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能力社会  作者: コイナス?
1章 憎しみの世界
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12話 後始末

 ジークの能力によって動けなくなった者たちもジークが倒された今は動けるようになっていた。


奴隷「動けるようになった?」

奴隷「今はどういう状況だ?」


 状況が分らずに混乱しているところにキルの放送が聞こえた。


奴隷「ついに勝ったんだ!俺たちは自由だ!!」

奴隷「やった!これで終わった!!」


 奴隷たちはこれまでにないくらい喜んでいた。シークレットもその中の一人だった。


シークレット(本当に私たち勝った?まだ実感がないけど。キル、あなたが決着をつけてくれたのね。)


 そんな中、喜ぶことができない奴隷もいた。


バゲージ(これで犠牲になった二人も報われるのか?これで本当によかったのか?俺はこれからどうすればいい?俺は……俺は……キルを!)


スジュン(俺は何もしなかった。果たしてこの結果が正しいといえたのか?流血の果てにあるこの結果が?人が死んでいるのだ。正しいわけはないな。これで本当に終わるのか?キル・コープス、あの少年は俺たち他の奴隷、いや人間とは根本的な何かが違う。仲間すら平気で殺せる人間など、もはや人間じゃない!俺たちは取返しのつかないことをしたのかも知れない。)


 スジュンはキルを止めようとしなかった自分が嫌になっていた。自分さえ良ければいいというそんな自分勝手な考えを持つ、ただの傍観者だった愚かな自分に。



 奴隷たちが喜びを分かち合っている間にキルはこれからに備えをしていた。数日の間は問題がないかもしれないが、奴隷倉庫が機能していない状況はいずれ外部の人間に気付かれる。そうでなくても職員が何人か死んでいるため警察に捜索にくる。逃げた職員が通報する可能性もある。いつまでもこの奴隷倉庫にはいられない。


キル「戦いに勝ってもあまり時間はなさそうだな。現時点で生き残っている奴隷はかなりいるはず。しかし、戦いが終わった今俺の指示通りに動く者は何人いるか分らない。シークレットとクリーンなら動いてくれそうだな。まずは奴らの死体を処分するとしよう。」


 キルは回収した拳銃の一つを自分の持ち物とした。通信機はそれぞれクリーンとシークレットに持たし、いつでも連絡を取れるようにした。

シークレットには奴隷倉庫全体の捜索を命じた。彼ら奴隷にとって今まで何年も過ごした奴隷倉庫だが、その全容は知らない。それを知ることと、万が一敵がいる可能性、それを含めた意味での捜索だった。

それに対しクリーンには管理室のパソコンで過去の監視カメラの映像や奴隷の出荷記録などの情報の確認を行わせた。今後何かしらの役に立つ情報があるかもしれないとキルが考えたからだ。ついでに余った拳銃や爆弾などを管理室に一時的に保管した。

キルは二人に指示を出した後に死体の処理を行いに戦いがあった場所に向かった。死体の処理は面倒だがこのまま放置すると、死体の状況にもよるが腐敗臭がしたり、伝染病が蔓延する恐れもある。キルにとって死体の処理は日常的に行っているもので当たり前のようだった。処理する死体はいつも焼却炉の近くにあるが、今回は奴隷倉庫の中であるため距離があった。そのため、死体を運ぶ作業が必要となった。キルは以前から死体を運んだことはあったが、今回みたいに長い距離で運搬したことはなかった。そのこともあり、普段よりも作業が進まなかった。


キルが作業で一階にいる時にシークレットから連絡がきた。


シークレット『今、私は二階にいるけど一階にいた仲間が何やら騒いでいるみたい。詳しくは分らないけど何かあったのかも。今から一階に行っていい?』


 このタイミングで奴隷たちが騒いでいるのは、ただの揉め事かあるいは敵がいるのか、二つの可能性をキルは考察する。前者なら大した問題はないが、もし後者なら早急に対処しなければならない。


キル『ちょっと待て。もし、敵がいたのだとしたら不用意近寄るな。今はそこを動くな。』


 シークレットとの通信を切ろうとしたときだった。キルに得体のしれない違和感が一瞬襲った。その直後、キルの首から下が硬直し動かない。敵はキルの周囲にはいないはず。キルは今自分がどうなっているか理解しきれていなかった。


キル(一体何がどうなっている?俺は疲れているのか?何がなんだか分からない!)


 キルは困惑していた。


キル(落ち着いて考えろ!俺はなぜ動けない?起こりうる可能性は?疲れているとしたらそれは精神的?もしくはなにかの病気?病気なら死ぬのか?こんなところで?わけが分からずに?)


一体何が原因なのか考えようとすればするほど、冷静とは程遠くなる。

そんな時、通信が切れていないことに疑問に思ったシークレットがキルを心配する。


シークレット『キル!?どうしたの?なにかあった?』

キル『シークレットか?なにがあったか全く分からない。体が動かないんだ。かろうじで首から上は動くみたいだが。これは一体何か教えてくれ!』


 キルの震えた声から困惑さが伝わってくる。体が動かなくなる、この状態にシークレットは覚えがあった。


シークレット(さっきの職員戦った者も体が動けないって言っていた。おそらく今回も同じく職員の能力。でも職員はキルが倒したはず。まさか、生きていた!?)


