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能力社会  作者: コイナス?
1章 憎しみの世界
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15話 協力

ゼスト(俺が決めるというのか?何の事情も知らない偶然巻き込まれただけなのに?俺は……。)


 本当は答えなんて始めから出ている。選択肢が与えられる前からもう決まっている。彼がいくら迷うと彼の行動はただ一つ。このままだと少女は死ぬ。だから


 ゼストは勇気と全力を出し二人のところに走った。一歩を踏み出した時点で迷いも後悔もない。ただひたすら彼女を救うという思いのみで彼は走った。男はゼストの存在に気付き銃を向ける。ゼストは銃口を向けられたことなど気にもせず少女の手を掴みその場から逃げるように少女を引っ張った。ゼストは男の追跡を妨害するため持っていた小麦粉を振りまき急いで少女を連れて逃げた。二人でかならの距離を走り男が見えなくなったのを確認して初めて走るのを止めた。


ゼスト「急にごめん。でも、放っておけなくて。」

少女 「なぜ、私を助けた?」

ゼスト「理由はよく分からない。でも、助けなくちゃいけないって思った。」

少女 「あいつの目的はその箱に入っているデータよ。そのデータが何だかあなたに分かる?」


 ゼストはその質問に当然分からないと答えた。彼が知っているはずがない。


少女 「人体実験のデータ。善意で私を助けたつもりだろうけど、世間的にはあなたは悪人を助けたのよ。」

ゼスト「人体実験って犯罪じゃないか!嘘だろ?さっき世界を変えるって言ったじゃないか!」

少女 「本当よ。私たちは犯罪行為を行っている。これであなたも同罪ね。知らなかったら罪の意識もなかったでしょうに。

私は本来あの時死ぬはずだった。死んで事件は終わり、データはなかったことになる。あいつらにはデータを渡すわけにはいかなかった。でも、あなたが私を助けた以上事件はまだ終わらない。これは私があいつらにデータの存在を知られたことが原因。だから、あなたが選んで!忘れてこのことをなかったことにするか、私に協力するか。」


 少女の衝撃の告白にゼストはどう反応していいか分からなかった、というよりは彼の頭が情報の処理に追いつかなかった。


ゼスト「君は俺と同じぐらいの年だろう?何変なこといってんだよ?何で君がそんなことする?理由がないし、第一現実味がなさすぎる!」

少女 「理由?現実味?私からすればあなたの方が異常よ。見ず知らずの私を助けようとした。自分の命も危なかったかもしれないのに。自殺願望でもあるの?」

ゼスト「確かに俺はまともじゃないかもしれない。俺は昔、姉さんに命を救われた。姉さんとはずっと一緒に暮らしたはずなのにその時の記憶が一番印象が強い。その時思ったんだ。誰かの役に立つ人間になりたいって。」

少女 「あなたの昔話なんて興味ない。結論だけ聞かせてあなたは私に協力するの?」


 ゼストは少女の事情を完全に理解するのは難しかった。どちらが正しいなんて彼に分かるはずがなかった。データが他の人間に渡ればそれをもとにさらに実験を繰り返し犠牲者が増える場合もある。逆にそのデータで新薬などの開発が進み救われる人間がいるかもしれない。前者と後者の両方ということもあり得る。このデータがどんなにこの世界にとってどれほど重要なものか誰も本当のことは知らない。あくまでデータは記録のみでありその解釈は人それぞれである。

 ゼストにとって彼女との協力で得られるメリットは皆無に等しい。しかし、ゼストが出した答えは彼女との協力だった。


ゼスト「協力するよ。でも、条件がある。一つは君も人質も助けること、二つ目は誰も殺さないこと、三つ目はそのデータで多くの人を救うこと!これが条件だ!」

少女 「いいわ!その条件をのむわ。でも、本当にいいの?」

ゼスト「誰かが死ぬところなんて見たくないからな。」

レイス「そういえば自己紹介がまだだったわね。私はレイス・ハイフ。」

ゼスト「俺はゼスト・アライブ、よろしく。」


 ゼストは箱のことで疑問に思ったことがあったので質問した。


ゼスト「この箱に入っているのってデータだけ?それにしたら大きいような?」

レイス「GPSの発信機と爆弾付きよ。データを迂闊に閲覧しようとしたら爆発するようになっている。閲覧するには爆弾を正規の順で解除しなおかつパスワードが必要となる。他に質問は?」

ゼスト「箱が入れ替わっていたのって初めから気付いていたの?」

レイス「あえて私が違うのを取ったのよ。本当はあの店で偽物となる箱を買うつもりだったの。ところが時間があまりないタイミングであなたが現れ偽物に使える箱を落とした。好機だと思ったわ。」


ゼスト「あと人質の場所と人数は分かるか?」

レイス「人数は三人。場所は写真が送られてきている。」


 レイスはゼストに携帯電話の写真を見せた。写真は人質が三人とも手足を縛られており倉庫のような場所にいた。しかし、これだけでは分からない。


ゼスト「あの男は何者だ?」

レイス「警察よ。だけど、手段は選ばない外道の警察官。あいつらは一人じゃない。注意して!」

ゼスト「ああ。人質をこれから手分けして探そう。」


 二人は二手に分かれ人質を探すことにした。もし、見つけても単独では突入せずもう一人に連絡するようにして念入りに手際よく探すようにする。人質が危険な状態でもあり事態は一刻を争っていた。


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