚約の理由としては貴族同士であることから優秀な能力を持った子供が生まれやすくなるから。(このことに関してはいくつか説があるが真実は定かになってはいない。)リリアの叔父が重い病を患わっておりその治療にガイアの父親が開発にかかわっているある新薬が必要であるということ。彼女が婚約すればその薬が手に入り叔父は助かる可能性がある。

 転校した理由についてはガイアがリリアが通う学校は貴族の学校でなければだめだと言ったからである。これはガイアも無茶を言っていると承知の上だったがリリアの両親も前々からリリアの転校を考えておりこれを機に転校することになった。転校によりリリアは婚約相手の家に引っ越し住むことになった。結婚式はお互いに同い年でもあることから高校を卒業してからだという。


 リリアの両親は婚約には賛成であった。リリア本人は戸惑いがあったが承諾したらしい。話を聞き終わった後はリリアの両親に礼を言いそこから去った。

しかし、ゼストには話を聞いた後でも納得がいかなかった。ゼストはこの婚約に関しては無関係。だけど、長年幼馴染として付き合ってきたリリアとの関係をこんなことで終わらせたくはなかった。この気持ちはエゴだということは分かっていた。ゼスト自身の心は複雑で整理がつかないまま彼は家に帰った。

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