 生きていたなら今の状況になっても不思議ではなかった。


シークレット『キル、本当にさっきの職員は死んだの?』

キル『確かに、殺したはずだ。いや、俺がそう錯覚していたのかもしれない。確かに奴の動きは止まった。何度も刺したが首や頭にほとんど傷はなかった。もし生きているとしてもそのままだと動けるようにはならない。』


 キルの言う通り仮に生きているとしても普通は能力が使えるくらい回復することはない。だが、あくまで普通の状態であり何かしらのイレギュラーが起こった場合は異なる。


シークレット『まさか、覚醒した!?』

キル『嘘だろ!?こんなタイミングで覚醒なんてあるか!!』


 キルは即座にその可能性を否定する。しかし、その可能性が一番高い。覚醒すれば能力は格段に強化されたり、新たな能力が追加されるため何が起こっても不思議ではない。味方が覚醒すれば非常に強力な戦力となるが、敵が覚醒すれば厄介なことこのうえない。覚醒で奴隷から貴族になった者の事例も多々あり、立場が一気に変わる。

 キル自身も本当は分かっていたが信じたくなかった。


キル『なんだよ、それ?覚醒なんてそんなふざけたものに俺は負けるというのか?ここまで来て?勝ったはずだったのに!!』

シークレット『これが私たちの運命だったってことなの?』

キル『それが運命なら俺は運命だって殺してやる!俺の邪魔をするものはなんであろうと誰であろうと皆殺しだ!!』


 キルは諦めることができなかった。覚醒などというわけが分からないものが敗北の理由にしたくなかったからだ。当然、キルたちは誰一人として覚醒の可能性があったにもかかわらず覚醒はしていない。もし、覚醒していたら平民や貴族として生活できただろう。シンプルだって覚醒していたら死ぬことはなかった。それ故にキルは覚醒の可能性を否定する。そんなありもしない奇跡に等しいものに負けないために。


キル『クリーン、お前は動けるか?』


 管理室はキルと同じ一階だが、距離はあった。


クリーン『今は動ける。』

キル(クリーンが動けるということは管理室はまだ使える。しかし、クリーンが動けなくなるか分からない。二階のシークレットが動けることから二階はおそらく被害はない。俺の近くに奴はいないことから奴の能力の範囲は拡大されている。そして、奴が動ける状態だというのなら異常なまでの回復力があることになる。奴を殺すには一撃で殺す必要がある。)

キル『シークレット、お前を含めた二階の連中は無事だな!?』

シークレット『今は無事よ。』

キル『ならそいつらと協力して今すぐに全ての拳銃と爆弾を二階に運べ。クリーンはそのまま管理室で待機だ。詳しいことは後で指示する。』

シークレット、クリーン『『分かった。』』


キル(奴の狙いはおそらく俺だ。動きが止まっている今、殺しに来る可能性が非常に高い。だが俺は、いや俺たちは負けるわけにはいかない。奴を今度こそ確実に殺してやる!!)


 キルは決着を今度こそつけるつもりでいた。



 キルの体が動かなくなる少し前、キルに倒されたジークは目を覚ましていた。傷も完全に治っていた。ジークは今の自分がどういう状態にあるか理解しきれていなかった。


ジーク「確か私はキル・コープスに負けたはずなのにどうして生きている?」


 ジークは自分の体に起こった異変を理解しようとした。今まで経験したことのないことだったため激しく混乱した。


ジーク「私の体に一体何が起こっている?」


 ジークは周りを見渡す。自分の血と思われるものがそこにはあった。服にも血がついているが体の傷がなかった。まるですぐに治ったようだった。他の職員はここにはもういないはずだし、奴隷たちがジークを治療するはずがない。その状況からジークはある推測にたどり着く。自分自身が傷を治したということ。彼にとって考えられる推測はこれだけであり、それはジークの覚醒を意味していた。


ジーク「これを私がやったというのか!?」


 ジークは試しに自分の手を傷つける。その傷は瞬く間に治った。ジークの推測が確信へと変わる。しかし、ジークが手に入れた力はこれだけではなかった。彼が意識を集中されるとかなりの範囲で人のいる位置が分かり、その中でジークの近くにいる人の動きを止めることができた。一階にいるジークでは二階までの人の動きを止めることはできなかったが、一階の半分近くの人の動きは止められた。二階は高低差の関係で今は不可能だが、ジークが二階にいけば可能だろう。


ジーク「この力を使えば全員無力化できる。これで仲間の仇を今度こそとる。まずは一階を制圧する!」


 ジークは行動に移った。彼の新たな能力で近くの奴隷たちは動けないため、ただ移動するだけに近かった。ジークはその内の一人に近づき質問する。


ジーク「キル・コープスはどこにいる?」

奴隷 「生きている!?職員はもういないはずじゃなかったのかよ!こんなことなら部屋に入ればよかった!!」

ジーク「死にたくなければさっさと答えろ!」

奴隷 「分かったから殺さないでくれ!あいつなら少し前まで向こうのほうでなにかやっていた。」

ジーク「貴重な情報、感謝する。ついでに拳銃貰っていくぞ。すべてが終わったら動けるようにしてやる。」


 奴隷からの話を参考にキルの居場所を探る。


ジーク(なるほど、あそこにいるのか。動きは止めているが爆弾をしかけているかもしれないから気を付けていくか。)


 ジークはキルがいると思われる場所に向かった。そこには体が動かないまま目だけはこちらを向いたキルがいた。ジークは罠を仕掛けているかもしれないと周りを見渡すが、それらしきものは見当たらない。


ジーク(これですべてが終わる。多くの犠牲がでたこの戦いが。)


 ジークはキルに銃口を向け降伏を促す。


ジーク「もうお前の負けだ、キル・コープス!降伏しろ。」


 ジークはキルが降伏するとは思ってはいないが万が一の可能性を考えた。


キル『そうだな、俺の負けだな。』


 ジークはその言葉を聞いて安堵した。今度こそ本当に終わったのだと。しかし、予想外の言葉が笑みを浮かべたキルから発せられた。


キル『だから……俺を殺せ!そして、俺たちの勝ちだ!!』


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